2018年07月04日

マルチ商法はお断り!


マルチ商法は、「無限連鎖講の防止に関する法律」で禁止される「ねずみ講」とは法律的に区別されていますが、どちらも社会一般にとって有害なものです。だいたい国民生活センターだけでも年間1万件を超える苦情や相談がよせられるような手口がまともな商売であるわけがありません。

そこで、今回は、特に若い世代向けの注意喚起として、マルチ商法について考えてみることにしましょう。



1 マルチ商法とは
「マルチ商法 」、「MLM(Multi-Level Marketing) 」、「ネットワークビジネス」などと呼ばれる取引手法は、全て同じものです。これらは、「連鎖販売取引」として「特定商取引に関する法律」(以下、「法」という。)の規制対象になっています。

マルチ商法は、次の要件を備えた取引です(法第33条第1項)。

ア 物品の販売(又は役務の提供)の事業であって、
イ 物品の販売(又は役務の提供)をする者を、
ウ 特定利益を収受しうることをもって誘引し、
エ その者と特定負担を伴う販売(又は役務の提供)をするもの。

これを分かりやすく図式化すると、次のようなピラミッド型の販売(又は役務提供)組織になります。

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マルチ商法の組織は、A(「統括者」)がB及びCを物品の再販売をする者(ディストリビューター)として勧誘し、BがさらにD及びEを勧誘し・・という具合に末端のディストリビューターH~Oへと広がって行きます。組織の構造は、ねずみ講のそれと同じです。ここで、Oが売り上げをあげれば、その一部がGに上納され、さらにその一部がCに上納され、更にその一部がAに上納されます。上記ウ・エの特定利益や特定負担とは、このような上納金を含んだ金銭等のやり取りのことを指します。

マルチ商法は、組織的な販売形態ですが、統括者とディストリビューターとの間にも、上位ディストリビューターと下位ディストリビューターの間にも雇用関係はありません。ディストリビューターは、それぞれ独立した事業者として、自己責任でこの仕組みに参加しているだけです。

これは、一見すると、仲買や卸業者が複数介在する通常の売買取引にも似ていますが、大きく異なるのは、上納金等の負担があるという点です。通常の取引ならば、小売業者は、仕入代金を支払ってしまえば、商品の売り上げに関して仕入先に対する義務を負いません。これに対して、マルチ商法においては、売り上げや卸しの各レベルで上納金等を納めなければならない仕組になっているのです。

また、物品の販売等を事業とすると言っても、マルチ商法においては、これは単に新たなディストリビューターを勧誘するための方便でしかありません。一般消費者向けに販売等することは、マルチ商法の関係者にとっては関心外のことなのです。つまり、マルチ商法とは、ディストリビューターをたくさんかき集めて、組織内部で販売対価(卸価)、会費、上納金、セミナー料、その他名目を問わず搾り取ることが目的となっている取引手口なのです。

マルチ商法とねずみ講とが異なるのは物品の販売等が介在しているという点ですが、それも単にディストリビューターを集めるための方便でしかありません。よって、両者に本質的な差はありません。さらに販売等事業の実体が薄ければ、正真正銘のねずみ講と言っても構わないでしょう(さいたま地方裁判所判決平成18年7月19日等)。



2 「違法でない」から大丈夫か?
マルチ商法が「違法でない」とか「合法である」とか言うのは、誤解を誘導する営業トークです。合法の中身も、真っ白なものから、マルチ商法のように黒に近いものまでいろいろあるのです。

マルチ商法がねずみ講に類似する有害な取引手法であることから、法は、これを行う者に対し、次のような規制をかけています(法第33条の2以下)。もし、マルチ商法が、その支持者たちの言うように全く問題のないものであるのならば、そもそも多くの規制など必要ないはずでしょう。

・ 氏名・勧誘目的等の明示義務
・ 事実の不告知、不実の告知、威迫等の禁止
・ 広告への一定事項の表示義務
・ 誇大広告の禁止、これに関する主務大臣への資料提供義務
・ 契約締結前の書面交付義務

上記規制の違反行為に対しては、経済産業大臣等が必要な措置を取ることを指示したり取引停止を命じたりすることができる(法第38、39条)他、書面交付義務等の一部違反については罰則も定められています(法第71条等)。

しかし、ディストリビューターが独立した事業者であるため、これらの規制がきちんと機能しているかどうかは疑問とせざるを得ません。現に、勧誘目的を隠して誘い出したり、不実を告知して勧誘したりするのは、マルチ商法では常套的な営業手口です。ディストリビューターは、親族、友人、知人、元同級生、職場の同僚等、ありとあらゆるツテを頼って勧誘活動を行うのですから、情義の裏に真実を隠しておきたいというインセンティブが強く働くのが道理というものでしょう。

法律違反の行為があっても、マルチ商法の主催者側は、末端のディストリビューターがやったことに対して何の責任もないと言い逃れてしまうわけです。



3 対抗手段
(1) クーリングオフ等
マルチ商法に関する契約をしてしまった場合でも、契約の効果を消滅させる手段が用意されています。

まず、契約してから日が浅い場合には「クーリングオフ」の利用を検討すべきです。クーリングオフとは、一方的な書面通知により無条件で契約を解除する制度です。ただし、クーリングオフの行使には期間制限があり、法37条2項所定の事項を記載した書面の交付を受けた日又は当該契約にかかる商品の最初の引渡しを受けた日のうちの遅いほうから起算して20日以内に行使する必要があります(法第40条第1項)。

ここでクーリングオフの効力は通知発信の時に生じるため、ちょうど20日目に郵便を発送しても有効です(法第40条第2項)。そもそも適式な書面交付の義務が果たされていない場合には、期間制限を気にせずにいつでもクーリングオフできます。

また、統括者や上位ディストリビューターが「この契約はクーリングオフできない。」と嘘をつく等してクーリングオフを妨害することがよくありますが、このような場合には、クーリングオフできる旨の書面があらためて交付されてから20日以内であれば、クーリングオフできます(法第40条第1項)。妨害行為後に、このような書面が交付されていないのであれば、期間制限を気にせずにいつでもクーリングオフできるということです。

さらに、クーリングオフの期間が経過してしまった場合でも、将来に向かって一方的に解約を行うことは可能です(法第40条の2第1項)。そのようにして解約を行った者のうち、入会後1年以内であることや商品の引渡し後90日以内である等の一定の条件に該当すれば、抱えた在庫を返品して適正な額の返金を受けることも可能です(法第40条の2第2項)。


(2) 巻き込まれないこと
マルチ商法に対する一番賢い対応は、最初からこれに巻き込まれないようにすることです。

経済的リテラシーの不十分な若い人は、マルチ商法に巻き込まれてしまう危険が高いと言えます。また、性別については、ディストリビューターの7〜8割は女性だと言われています。

以下は、マルチ商法のチェックリストです。どれか一つにでも当てはまったら、きっぱりと断ることが大事です。


マルチ商法チェックリスト
□ 「自宅で始められる仕事」、「安定収入」、「低リスク・高リターン」という謳い文句。
□ 「ねずみ講ではないから違法でない」を強調する。
□ 「アップライン」、「ダウンライン」が日常用語である。
□ 「ビジネス」、「起業」、「オーナー」、「革新」、「特別」、「奇跡」等の単語が飛び交う。
□ スターターキット、投資、購入、会費、セミナー等、やたらお金がかかる。
□ 親族や知人を勧誘することを事実上強いられる。
□ 報酬や販売の仕組が複雑である。
□ 物を買うだけのことを特権であるかのごとくありがたがらせる。
□ 「プラチナ」、「ダイヤモンド」等と変な名前のついた昇進制度がある。
□ 一般消費者への販売よりも、他者を誘い入れることに熱心である。
□ 取り扱う商品が、ネットオークションに大量出品されている。
□ 最近テレビで見ない芸能人の出演する奇妙なイベントで盛り上がる。
□ カルト(新興宗教)の雰囲気が漂う。
□ 夢のような良い話ばかりされる。







posted by 司法書士 前田 at 17:49| Comment(0) | 金銭トラブル
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