2014年11月26日

不動産の名義変更(=所有権移転)と税金:財産分与編

 不動産という大きな財産の所有権を移転するという場面では、様々な税金の問題が絡んできます。税金のことを考慮せずに、無計画に不動産の所有権を移転してしまうと、不意に高額の税金を課されて驚くといったことにもなりかねません。

 そこで今回は、財産分与の事例を通して、不動産の所有権移転と税金に関する問題点を整理してみましょう。(但し、私は税務の専門家ではありませんから、本稿は、登記業務に関連して考慮すべき税金の問題を整理することのみが目的です。そのつもりでお読みください。)



1. 財産分与の事例(以下、「本事例」という。)
 夫Aと妻Bとは、離婚に向けた話し合いをしています。その話し合いの中で懸案となっているのが、家族がこれまで生活の場としてきた一戸建て住宅とその敷地(以下、「本件不動産」という。)をどうするかという問題です。

 本件不動産は、15年前にAがC銀行から3500万円の住宅ローン融資を受けて購入したもので、この住宅ローン債権を担保するためのC銀行の抵当権が登記されています。現在も、住宅ローンの債務が2000万円残っている状態です。
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 Aは、離婚後に本件不動産に居住し続ける意図はないため、自分にとって負担の少ない方法であれば、本件不動産をどのように処分しても構わないと考えています。そこでAは、本件不動産を売却することも考え、近所の不動産屋に相談したこともありました。しかし、不動産屋によれば、本件不動産は1500万円程度でしか売却できそうにないとのことでした。住宅ローンを完済するためには、少なくともあと500万円必要になりますが、Aには、すぐに500万円を用意できる程の資力はありません。

 一方Bは、様々な事情から本件不動産への居住継続を望んでおり、Aとの離婚に際して、Aから本件不動産の財産分与を受けたいと思っています。しかし、Bにしても、住宅ローンの残債を一括で(Aに代わって)返済する程の資力はありません。

 話し合いの結果、本件不動産については、AがBに対して財産分与するということは決まりましたが、住宅ローンの残債務の処理方法については方針が定まりません。
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2. どのような税金について考慮すべきか?
(1) 財産分与と贈与税
 贈与税とは、対価なしに財産の移転が行われる場合に、課せられる国税です。受贈者が納税義務を負います。ここで贈与税の対象になる「贈与」とは、民法上の「贈与」よりも広い概念であることに注意すべきです。財産分与も広い意味での「贈与」と解することも可能ですが、夫婦財産の清算(潜在的持分の取得)的な意味合いを持つため、贈与税は課されないのが原則です。

 従って、名目上は「財産分与」といっても、夫婦財産の清算という趣旨を逸脱した財産分与がなされた場合、すなわち分与対象財産の価額が婚姻中に取得した夫婦財産の価値その他の事情等に照らして過大である場合には、贈与税が課される可能性が出てくることになります。

 本事例において、AがBに対して本件不動産を財産分与することは、夫婦財産の清算という趣旨を逸脱しない限りにおいて、贈与税が課されることはありません。


(2) 借金を肩代わりすることに関する贈与税
 本事例の離婚協議において、本件不動産の財産分与を受けたBが、Aの代わりに住宅ローンを支払うという取り決めがなされたとしましょう。この代弁済の取り決めが、BからAに対する財産分与であると解することが出来れば、上記2(1)と同様、贈与税は課されません。

 しかし、代弁済(正確に言えば、「代弁済し、求償権を放棄すること」)は、弁済した価額に相当する利益を債務者に対し与えるものですから、贈与税の課税対象となることがあります。例えば、離婚成立から何年も経過したある時点で、Bが住宅ローンを一括繰上げ返済したような場合、突然Aに対して、多額の贈与税が課されてしまうことにもなりかねませんので注意が必要です。


(3) 不動産譲渡所得税
 不動産譲渡所得税は、不動産の譲渡益に対して課される国税です。本事例のように不動産という現物を財産分与した場合、そもそも譲渡益など生じないのですから、不動産譲渡所得税を課す余地などないようにも思われます。

 しかし、税務当局は「財産分与による夫婦財産の清算は、本来金銭をもって行われるべきであって、現物を供与することはこの金銭債務を消滅させることに等しい」という理屈で、不動産の現物分与の場合にも不動産譲渡所得が発生するという解釈をしています。言い換えれば、本来、財産分与においては、分与者が不動産を換価して、金銭を与えるものであるから、現物を分与した場合にも換価した場合と同じく譲渡所得税を課すべきだというのです。本事例において納税義務を負うのは譲渡者たるAです。

 本事例において、仮に譲渡所得が発生するとした場合には、「居住用財産を譲渡した場合の3000万円の特別控除の特例」(租税特別措置法第35条等)の適用可否を検討する必要があります。


(4) 不動産取得税
 不動産取得税とは、不動産取得という事実に関して取得者に課される都道府県税です。取得の名目は、売買、贈与、建物新築等を問いません。但し、相続や共有物分割等の「形式的取得」については、不動産取得税は課されません(地方税法第73条の7)。財産分与による不動産の取得は、夫婦財産の清算という意味合いを持つため、「形式的取得」として、課税されません。

 しかし、財産分与が夫婦財産の清算とは言えない場合(財産分与の対象が婚姻前に取得した不動産であった場合、婚姻中に取得した不動産でも分与者が相続等の原因によって取得した不動産であった場合、不動産の分与が慰謝料としての趣旨である場合等)には、原則通り不動産取得税の課税対象となります。

 不動産取得税の課税対象になる場合には、課税標準の特例(地方税法第73条の14)や税額軽減(地方税法第73条の24)等の適用可否を検討する必要があります。


(5) 登録免許税
 登録免許税は、一定の登記申請に対して課せられる国税です。納税義務は、登記申請人が連帯して負担します。本事例では、AとBとが連帯して納税義務を負いますが、実務的には不動産を取得するBのみが納税します。

今回も長い文章を読んでくださってありがとうございます。
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posted by 司法書士 前田 at 14:19| Comment(0) | 財産分与

2014年11月17日

仮登記の利用について

 今回は、仮登記の仕組みとその利用上の問題点について解説します。というのも、仮登記を行う動機は、目の前にある何かしらの問題を解決するためであることが多いのですが、そもそも仮登記がその目的達成のための適切な手段といえるか否か、整理しておく必要があると考えるからです。
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1. 仮登記とは
(1) 仮登記の意味
 仮登記とは、本登記をするための条件が整わない状況で、とりあえず権利の順位を保全するために用いられる登記のことです。本登記と異なって、仮登記のままでは対抗力(利害関係をもった第三者に対して、自分の権利を主張することが出来る効力)はありません。しかし、後日仮登記を本登記にすることによって、仮登記を行った時点での順位で本登記の順位が確定する、というものです。

 例えば、AからBへ不動産が売却され、B名義の所有権移転の仮登記がなされたとします。ところが、Aは同じ不動産をCに対しても二重に譲渡して、C名義で所有権移転の本登記がなされてしまったとします。このような場合でも、Bの仮登記を本登記にすれば、BがCに優先します。

 このことを、仮登記の「順位保全効」といいます。この順位保全効について、仮登記を本登記に改めた場合には仮登記時点に遡って対抗力が生ずる、と解することも可能ですが、細かいことを言えば、対抗力が遡及するのではなく、順位が仮登記の時を基準として判断されると考えるべきでしょう。なぜなら、仮登記後かつ本登記前に上記Cによってなされた処分・利用も合法であって、Cが対象不動産を使用収益していたとしても、それが遡及的に不当利得になるわけではないからです。


(2) 仮登記の種類
 仮登記には、手続き上の要件が整わない場合に行うことのできる仮登記(不動産登記法第105条1号)のほか、登記の前提となる請求権を保全しようとする場合やその請求権が始期や停止条件にかかる場合に行うことのできる仮登記(同法同条2号)があります。前者を1号仮登記、後者を2号仮登記と呼ぶこともあります。

 1号仮登記を行う場合とは、登記申請に際して、登記識別情報又は第三者の許可・承諾書を提出することが出来ない場合です(不動産登記法第105条1号、不動産登記規則第178条)。第三者の承諾書の提出が出来ない場合とは、例えば、株式会社が重要財産である不動産を売却したが、未だ取締役会の承認を得られていない場合(会社法第362条4項1号)等のことです。

 2号仮登記を行う場合とは、売買予約契約(買主が予約完結権を行使したときに所有権が移転するという契約)を締結した場合や、農業委員会の許可を条件として農地の売買契約を結んだ場合等のことです。つまり、契約等を結んではいるが、対象不動産の所有権移転の効果自体はまだ発生していない場合です。


(3) 登記申請手続きについて
 仮登記も、登記権利者(買主等)と登記義務者(売主等)との共同申請によって行うのが原則です。但し例外的に、仮登記申請手続きには若干の簡略化が認められており、登記義務者の承諾書(又は仮登記を命ずる裁判所の決定書)を付して登記権利者から単独申請することも認められています(不動産登記法第107条1項)。

 これに対して、仮登記に基づいて本登記をする場合には、手続きの簡略化は一切認められません。すなわち、原則通り、登記権利者と登記義務者による共同申請を行うことになります。また、添付書類についても省略(不動産登記法第107条2項等)は認められず、さらに仮登記後に生じた登記記録上の利害関係人の承諾書等を提出する必要があります(不動産登記令別表69項)。要するに、仮登記を本登記に改める手続というのは、始めから本登記を行うのと同等かそれ以上の手続的負担のかかるものなのです。



2. 仮登記の利用方法検討
(1) 担保目的での所有権移転仮登記の利用
 かつて、債権担保の目的で、所有権移転仮登記を利用するという本来の目的とは外れた仮登記の利用方法が一般化していました。これは、「借金の返済が出来なくなった場合には、債務者所有不動産の所有権を債権者に移転する」旨の契約を結び、これに基づく2号仮登記を行うというものです。

 しかし、少額の債務のために価値の高い不動産が奪い取られてしまうというような暴利行為を許してしまう仕組みであったために、このような担保目的での所有権移転仮登記の利用は仮登記担保法で規制されることとなり、現在ではほとんど見られなくなりました。

 仮登記担保法の規制下の現在でも、所有権移転仮登記を債権担保目的で利用することは、もちろん理論上は可能ですが、抵当権設定登記という手段があるのに敢えて所有権移転仮登記を行うことには全く合理性がないばかりか、債権担保としての意味すら疑わしいと考えます。

 仮登記した所有権を本登記に改める必要が生じる場合とは、債務に絡む紛争が顕在化した時でもあります。そんな時に、本登記手続きに対する、登記義務者や利害関係人の協力が容易に得られるとは考えられません。そのような手続的な不安定要素をもった仮登記を、担保目的で使うことはお勧めできません。


(2) つなぎ融資の際に抵当権設定仮登記を利用する方法
 これは、現在最も多く行われている仮登記の利用形態です。

 例えば、DがE銀行から住宅ローン融資を受けて、土地を購入し、その後に建物を建築するといった状況を考えてみましょう。ところが、E銀行住宅ローンの融資条件の一つとして、完成建物が存在していることが規定されていたとします。

 この場合、E銀行の融資は、建物が完成してから実行されることになりますが、それでは、土地を購入する時点で、Dが融資をあてにすることは出来ないという結論になってしまいます。

 このような不便を回避するために利用されるのが「つなぎ融資」と呼ばれる融資形態です。土地購入資金や建物建築費用を賄うために、建物完成までの間、つなぎ融資専門の金融機関Fが融資を行うのです。この時、F金融機関は、つなぎ融資債権を担保するために、Dが購入した土地に対して抵当権設定仮登記をつけます。

 E銀行の本融資が実行された時には、F金融機関の抵当権設定仮登記が抹消され、代わりに、土地と完成した建物に対してE銀行の抵当権設定登記(本登記)が行われます。つまり、F金融機関の抵当権設定仮登記は、始めから短期間で抹消されることを想定して、行われるのです。

 何故つなぎ融資債権を担保するために仮登記が用いられるのでしょうか?それは、抵当権設定のための本登記手続きと仮登記手続きにかかるそれぞれの登録免許税(登記申請のための国税)に違いがあるからです。抵当権設定の本登記のためには、債権額の1000分の4の登録免許税が必要になります。例えば、2000万円の融資についての抵当権設定のためには、8万円の登録免許税が必要になります。これに対し、同じ条件で仮登記をするのであれば、登録免許税は、物件数×1000円に過ぎません。土地1筆に対して、2000万円の債権の抵当権設定仮登記をつける場合なら、登録免許税はたったの1000円です。

 どうせ近い将来に抹消されることが予定されているのであるから、高額の登録免許税を払って本登記で抵当権を設定するよりは、仮登記で十分に債権担保という目的を達成できるのです。E銀行の住宅ローン本融資が実行されれば、F金融機関はつなぎ融資分の弁済を確実に受けることが出来るのですから。

 本来の仮登記の利用目的からは外れた活用方法ですが、つなぎ融資を担保するための仮登記は、弊害も少なく、広く利用されています。


(3) 所有権移転の順位確保のための所有権移転仮登記
 所有権移転の本登記をするための条件が整っていながら、何らかの理由で、敢えて所有権移転仮登記を利用することについて、その弊害を検討してみましょう。ここで、私が利点の方を検討しない理由は、このような仮登記の利用方法には百害はあっても一つの利益もないと考えるからです。

 所有権移転登記のための条件が整っていながら、敢えて所有権移転仮登記を利用する場合とは、以下のような事例です。
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(事例)
 5年前、Gは、H銀行の住宅ローン3000万円の融資を受けて、JR六甲道駅から徒歩5分のマンションを購入しました。しかし、マンション購入から程なくして、突如としてGの東京転勤が決まり、Gは、妻Iと子供達を残して、単身で東京に引っ越すことになりました。
 離れて暮らしていた5年の間に、GとIとの互いに対する愛情は冷めていきました。ついに、GとIとは、離婚することを前提に協議を始めました。しかし、そこで障害となったのが、マンションをどうするかという問題でした。
 所有者であるGとしては、もはや住むことのなくなったマンションにはなんの未練もありません。そればかりか、住宅ローンを払い続けるのも馬鹿らしいので、高値で売却処分できるうちに処分して、その処分代金で住宅ローン債務を一括返済したいと考えました。
 しかし、マンションに居住しているIにとっては、子供達の学校のこと、住居地を中心として作り上げてきた交友関係のこと、新たに賃貸住宅を借りて住み替える費用のこと、等を考えると、住み慣れたマンションから出て行きたくはありません。マンションを処分し出ていかなければならなくなるくらいなら、むしろ残りのローンを自分が肩代わりしてでも、住み続けたいと思いました。
 いろいろ話し合った結果、マンションについては処分せずに、GからIに対して財産分与し、その代わり、離婚成立以降は、IがGに代わって住宅ローンを支払うことにしようということになりました。
 しかし、財産分与によるGからIに対するマンションの所有権移転の登記をするということになると、Gには一つ引っかかることがありました。それは、H銀行で抵当権設定契約を結んだ時に、銀行の担当者から、「担保不動産の所有名義を勝手に変えてはいけません。勝手に変えた場合には、ローンの残高を一括で支払ってもらうこともありえます。そのことは、契約書の第○○条にもちゃんと記載されています。」と釘を刺されていたことでした。Gは、離婚に伴う財産分与のことをH銀行に知られたくはありません。


 上記のような事例で、H銀行との契約条項を潜脱する手段として、所有権移転仮登記を利用すれば良いという考え方があります。しかし、このような場合に仮登記を利用すべきではありません。私がそのように考える理由は、以下のとおりです。

 @. 本登記であれ、仮登記であれ、銀行との契約違反であることには変わりはない。
 A. 遠い将来、仮登記を本登記に改める際、Gの協力が得られるか予測できない。
 B. 登記記録上利害関係を有する第三者が生じた場合、本登記手続きへの支障となる。

 上記の事例において、登記手続きに関する弊害だけでもこのとおりです。その他の弊害も多数ありますが、ここでは省略します。逆に、メリットは何もありません。


3. 結びにかえて
 現在では、仮登記の活用方法として有用と考えられるのは、つなぎ融資の債権を保全するという利用法(上記2-(2))くらいのものです。それ以外の目的で付けられた仮登記というのは、当該不動産に何らかの事故があることを推測させます。

 最近、様々な問題(特に離婚に伴う財産分与や税金の問題)に対して、あたかも仮登記によって解決を図ることが出来るかのごとく喧伝する不徳な者がいるようなので、注意を喚起するために今回のテーマを取り上げた次第です。


 今回も長い文章を読んでいただき、ありがとうございます。皆様の忌憚のないご感想をお寄せください。

(補稿)
建物譲渡特約付き借地権(借地借家法第24条1項)と仮登記について
1. 建物譲渡特約付き借地権とは
 これは、借地権設定から30年以上経過した時点で、借地権設定者(=地主)が借地権者から建物を買い取ることを定めた借地権のことを言います。建物譲渡特約付き借地権の利用としては、例えば、マンション等建物のディベロッパーが、建物の建設・運営という投資を回収するために必要な一定期間だけ土地を借り上げて、その後は借地権設定者が建物の運営を引き継ぐという事業の形態を想定したものです。

2. 仮登記による譲渡特約履行の確保
 建物譲渡特約付き借地権は、@一定期間経過後に売買という法律効果が発生する(期限付き売買)又はA一定期間経過後に借地権設定者が売買予約権を行使することができる(売買予約)特約を定めるものです。借地権設定者は、この特約の権利を確保する目的で、所有権移転仮登記(2号)を利用することができます。

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posted by 司法書士 前田 at 23:00| Comment(0) | 登記業務

2014年11月10日

偽スパイダー・サドルを試してガッテン!

 タイオガのスパイダー・ツインテールという自転車サドルがあります。135g程度の重量で、極限まで不必要な部分を削ぎ落としたその形状は、とても迫力があります。しかし、その価格は1万円以上と、とても高価です。
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(こちらはホンモノ)

 一方、各社からこのスパイダーを模倣した偽スパイダー・サドルが販売されており、同じ見た目をしている割に、とても安価です(1200円〜3000円くらい)。最近、一部ではちょっと話題になっているみたいです。

 そこで、今回は、私が思わず買ってしまった偽スパイダーのインプレです。



1. 私とサドル
 私は、あまりサドルにこだわりません。自転車に乗っていて、お尻や股間が痛くなることはほとんどないからです。

 そのうえ、私は、股間部分にパッドの入ったレーパンを履くこともほとんどありません。純粋にトレーニングのみを目的に自転車に乗る場合には私もレーパンを履きますが、自転車を降りて歩き回ったりするような使い方をする場合にはハーフパンツが良いと思っています。レーパンでは、恥ずかしくて歩き回れません。誰も自分のことなんか見ていないことは分かっていますが、多分、私は自意識過剰なのでしょう。

 人によっては、お尻や股間が痛くて、理想のサドルを求めて何度も高級なサドルを買い替えますが、私は適当な安いサドルがあれば、それで特に不具合を感じることはありません。

 しかし、これまで私のauthor a-gang に付けていたveloのサドルにもそろそろ飽きていました。そこで、格好いいサドルを探していましたが、たまたまたどり着いたのが今回の偽スパイダーです。
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(安物veloサドルでも特に問題なし)



2. 偽スパイダーの特徴
(1)重量
 クッションも表皮も貼っていないため、軽いです。もともと付いていたveloのサドルが282gであるのに対して、偽スパイダーは168gです。自転車乗りの間には、「100gの軽量化のために1万円必要である」という言い伝えがあるらしいので、この言い伝えによると1万1400円の軽量化ということになります。
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(右がvelo、左が偽スパイダー)
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(veloの重量282g)
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(偽スパイダーは168g!)



(2)造り
 座面は軟質プラスチックで、金型のバリが残っていますので、細かいことを気にする人は、使用前にヤスリできちんと仕上げすることをお勧めします。私は、仕上げをしませんでしたが、日常の使用に問題はありません。

 レールは、鉄系の合金でできた太い針金をメッキしたものです。仕上げはあまり良くはなく、表面が平滑でない部分もあります。日常の使用に問題はありません。

 座面は、前から5pくらいの部分1点と、後ろから3pくらいの2点で、レールに支えられています。言い換えると、サドルの前後にペラペラのプラスチックの部分が広く張り出しているということです。これに対し、普通のサドルは、前後先端部分までしっかりとした造りになっています。



3. 走ってみました
(1)取り付け
 テストのため、とりあえず、偽スパイダーの取り付け前後位置は、レールの丁度中央です。座面が地面と水平になるようにしました。こだわる人は、サドルの取り付けにも水準器を使うのですが、私は使っていません。私の使っているシートポスト(ボントレガー)には、角度メモリが表示されているので、0度に合わせます。
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(標準的な取り付け位置からテスト開始)


(2)サドルの前部・後部が脆い
 サドルを取り付け、いつものように自転車を持ち上げようと、サドルの先端をつかんだ瞬間、違和感が。

 サドルの先端部分は、ペラペラのプラスチックだけなので、ここを握ることは出来ません。サドルの後ろ側もペラペラなので、ここも持ち上げるには適していません。普通のサドルならば、サドル前部を握ったり、後部に手を入れたりすることが可能ですが、偽スパイダーでは、こういった使い方には適さないということです。

 サドルの下に肩を入れて、自転車を担ぐようなことも、偽スパイダーは不向きです。


(3)尻に何かが突き刺さる!
 いつも走っている表六甲線を登りたかったのですが、あいにく9月と10月の台風によりしばらく通行止めになっています。途中まで3q強を登り、同じ距離を下ることにしました。もちろん、今回もレーパンは履きません。
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(通行止め期間がかれこれ2か月を超えました)

 走り出して最初に感じたのは、お尻の左右各一か所に何か硬いものが当たる痛みでした。私は、この痛みの原因が、レールが座面後部を支持している2点にお尻を乗せたことにあると直ぐに気付きました。普通のサドルならば、硬いプラスチックベースの上にクッション材が乗っているために、体重が分散されます。ところが、偽スパイダーの場合には、上記の2点に尻を乗せてしまうと、クッション材がないため、レールの端が尻に突き刺さってしまいます。

 尻が痛くなるのを防ぐためには、座面とレールとの接合部分を避けて尻を乗せる必要があります。あたかもハンモックに身体を預ける感覚で、尻を座面中央に乗せるのです。こうすれば、普通のサドルと同じように、体重が分散されます。

 私は、サドルの比較的後ろ側に腰掛けることが多いのですが、その乗り方だと、尻が痛くなるということなのです。そこで、サドルをいつもより後方にずらして取り付け、サドルの真ん中に尻を置くようにすれば、問題なく走ることが出来ます。
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(見た目はカッコいい!)
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(六甲山の下のほうも色づきはじめました)


(4)まとめ
 以下、分かったことを箇条書きにします。

・見た目は格好いいので、見た目重視の人には、お勧めです。
・軽いので、軽さにこだわる人にも、お勧めです。
・サドルの後ろ側に座る癖のある人は、レールの先端部が尻に突き刺さります。
・サドルの下に肩を入れて、自転車を担ぐことの多い人には不向きです。

 例えば、MTBダウンヒルやダートジャンプ等の用途に使う場合には、もともとサドルは腰掛けるものではないので、軽いことは大きなプラスでしょう。このような場合には、偽スパイダーはお勧めです。

 しかし、偽スパイダーでは、尻の痛みを避けようとすれば、乗り手の着座位置が制限されてしまうため、着座したまま50q以上の距離を走るような使用方法には不向きです。というのも、坂道で尻を前後にずらして重心を移動したり、着座位置を変えることによって疲労や疼痛を軽減したり、といった使い方が出来ないからです。

 いつも自転車に乗る時にレーパンを履いているような人ならば、ひょっとすると偽スパイダーに対して、それほど違和感を覚えないのかも知れません。しかし、私にとっては、違和感だらけでした。

 幸いにして、送料込み1400円なので、すぐに元は取れてしまいます。壊れるまで、我慢して偽スパイダーを使ってみることにします。


つづく・・。
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posted by 司法書士 前田 at 09:50| Comment(0) | 自転車

2014年11月03日

関西でもオンライン申請を推進しましょう!

1. はじめに
 私が司法書士の資格を取って、最初に勤務した千葉県柏市の司法書士・土地家屋調査士事務所では、100%の登記案件(不動産権利・表示登記、商業・法人登記)をオンライン申請していました。オンライン申請とは、申請データを、インターネット経由で法務局のコンピューターに直接送信する方式のことです。これに対して、昔から行われている申請書類を法務局の窓口に持っていく申請の方式を、「窓口申請」、「書面申請」とか「紙申請」と呼んだりします。
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 東京近郊では、オンライン申請の普及率が高く、金融機関や関係事業者(不動産業者、ハウスメーカー等)もオンライン申請に対して十分に認知しています。当然私も、オンライン申請が、既に司法書士業界では当たり前の申請方法であるという常識に、特に疑いを持つこともありませんでした。

 しかし、この「常識」は、関西地方では通じません。私も、神戸に引っ越してきて初めて気づいたのですが、関西地方では、今でも「窓口申請・書面申請」が主流です。これは、何故なのでしょうか?

 今回は、関西地方でオンライン申請方式が普及しない理由を検討するとともに、オンライン申請を普及させるためには何をする必要があるのか、について考えてみましょう。

 ちなみに、私の事務所(神戸六甲わかば司法書士事務所)では、どうしても書面申請しなければならない特殊事情がある場合を除いて、全ての登記案件をオンライン申請する方針です。


2. オンライン申請普及を阻害する要因
(1) オンライン申請は危険であるという偏見
 「停電や法務省のサーバーが故障した場合など、オンライン申請では危険である。」というような偏見があります。

 このような事を言う人は、多分、書面申請するために登記所に書類を持っていく途中で、書類を運ぶ人が交通事故にあったり、交通麻痺のため開庁時間内に間に合わなかったり、といった危険に考えが至らないのでしょう。

 むしろ、オンライン申請の準備をしておけば、インターネット・インフラが故障した際にも、素早く書面申請に切り替えることは容易く出来ます。逆に、書面で提出しようと思って準備してきたものを、慌ただしい申請予定日当日にオンライン申請に切り替えるのは、とても難しいことです。


(2) 連続申請案件に複数の申請代理人がいること
 例えば、ある人が、銀行の融資を受けて建売住宅を購入したという場面を考えてみましょう。この場合、典型的には、@土地の移転の登記、A建物の所有権保存の登記及びB銀行(又は保証会社)の抵当権設定登記が必要になります。

 関東地方では、@〜Bの権利変動に関して、一人の司法書士がそれぞれの当事者(土地の売主及び買主、建物の買主、銀行)から委任を受けて、一連の登記を申請します。

 これに対して、関西地方でよくある例では、@に関して土地の売主からA司法書士が委任を受け、@及びAに関して土地・建物の買主からB司法書士から委任を受け、Bに関して銀行からC司法書士が委任を受ける、というものです。この場合には、ABCという3人の司法書士が、一連の登記申請を行うことになります。

 私も、関西地方の不動産売買残代金の決済に立ち会った時に、当事者よりも司法書士(及びその補助者)の数の方が多かったというおかしな状況に何度も遭遇しました。一人で出来るような仕事を、立派な大人が5人も6人もかかってやるというのは、いかがなものでしょうか?

 実は、このように連続申請案件に複数の申請代理人がいると、オンライン申請にとっては、とても不都合です。なぜならば、オンライン申請が想定しているのは、一連の登記案件を、一人の申請代理人が全ての当事者から委任を受けて申請する場面だからです。

 複数の申請代理人が、同一又は連件関係にある登記を協同して申請することは不可能ではありません。しかし、それをするのは、オンライン申請に習熟した者ですら容易には試みないほど難しいことです。それであれば、複数の代理人が作成した書類を、ホッチキスでまとめて、法務局の窓口に提出する方がはるかに楽です。このように関西地方では、書面申請の方が楽であるという奇妙な状況が生じることがあります。


3. オンライン申請の利点
(1) 行政手続きの効率化
 登記のオンライン申請も、政府の推進する「電子政府」化の大きな流れの一部です。電子化によって、行政の事務手続きが省力化されれば、税金をもっと有用な用途に振り向けることが出来るはずです。

 具体的には、法務局にとっては以下のようなメリットがあります。

 a. オンライン申請においては、法務局員がデータ入力を繰り返す手間を省略できる。
 b. 申請案件の審査に最低限必要な登記原因証明情報も、即時に法務局に送信・保存される。
 c. 申請に誤りがあった場合の補正も、オンラインで行うことができる。

(2) 司法書士事務所の事務の効率化
 司法書士事務所にとっても、オンライン申請には以下のようなメリットがあります。

 a. 申請や補正のため、何度も書類を持って法務局に行かなくて済む。
 b. 申請受付番号を、送信後即時に取得できる。
 c. 単純作業のためだけに大勢の補助者を雇用する必要がない。


4. オンライン申請普及のために
(1) 偏見の克服
 書面申請ばかりしている理由が、「皆がやっているからなんとなく今までどおりやっている」というものであれば、その態度は直ちに改めるべきです。オンライン申請など、導入してみれば誰でも扱える非常に簡単な仕組みです。使わなければ損です。

(2) 不動産売買契約書の改訂
 不動産業者も、なんとなく皆の使っている売買契約書の雛形を使い続けているのでしょう。しかし一度契約書の文言を見直していただきたいのです。「登記申請代理人を指定する権限は、不動産の買主にある」という旨の一文を入れて欲しいのです。関東地方の標準的な売買契約書には、このような文言が入っているはずです。これにより、関連案件に過剰な数の代理人司法書士が関与することを防止することができます。


 細かいことを言い出せばきりがありませんので、今回はこのあたりで終えておくことにします。皆様の忌憚のないご意見をお寄せください。
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posted by 司法書士 前田 at 23:34| Comment(0) | 登記業務