2017年09月12日

70年代クォーツ時計の価値

ある物が「ガラクタ」に過ぎないのか「価値あるもの」なのかは、それを見る人の心の問題だと思います。つまり、価値というのは、物自体の中に最初から存在するのではなくて、その物に向き合った人の心の中に生まれるということです。

今回は、私のクォーツ時計3本を紹介してみたいと思います。予め断っておきますが、私は別に時計マニアではないので、ここに紹介するのはコレクション品ではなくて、毎日順繰りに使っている実用品です。時計について専門的な知識があるわけでもありません。
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(70年代のクォーツ時計。全て稼動する実用品です。)


1 セイコー「38クォーツ」
セイコーが1969年に世界に先駆けてクォーツ腕時計を市販化してから、わずか2年後、腕時計市場の拡大のために世に送り出したのが「38」の型番から始まるムーブメントを持った一連の腕時計「38クォーツ」です。
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(金ケースの38クォーツ。セイコーらしい形。)

私のQRは、38クォーツの中でも一番低価格帯のシリーズです。時期で言えば、1973年か1974年のものでしょう。低価格と言っても、発売当時は大卒の初任給相当の額です。クォーツ時計は、今でこそ「安物」とか「大量生産」とかのイメージで見られがちですが、当時の機械式の高級ライン「グランドセイコー」や「キングセイコー」に並ぶほど高価なものでした。

時計の造りもしっかりしています。秒針をじっと見つめていると、職人さんが丁寧に組み立てていたことが伝わってきます。半世紀近く前の腕時計が、今でも正確な時を刻んでいるのですから、良いものでないわけがありません。
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(ケースはかなりぶ厚い。現在の薄いクォーツとは別物。)

38クォーツの特徴の一つは、裏側に飛び出た「ヘソ」です。ヘソの部分には電池が入っています。ケースの中に大きな電子部品を入れたら、電池を格納するスペースが足りなくなってしまったわけです。こんなにヘソが出っ張っているのに、腕に装着すると、不思議とヘソの存在は忘れてしまいます。
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(飛び出たヘソは、電池交換しやすくて便利。)

ケースサイズは37mm×40mm×12mm、冠幅は18mm(ヘソ、竜頭を含まず)です。金メッキのケースに一番似合うのは茶色の革ストラップだと思いますが、汗をかく季節の間は通気性を優先してNATOストラップ(20mm)をつけています。冠幅よりも太いストラップをつけているのは、その方が見た目のバランスが良いからです。


2 リコー「570系リクォーツ」
コピー機のメーカーとして有名なリコーは、実は、世界でも希少な内製(in-house)ムーブメントを持つ老舗の時計メーカーです。70年代、リコーのクォーツ時計は「リクォーツ」というブランド名を冠していました。リコーは、国内ではセイコーに次いで、1971年にクォーツ腕時計(550系)を市販化しました。
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(シンプルな三針の時計。よく見れば秀逸なデザイン。)

570系のムーブメントは、550系の後継機です。570系リクォーツには意匠の凝ったものが多いなかで、私のリクォーツはとてもシンプルです。日付表示すらありません。しかし、文字盤は牡丹雪が積もったような立体感があり、よくよく見ると凝った造りであることが分かります。時期は、1974年か1975年でしょう。

電子部品が大きいため、現代のクォーツ時計に比べると、ケースが分厚いのが特徴です。牛乳瓶の底のような飛び出した風防(ガラス)にも妙味があります。また、時刻合わせを頻繁に行う必要がないため、竜頭は小さく、4時位置に埋まるように設置されています。ケースサイズは38mm×42mm×12.5mm、冠幅は18mmです。これも汗対策でNATOストラップ(20mm)をつけています。革ストラップやミラネーゼ(ステンレスメッシュのベルト)も似合います。
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(ぶ厚いケースの中には、電子部品がギュっと詰まっている。)


3 リコー「590系リクォーツ」
590系のムーブメントは、570系の後継機です。時期は1976年〜1978年くらいでしょう。
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(楕円のユニークな文字盤。ダイヤハードガラスが綺麗。)

このリクォーツは、前記570系のデザインを引き継いでおりシンプルですが、楕円形の文字盤が特徴的です。また、590系の多くには「ダイヤハードガラス」という硬い特殊ガラスが採用されており、風防が薄くなっています。このため、風防にはほとんど傷がなく、40年近く前の腕時計とは思えないほど透明感があります。
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(電子部品の小型化のおかげで、ケースが薄く、小型に。)

590系では電子部品の小型化が進み、ケースは現代のクォーツ時計の薄さに近づきました。ケースサイズは37mm×37mm×10mm(竜頭含まず)、冠幅は18mmです。これも汗対策でNATOストラップ(20mm)をつけています。文字盤の形が面白いので、ポップな色彩のNATOでも似合ってしまいます。もちろん革ストラップも似合います。



実は、上で紹介した570系リクォーツは、原因は不明ですが最近まで動いていませんでした。ところが、ダメもとでリコーに修理を依頼したところ、見事復活して戻って来たのです。古いクォーツ時計は、すでにメーカーにも部品がないので、基幹部品に致命的な故障が生じれば、もう修理できません。私は運が良かったのでしょう。

実用上は時間を確認するためだけの道具ですが、私は、これらの時計を見つめる度にとても楽しい気持ちになります。物の価値とは、そういうものなのでしょう。
posted by 司法書士 前田 at 23:28| Comment(0) | 日記
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