2019年04月30日

ピーナッツは身体に良い・・か?


幼少期を過ごした千葉県習志野市。当時、近所にはピーナッツ畑が沢山あって、殻付のまま炒ったピーナッツをよく食べました。ピーナッツアレルギーの存在すら一般には知られていなかった時代です。

現在でもピーナッツは私の大好物の一つで、日常的に沢山食べます。ただし、国産は高級品になってしまった(中国産の約10倍の価格!)ので、ほぼ中国産というところ(市場流通量の9割超!)が昔と大きく違います。

ところが最近、ピーナッツが身体に良くないという話をしばしば耳にするようになりました。ピーナッツ愛好家としてこれは聞き捨てなりません。

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1 栄養豊富なピーナッツ
ピーナッツは、実はナッツ(木の実)ではなく、大豆などと同じマメ科の植物です。このことは、ピーナッツ畑を見たことのある人にとっては当たり前のことですが、ピー「ナッツ」という名前のせいで誤解している人も多いでしょう(ちなみに、「ピー」( peas )とは「豆」という意味です。)。しかし、栄養や味の点では、ピーナッツは、豆よりもナッツに近いという特徴があります。

マクロ栄養素(タンパク質、脂質、炭水化物)を見ると、ピーナッツの約半分は脂質、約1/4はタンパク質、そして約1/5が炭水化物です。アーモンドに近い栄養構成と言えます。

脂質のうちでは、酸化に強い単価不飽和脂肪酸と飽和脂肪酸を合計した割合が7割を超え、残りは多価不飽和脂肪酸です。多価不飽和脂肪酸ではオメガ6脂肪酸が殆どを占めます。脂質が多いということは、エネルギー(燃焼を基準として表現すると「カロリー」)豊富ということです。

タンパク質を構成するアミノ酸のなかでも、ピーナッツに多く含まれるトリプトファンはセロトニン(「リラックス」ホルモン/神経伝達物質)やメラトニン(「睡眠」ホルモン)の原料となり、精神安定や体内時計制御等に重要な役割を果たします。

マイクロ栄養素(ビタミン、ミネラル)を見ると、ビタミンEとビタミンB群(チアミン、リボフラビン、ナイアシン、パントテン酸、ピリドキシン、葉酸)を多く含むことが特筆されます。また、多様なミネラル(銅、マンガン、カリウム、カルシウム、鉄、マグネシウム、亜鉛、セレニウム)をバランスよく含みます。

また、ピーナッツの渋皮には、レスベラトロール(ポリフェノールの一種)が含まれています。赤ワインに入っているのと同じものです。レスベラトロールの抗酸化作用については今更言うまでもありません。



2 ピーナッツが健康に良くない理由
上記のとおり、ピーナッツは理想の食品のように思えます。しかし、最近、ピーナッツに対する否定的見解を多く聞くようになりました。4つだけ紹介します。

ピーナッツが身体に良くないとされる一つ目の理由は、カビ(アスペルギラス)とその作り出す毒素( aflatoxin )のためです。カビの影響を受けやすいのは、ピーナッツが湿気の多い土壌中で生育する(地上で受粉した種子が地中に潜り込んで成長する。「落花生」はこの成長過程を現す名称。)からです。生の殻付きピーナッツを剥いたことのある人なら、心当たりがあるかもしれません。ピーナッツには、他のマメ科の植物と同じようにカビや虫害を防ぐための自然の防御機能が備わっていますが、完全にカビを防ぐことはできないのです。カビ自体がアレルギー等を引き起こすのに加え、その発する毒素には肝臓ガン等との関連が指摘されています。

二つ目の理由は、残留農薬の問題です。特に他の遺伝子組換作物と輪作する場合、ピーナッツ(ピーナッツ自体は遺伝子組換作物ではありません。)が土壌のグリホサート(除草剤/抗生物質)を吸収してしまいます。70年代から広く使用されるようになったグリホサートについては、自閉症、アレルギー、自己免疫症( autoimmune disease )、等々、近年急増している様々な病気との関連が指摘されています。

三つ目は、マメ科の植物に多く含まれるレクチンというタンパク質です。レクチンは、植物がカビや虫害から身を守るための防御機能の一つですが、捕食者であるヒトに対しては他の栄養素の消化・吸収を阻害したり、腸管壁遺漏症候群( leaky gut syndrome, intestinal permeability )、小腸内細菌過剰症( small intestine bacterial overgrowth )、自己免疫症、クローン病、リューマチ性関節炎、等々を引き起こしたりする原因になると指摘されています。シリアック病やグルテン不耐性で近年話題のグルテンもレクチンの一種です。

四つ目は、ピーナッツの不飽和脂肪酸がオメガ6系であることです。ヒトの体内で自己生成できない多価不飽和脂肪酸のことを「必須脂肪酸」(「必須」とは「食事から必ず摂らなければならない」という意味。)と呼びます。ヒトにとっての必須脂肪酸はオメガ3系とオメガ6系です。どちらも必要ですが、その理想の比率は1対1です。オメガ6系の比率が高くなりすぎると、身体のあちこちで炎症を引き起こします。ただでさえ(ピーナッツを食べなくても)現代人の食生活は、オメガ6過多の状態です。炎症は、心臓病、動脈硬化、糖尿病、ガン、関節炎、アルツハイマー等々、万病のもととされます。




3 どのように考えるか?
健康や医療に関しては相互に矛盾した(又は一見矛盾するような)情報が飛び交い、一般消費者だけでなく「専門家」までをも惑わせます。なぜそのような矛盾した情報が流通しやすいのでしょうか?すぐに思い当たるだけでも次のような理由があります。

@ 疫学調査がいい加減である。
A 動物実験の結果を安易にヒトに当てはめる。
B 調査・研究が利益相反のある業界の資金によって成り立っている。
C 各種ガイドラインの設定・順守に利益相反のある業界の影響が及んでいる。
D センセーショナルな(ウソの)健康情報に大きな宣伝効果がある。
E 健康は宗教と似ている。
F すべての食品にはプラスとマイナスとの両面がある。

上の@〜Bは、調査・研究の方法やその解釈に関する問題です。B〜Dは、お金の絡んだ問題です。Eは、思考の柔軟性の問題です。

そしてFは、比較衡量と節度の問題です。例えば、酸素が身体に良いからと言って酸素を過剰に吸えば、かえって細胞の酸素/二酸化炭素交換を阻害したり、活性酸素により老化が促進されたりすることになってしまうのです。ものの一面だけ強調するのは、たとえ本当のことを言っているのだとしても、嘘をつくのと同じです。ピーナッツについても同じことです。

結局、いろいろなネガティブ情報にもかかわらず、私はピーナッツを食べ続けています。今まで身体の調子がおかしくなったこともありません。どんな食品でもそうですが、自分の身体と相談しながら食べるということが肝要なのです。


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(圧力鍋の中身は・・?)


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(黒砂糖と醤油で味をつけた渋皮付ピーナッツ。激うま!)



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タグ:健康
posted by 司法書士 前田 at 14:21| Comment(0) | 日記

2019年04月23日

メタボの兆候を見逃すな!


メタボリックシンドロームとは、代謝異常にまつわる様々な病気やその予備軍をひとまとめにした呼称です。2型糖尿病はその代表格です。ちなみに、シンドローム(症候群)とは、説明のつかない(又はいちいち説明するのが面倒くさい)ものについて分かったふりをするときによく用いられる用語です。

多くの人は、定期検診等で初めてメタボを自覚しますが、これはいかがなものでしょう?自分の身体のことを一番よく知るべきは自分であって、検査数値でも、医者でも、ましてや製薬/サプリメーカー/フィットネス業界等でもないのです。

そこで、今回は、分かりやすいメタボの兆候について考えてみましょう。予め断っておきますが、私には医学的見地から発言するような特別な資格はなにもありません。ただの健康オタクです。また、兆候の話はしますが、治療や予防の話はしません。詳しいことを話すつもりもありませんし、できません。以下読んでみて思い当たるフシがあったら、試行錯誤しながら生活改善してみてください。自分に合った生活改善方法など赤の他人(医者等)に分かることは稀だし、他人に丸投げして良い結果を得られることは更に稀なことだと思うのです。

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1 胴囲
ヘソの高さで測った胴囲が、身長の2分の1を超えたら危険水域だと心得ましょう。これは、内臓脂肪の量に相関する指標です。ただし、この指標については、危険水域の手前だから安全というわけではなく、手前でもこれに近づけば近づくほど危険が増していくと考えるべきです。男女差はありません。このくらいの胴囲に達すれば、身体の中ではいろいろマイナス方向に変化が起き始めているはずです。

また、太るにしても、人によって皮下脂肪型(比較的安全)と内臓脂肪型(危険度高い)というタイプがあることには注意すべきです。日本人で圧倒的に多いのは内臓脂肪型です。ポッコリとお腹だけが出てくるタイプです。内臓脂肪型の人は、危険水域手前でも十分危険です。

例えば、身長168pの私は、胴囲84pからが危険水域です。実際の胴囲が75pなので、私には9p分のメタボ的余裕があるということになります。

似た指標としてBMI(body mass index)があります。BMIは、次のような計算式で求められます。25以上が肥満である(標準は18.5〜25未満)とされます。

計算式: BMI=体重kg÷(身長m)2乗

BMIは筋肉も体脂肪も一緒くたにして、体重と身長だけで計算します。筋肉量が多いことはメタボを防ぐうえで重要であるにもかかわらず、BMIはアスリートと非アスリートとを区別しないわけです。

例えば、身長1.68m・体重64sの私のBMIは22.68です。これは一応標準内ですが、肥満に近い値です。筋トレバカの私にとって何の指標にもなりません。もちろん、座りっぱなしで筋肉量の少ない人にとっても何の指標にもなりません。

ちなみに、市販の体組成計も正確性に欠けるので、BMI同様、あまり役に立ちません。

内臓脂肪が溜まってしまうのは、皮下脂肪だけでは脂肪(=動物にとっての「蓄電池」)の置き場所に不足してしまうからです。置き場所に困った脂肪は、内臓の周りだけ出なくて、肝臓の中にも、すい臓の中にも、心筋の周りにも、骨格筋の繊維の間(=霜降り)にも溜まります。そのようになる根本的な原因は高インスリン症です。高インスリン症の主犯は、糖(及び分解されて糖になりやすい食品)の摂り過ぎです。

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(コサックスクワット。運動は大事だが、運動で痩せるというのは誤解。)



2 肌
肌には内臓の状態がよく反映されます。口から肛門までの消化管は、皮膚組織と同じく身体の外側であって、どちらも同じ役割(保護、選別、免疫等)を果たしているのです。

肌がくすんでいたり、乾燥したり、過度に脂っぽかったり、ニキビやスキンタッグ(首イボ)が出来たりするのを単に遺伝、敏感肌や老化のせいにしていないでしょうか。ひょっとすると、それらは、日常口にしている食物や薬が原因かもしれないし、室内のカビや化学物質が原因かもしれないし、仕事や人間関係のストレスが原因かもしれないし、睡眠不足が原因かもしれません。そうだとすれば、皮膚の上からいろいろ塗りたくったくらいでそれらが改善することはないでしょう。

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(ビタミンD受信中)



3 眼
眼は脳の一部です。目に現れる兆候は、脳に起こっている変化を反映したものであることが多いでしょう。

白目が充血したり、焦点が合いづらかったり、視野の一部が欠けたり、等々。眼科で治療できるのはせいぜいそれらの症状でしかありません。意地悪な言い方をすれば、症状だけ治療するということは、原因を誤魔化してしまうことでもあるのです。原因が長年の生活習慣の蓄積にあるのだとしたら、それを薬や手術等で治療できると期待するのは能天気というものです。



4 慢性痛
一過性の痛みというのは原因が分かりやすいので、対処が容易です。また、一過性の痛みは、身体を強くしてくれることもある有難いものです(例:筋トレと筋肉痛)。メタボで気をつけなければならないのは慢性痛の方です。

慢性化している頭痛、肩こり、関節痛等の原因がその痛い部位自体にあることは稀です。そのため、病院を何軒も渡り歩いても原因が分からず、結局、薬に頼っているという人も多いでしょう。しかし、それでは痛みが居座るだけでなく、薬の副作用まで背負い込むことになってしまいます。

慢性痛の原因候補を挙げれば、次のようなものです。一つずつ地道に潰していくことが必要です。医者が代わりにやってくれるわけではありません。

・ 炎症や自己免疫症を引き起こす食事(過剰糖質、レクチン等植物毒、乳製品等)
・ 栄養不足(ビタミン、ミネラル、コレステロール等)
・ 薬、化学物質、重金属
・ 睡眠不足、ストレス
・ 運動・柔軟性・可動域不足
・ 姿勢・骨格のずれ



5 免疫力
自分の免疫力の状態を知るには、簡単な目安があります。高価な検査は不要です。三つ紹介します。

まず一つ目は、「口内炎の出来やすさ/治りやすさ」という目安です。免疫力が高い状態であれば、口の中が多少傷ついたくらいで痛みを伴う炎症にはならないし、炎症しても1〜3日以内で自然治癒します。口内炎が長期間続いたり、治ってもすぐに繰り返したりするようであれば、免疫力が落ちていることの現れです。また、口内炎のきっかけとして、咀嚼中に頬の肉をよく噛んでしまうということも脳神経に乱れが生じていることの現れです。

二つ目は、口唇ヘルペスです。口の周り等に水ぶくれができます。口唇ヘルペスの原因となる単純ヘルペスウイルスにはたいていの人が感染しており、普段は無害です。ところが、宿主(=ヒト)の免疫力が落ちると、ウイルスが口や性器の周りに出てきます。分かりやすく言えば、沈みかけた船(=免疫力の落ちたヒト)からネズミ(=ヘルペスウイルス)が逃げ出すようなイメージです。

三つ目は、風邪です。健康な人なら、年に0〜2回程度風邪をひいて、10日程度までで自然治癒します。風邪をひく回数又は治癒までの日数がこれを上回っていたら、免疫力が落ちているということです。

ちなみに、多くの人は、風邪薬を飲めば風邪が治ると勘違いしています。しかし、風邪薬というのは、解熱、消炎、咳止め、鼻水止め等をするための薬品です。冷静になって考えてみれば分かるように、風邪をひいて熱が出るのも、ノドや扁桃腺等が腫れる(炎症する)のも、咳や鼻水が出るのも、全て身体の正常な免疫反応なのです。これらを抑制するような薬を飲むことは、火災と闘っている消防士の邪魔をするに等しいことです。



6 排泄
大便も小便も身体からの「お便り」です。便には生活習慣が分かりやすく反映されるのです。毎日自分の排泄物を観察する習慣をつけましょう。きっと大切なことが自ずと分かるでしょう。詳しく書かない理由はお察しください。

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タグ:健康
posted by 司法書士 前田 at 10:49| Comment(0) | 日記

2019年04月15日

成年後見人等には「身近な親族を選任することが望ましい」(最高裁判所見解)


2019年3月18日に開催された成年後見制度の利用の促進に関する有識者会議において、最高裁判所は、成年後見人等には「身近な親族を選任することが望ましい」との後見人選任に関する公式見解を明らかにしました。

以前の記事「成年後見制度について(問題と展望)」で、成年後見人と親族との間で対立が生じる背景等について解説しました。今回は、上記最高裁見解について、考えてみましょう。

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1 成年後見制度の利用の促進に関する法律(以下、「成年後見利用促進法」という。)
平成28年4月8日、成年後見利用促進法が成立し、同年5月13日から施行されました。成年後見制度の利用が日本社会の高齢化に見合うほどに十分進んでいない現状に鑑み、制度利用促進について国家の責務を明らかにするものです(成年後見利用促進法第1条)。

高齢化にもかかわらず成年後見制度の利用が進んでいないというのはどういうことでしょう?

このことを確認するために最高裁判所事務総局家庭局が毎年発表している「成年後見関係事件の概況」を見てみましょう。細かい増減を見ることは本稿の目的ではないので、大雑把な数字だけを見ます。

平成26年から平成30年までの5年間を見ると、毎年3.4〜3.6万件台の成年後見等開始審判申立が行われています。これは、1年間に新たに後見、保佐、補助、及び任意後見の開始(成年後見「等」というのは、これら4類型を合わせたものです。任意後見については、監督人が選任されることにより後見が開始します。)の審判が申し立てられたということです。申立件数は、最近2年間で若干増えています。そして、申立件数のほとんど(95%超)において、申立を認容する審判が行われました。

既に成年後見等が開始している事件の利用者数の推移をみると、平成26年の184,670人から平成30年の218,142人まで増加しました。つまり、毎年、平均6,700人くらいずつ利用者が増えているということです。

利用者数というのは、成年後見制度によって保護される本人(被成年後見人、被保佐人、被補助人、被任意後見人)をすべて含んだ人数のことです。そして、一旦後見等が開始されると、本人が死亡する(又は他の後見類型に変更される)まで制度利用は原則継続するので、この約6,700人というのは、大雑把に言えば、新規開始申立等の認容事件数から、本人死亡等により終了した事件を引いた数ということになるでしょう。

以上からは、成年後見制度の利用が進んでいないかどうかということはまだあまりよく分かりません。

比較のために、同じ期間(5年間)の高齢化について見てみましょう。

この期間、高齢者(65歳以上)人口数は、3200万人(平成26年)から3557万人(平成30年)まで増加しました。これを総人口に占める高齢者の割合に換算すると、たった5年の間に25%(平成26年)から29.5%(平成29年)にまで高齢化が進んだということになります(総務省統計局データによる)。ただし、高齢化は、高齢者人口増加とともに総人口減少の結果でもあります。

高齢化の急速な進行の一方で成年後見開始等申立件数が横ばいに近いということなので、たしかに成年後見制度の利用は進んでいないという結論になるでしょう。



2 第三者成年後見人等選任の事情
法定後見3類型(成年後見、保佐、及び補助)について平成30年に選任された成年後見人等のうち親族は23.2%で、残り76.8%は第三者(多い順に、司法書士、弁護士、社会福祉士。)でした。

平成12年、禁治産制度に代わって成年後見制度がスタートした当初は、親族が成年後見人等に選任されることが主流(91%)で、第三者が選任されるのは少数(9%)にとどまっていました。

ところが、親族後見人の選任割合は制度開始からほぼ一貫して低下し、平成24年を境に親族後見人と第三者後見人の選任割合が逆転します。そして、平成30年には上記の選任割合に至ります。


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(第三者後見人を偏重するようになった傾向)

前回記事でも述べた通り、家庭裁判所が第三者後見人を偏重するようになった背景には、被後見人等財産の不正な処分(横領等)による被害が増大したことがあります。

ところが、家庭裁判所は、本来であれば自らの監督機能を強化すべきところ、第三者後見人を選任するという安易な方法により不正を防止しようとしてきたのです。

成年後見人等の選任に関するこの経過を概観すると、「専門職第三者は制度についてあらかじめよく知っているはずだから、いちいち細かいことまで指導監督しなくてもよい。それに、報酬を付与しているのだから、適正に財産管理してくれるはずだ。」という家庭裁判所の本音が透けて見えてきます。

成年後見制度の利用が低迷しているのは、赤の他人(第三者後見人)に被後見人等となるべき本人の財産を握られてしまううえに報酬を取られてしまうのを、申立人となるべき親族が嫌うことが一因でしょう。「財産を握られてしまううえに報酬を取られてしまう」というのは人聞きの悪い誤解ですが、多くの人がそのように感じていることは事実です。

もちろん、制度利用が低迷している理由はそれだけではありませんが、本稿のテーマから外れるので述べません。



3 影響・効果
成年後見人等には「身近な親族を選任することが望ましい」との後見人選任に関する最高裁判所の見解は、家庭裁判所の安易な第三者後見人等選任に歯止めをかけるものです。

このこと自体は歓迎すべきことだと思います。

というのも、これまで家庭裁判所は、後見開始申立にいたる具体的事情や本人を取り巻く親族関係を具体的詳細に検討せずに、現預金の額だけを基準(大まかに1200万円超と言われています。)として第三者後見人を(親族に優先して)選任してしまっていたように見えるからです。この傾向は、私(申立に関わる司法書士)にとっても目に余るものでした。

後見人選任についての上記見解が表明される前の平成31年1月、最高裁判所はすでに同見解をすべての家庭裁判所に通達していたとのことです。よって、今後、家庭裁判所は、適任な親族がいない等の場合を除いて、原則として親族を成年後見人等に選任するようにせざるを得ないでしょう。

また、既に第三者後見人が就いている継続事件についても、親族からの申立てによって成年後見人等の変更が行われるような事案も増えるでしょう。第三者後見人に対して不満を持っている親族はとても多いのです。従来、第三者後見人に余程の不正でもない限り、途中から成年後見人等を変更するなどということは困難(事実上不可能)でした。

注意すべきは、今回の最高裁判所の見解表明が変化のきっかけに過ぎないということです。

家庭裁判所が安易に第三者を成年後見人等に選任することができなくなったということは、親族後見人に対して従来よりも細やかな指導監督が必要になるということを意味します。ところが、長年、指導監督体制の拡充をサボってきた家庭裁判所に、一朝一夕でこの変化を期待するのは楽観的に過ぎるでしょう。

おそらく、家庭裁判所は、親族を成年後見人等に選任する代わりに、第三者を成年後見監督人等として同時に選任することによって指導監督体制の不足を補おうとするものと考えられます。ただし、家庭裁判所は、このような対応が応急措置でしかないことを自覚しておくべきでしょう。なぜなら、それは、家庭裁判所の指導監督という役割を、本人の金銭的負担によって、第三者に丸投げするに等しいことなのですから。




posted by 司法書士 前田 at 12:46| Comment(0) | 成年後見

2019年04月06日

所有者不明土地問題のこれから


2017年12月の所有者不明土地問題研究会(半民半官の研究会。以下、「研究会」という。)の最終報告に続いて、2018年6月には「所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法」(2019年6月1日施行予定)が制定されました。現在、同じ問題について、法制審議会(法務大臣の諮問機関)において2020年の国会提出を目指して相続法及び登記法の改正が議論されています。

また、所有者不明土地問題との共通点の多い空家問題については、これらに先立つ2014年11月、「空家等対策の推進に関する特別措置法」(2015年2月26日施行済)が制定され、最近この運用の影響が良くも悪くも出はじめています。

今回は、同じテーマを扱った前回記事「『所有者不明土地問題』を読む」の続きです。

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(人々の土地への関わりは、明治維新以降大きく変化した。)


1 所有者不明土地問題についての誤解
(1) 「所有者不明」とは?

所有者不明土地が大きな社会問題だと聞けば、多くの人々は、自分の家の近所に突如として誰のものか分からない土地が出現したという場面を想像するかもしれません。確かに、そのような例も皆無ではありません。しかし、ほとんどの所有者不明土地はそのような想像とはかけ離れたものです。

まず、ここで「所有者不明」とは、いかなる状態を指すものかについて確認してみましょう。

研究会は、この点を「不動産登記簿等の所有者台帳により、所有者が直ちに判明しない、又は判明しても所有者に連絡がつかない土地」と広く「定義」し、「所有者不明土地」が九州に匹敵するほどの面積(410 万ha)に広がっていると発表しました。

また、上記「所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法」第2条第1項は、「『所有者不明土地』とは、相当な努力が払われたと認められるものとして政令で定める方法により探索を行ってもなおその所有者の全部又は一部を確知することができない一筆の土地をいう」と研究会よりはやや限定して定義しています。ただ、これも相当広い「定義」であることが分かります。

「所有者不明」と言われれば、一般の人は、「誰のものか分からない」という状態を指すと考えがちですが、所有者不明土地問題における「所有者不明」は、この普通の意味ではないのです。

というのも、日本の民有地は、たとえ所有名義人が死亡して数十年単位で登記簿がそのまま更新されずに放置されたとしても、相続人を確定すること自体ほとんどの事案において可能であるからです。つまり、ほとんどの土地について、所有者(又はその相続人)が分かるということです。

所有者不明土地問題における「所有者不明」とは、分かりやすく言えば、

・ 登記簿上の名義人の連絡先が不明になっている、
・ 死亡した名義人の相続関係を調査するのに手間がかかる、
・ 相続関係調査に手間をかけるほどの経済的価値が乏しい、
・ 相続人間で話し合いがつかない、
・ 登記簿に不備があるために本当に誰のものか分からない、等々

の全てを含んだ概念なのです。


(2) 土地に対する一般イメージ?
一般の人がイメージする「土地」は、まず自分の生活圏を中心としたものでしょう。都市人口が大半を占める現在の日本において、それは住宅用地や商工業用地等、一般の人が目にしやすい土地を指します。

しかし、国土全体を議論の対象とするのであれば、この土地に対する一般イメージはかなり偏ったものと言わざるを得ません。

試みに、国交省の「平成27年度土地所有・利用概況調査報告書」を見てみましょう。

日本の行政権の及ぶ国土面積(北方領土を除くということ。)は3700万ha余りです。

これを所有主体別に見れば、国公有地28.3%、民有地43.4%、その他28.2%です。「その他」とは、公的台帳に記載された面積が正確でなかったり、非課税地のために固定資産資料から漏れていたり等のために生じたギャップです。(「その他」は国家の情報管理・処理能力のお粗末さの一端を示すものですが、本稿ではこれ以上触れません。)そこで、国公有地と民有地という大きな括りに限れば、その比率は4対6となります。

一方、国公有地、民有地及びその他を全て合わせて、これを土地利用状況別に見れば、その割合は高い順に、森林原野67.2%、農用地12%、宅地5.1%です。ただし、この「宅地」とは、商工業用地等を含む広い概念です。また、「利用状況」とは、登記簿上の「地目」のことではなく、現実の利用状況を指します。

この利用状況についての数字は、多くの人にとって意外に感じられるかもしれません。しかし、衛星写真を見れば別に意外でも何でもないことに気づかされます。日本は、山林や農地が8割を占め、ほとんどの人々が狭い土地(5.1%の部分)に集まっている、そんな国なのです。

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(緑の多い日本列島。)


(3) 最近の現象か?
所有者不明土地問題が最近突如として出現したというのも大きな誤解です。

日本の土地私有制度は、明治初期の地租改正を契機として成立しました。簡単に言えば、150年位前、できたばかりの明治政府は、租税を土地の生産力をもとに金納化するとともに、土地の所有権を人々に引き渡したのです。土地登記制度も、これとほぼ同時期に誕生しました。

当時、日本はまだ農業社会で、人々の経済活動は土地とより密接に結びついていました。農地は作物を、山林は木材、燃料、そして山菜等の恵みをもたらしました。

時は流れ、現在、全就業人口6664万人のうち、農業就業人口は175.3万人(2.6%)に過ぎません(平成30年の総務省統計、農林水産省統計)。林業就業人口にいたってはたったの4.5万人(平成27年の林野庁統計)です。さらに、農林業従事者の高齢化も進みます。

このような状況で、国民の多くが国土の大部分を占める山林や農地の権利関係について無関心になるのは当然のことです。つまり、所有者不明土地問題の底流には、日本がこの150年間に経験した社会・産業構造の変化があるのです。



2 所有者不明土地問題解決の障害
(1) 解決の方向性

問題の解決策として相続登記の義務化等も検討されていますが、それは単に手続的な枝葉に過ぎないでしょう。本質的な解決策は、前回の記事でも挙げたとおり、以下の2つだと考えます。

ア 土地所有権放棄及び放棄地管理のための制度
イ 共有者の一人が単独所有権を取得する制度

(2) 解決への障害
ア 所有権放棄制度の障害
現行の民法によっても、理論上、土地の所有権を放棄することは可能であると解されています(通説)。そして、所有権放棄された土地は、国庫に帰属します(民法第239条第2項)。ところが、現実には、私人が土地の所有権を放棄したくとも、国家がそれを受け取るような制度はありません。

所有権放棄制度に類似する制度としては、相続税の「物納」(相続税法第41条)があります。もっとも、物納の対象となる土地には相応の資産価値がなければなりません。これに対し、所有権放棄の候補となるような土地には資産価値などないでしょう。加えて、資産価値ゼロの土地にも、管理のための多種多様のコストは必ずかかるのです。

そのコストは誰が負担するのでしょう?土地の所有権放棄制度を創設するうえで、この点は大きな障害となるでしょう。


イ 「共有」の問題
同じ対象物に関して複数の権利者が存在するという状態には、「物権共有」(民法第249条等)と「遺産共有」(民法第898条)とがあります。

単に共有といえば、ふつうは物権共有のことを指します。夫婦が半分ずつ出資してマイホームを購入したような例を思い浮かべればよいでしょう。

一方、遺産共有とは、相続人が複数いるときに、遺産分割が終わっていないために相続財産を構成する個々の財産について最終的な帰属先が決まっていない状態を指します。所有者不明で問題となる土地は、遺産共有状態のものも多く含まれるでしょう。

ここで、もし所有者不明とされる土地の共有者全員(又はそれと同等の者全員)が取得を希望しないのであれば、物権共有であれ遺産共有であれ、速やかに所有権放棄制度を利用できるようにすべきでしょう。

これに対して、もし所有者不明とされる土地の共有者の中に取得を希望する者がいるのであれば、物権共有であれ遺産共有であれ、速やかに共有状態を解消する(=取得希望者の単独所有にする)のが望ましいと言えます。というのも、共有というのは非常に不安定な権利状態(=紛争等を生じやすい状態)であるからです。

現行法において、物権共有の解消のためには持分放棄(民法第255条)や共有物分割請求(民法第256条)等の手続を利用することができます。また、遺産共有解消のためには、相続放棄(民法第938条)、相続分譲渡(民法第905条第1項)、遺産分割(民法第906条等)等の手続を利用することができます。ただ、これら手続を利用できるような事案は、むしろ「軽症」の部類でしょう。軽症の事案を「所有者不明」に含めることすら矛盾しているといえます。

所有者不明が「重症」化した場合、数次の相続の結果、相続人が非常に多数となり、さらにその中に行方不明者や意思無能力者が出現します。このような場合、現行法においては、共有解消の手続を始める前提として、行方不明者について失踪宣告や財産管理人選任等を、意思無能力者のために後見人選任等を経なければなりません。もちろん、対象となる土地の資産価値が高いのであれば、複雑な手続をいくつも組み合わせても共有関係を解消する意味があるでしょう。しかし、そんな土地は、そもそも重症化しないものなのです。

さらに、明治大正期には、「権利能力なき社団」の所有する土地を、多数者の共有物として登記するという不用意なことが頻繁に行われました。このような土地については、共有解消のための現行法の手続はほとんど役にたちません。

現行法の手続から漏れてしまう事案まで包摂する共有解消の制度とは、どのようなものでしょうか?

今回、私の考えは述べないでおきます。



3 老朽分譲マンション問題との共通点
同じ不動産でありながら、建物を所有者不明の独立の問題として論じない(空家問題は、土地・建物をセットで扱います。)理由は、建物にはやがて滅失してしまうという性質があるからです。建物がなくなってしまえば、その所有権も(問題も)消えてしまいます。

しかし、建物といっても分譲マンションには土地と共通する性質があります。実は、マンションの建て替えは、非常に稀な例外を除いて事実上不可能なのです。つまり、滅失しない(=取り壊したくても取り壊せない)という点で、分譲マンションには土地と共通する性質があるのです。

1960年代以降に建てられた分譲マンションは、建て替え時期を向かえています。日本社会が人口減少局面を迎え、供給過多となった老朽分譲マンションは、近い将来、所有者不明土地と同じ問題を起こすことでしょう。

分譲マンションの権利関係の整理のためには、土地に関するよりも周到な施策を用意しなければならなくなるはずです。今回は、問題の指摘だけにとどめておきます。

kousou_building.png
(分譲マンションの権利関係はまるで時限爆弾。)

posted by 司法書士 前田 at 23:17| Comment(0) | 登記業務

2019年04月01日

禁じ手注意!(機械式ディスクブレーキの引きを軽くする小技)


2019年3月31日、自転車で登坂トレーニングに出ようと思ったら、小雨が・・。

そこで、トレーニングは止めて、いつも気になっていたディスクブレーキの引きの改善策を施してみることにしたのです。

機械式ディスクブレーキのレバーの引きが重い原因の一つに、キャリパーのバネ(リターンスプリング)が強すぎることが挙げられます。私の使っているキャリパー(シマノBR-M416)のバネは明らかに強すぎです。とりわけ長いケーブルの影響(摩擦と変形)が加わる後輪ブレーキにおいて、バネの強さがずっと気になっていました。

ところが、バネの強さを調整する機構などはもともと備わっていません。

そこで「目には目を」とばかりに思いついたのが、キャリパーのバネと反対方向に作用するコイルバネを取り付けるという方法「バネにはバネを」です。プラスチックの結束バンド(タイラップ)を使って取り付けるだけです。強さや長さの違うバネをいくつか用意して、試行錯誤します。


1.JPG
(取付位置、強さ、長さ・・を試行錯誤。)


2.JPG
(おおっ、軽い!)


3.JPG
(レバーを握っていない状態。)


4.JPG
(レバーを握った状態。)


もちろん、部品メーカーはこんな方法を推奨していません。命にかかわる部品を自己流に改造するなんてとんでもないことです。けしからん!・・・と一応ことわっておきます。試したい人は、くれぐれも十二分に安全性を確保したうえで、自己責任で。


IMG_2039.JPG
(追加写真:2019年4月6日、ブレーキの感触は良好。)




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posted by 司法書士 前田 at 12:28| Comment(0) | 自転車