2017年06月26日

中国人の所有する不動産の相続について

 近年、中国人が日本の不動産に投資する事例が増えてきました。そのような取引を目にする度に、「将来その中国人所有者が死んでしまったら、不動産はどうなるのだろう?」という疑問を持たざるをえません。今回は、そんな問題意識を皆さんとちょっとだけ共有してみたいと思います。


1 あらたな問題?
 外国人が日本の不動産を所有するという現象は、最近になって突然生じたわけではありません。というのも、日本には古くから在日韓国人等の永住外国人が数多く暮らしており、彼らが日本の不動産を所有して居住や事業のために利用するといったことは別に珍しくはなかったからです。そして、彼らに相続が生じた際の不動産の承継手続きについても、実務の蓄積による方法論が一応存在しています。

 また、その他の外国人については、かつて日本の不動産を購入していたのは、熟練した個人投資家や機関投資家くらいであったように思います。そのような購入者であれば、承継(転売や相続)のことについても当然に織り込んでいるはずです。

 近年の中国人の不動産取引は、上記とは区別して考えた方がよいように思います。というのは、購入の目的は確かに投資ですが、その投資を必要とする主たる理由が中国国外への資産避難というところにあるからです。購入した後に、その不動産をどのように承継させるかというところにまでは考えが及んでいないように思われます。

 もし、中国人投資家が承継について無計画のまま日本の不動産を購入しているという印象が真実そのとおりであれば、将来、彼らの購入した不動産の権利関係について困難な問題が生じてしまうかも知れません。


2 日本人の相続と何が違うのか?
 日本人にとっては当たり前のことと思われるかもしれませんが、日本人に相続が生じた際には、@日本の民法が適用され、さらに、A戸籍制度によりその相続関係を容易に証明することができます。

 これに対して、外国人に相続が生じた際には、@もAも無いのが原則です。即ち、相続に関しては、被相続人の本国法による(法の適用に関する通則法第36条)のが原則です。また、戦前に日本の植民地であった国々の一部(韓国と台湾)に戸籍制度が存在するのを除けば、国家が国民の相続関係を把握していないという状態のほうが世界的にはむしろ当たり前と言えるでしょう。

 さらに、中国については、経済の現状はどうあれ、社会制度においては共産主義の国家です。相続法をはじめとした私有財産保護に関する法制度が十分に整備されているとは、とても思えません。



 多少なりとも鼻の利く人々は、本稿で述べたような問題点を商機ととらえて、中国人富裕層向けにいろいろなスキームを提供しているようです。ここでは、その内容を紹介することも、いちいち批評することもしないでおきましょう。
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posted by 司法書士 前田 at 15:03| Comment(0) | 相続・遺言

2015年07月02日

遺言の手間と費用について

 思い立った時に、手軽に作成することができる自筆証書遺言(民法第968条)が人気のようです。

 たしかに、自筆証書で遺言を作成すれば、公証役場に出向く必要もないし、そのための費用を支払う必要もありません。しかし、それだけの理由で、自筆証書の方式が手軽だと考えるのならば、そこには誤解があるように思えます。

 そこで、今回は、自筆証書遺言の作成から執行にいたるまでの、手間と費用について、公正証書遺言(民法第969条)を比較の対象としながら、検討してみることにしましょう。



1. 自筆証書遺言と公正証書遺言の違い
(1)形式上の違い
 自筆証書遺言とは、遺言者本人が、全文・日付を自書し、署名捺印した遺言です(民法第968条)。作成した遺言書には封印するのが一般的ですが、封印は法律上の要件ではありません(民法第1004条3項参照)。

 これに対し、公正証書遺言とは、公証人が、証人2人以上の立会いのもとに、遺言者から口授された遺言内容を筆記し、これを遺言者及び証人に読み聞かせ、署名捺印させるとともに、自ら署名捺印した方式の遺言です(民法第969条)。
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(2)実体法上の効力に違いがあるか?
 自筆証書の方式によるか、公正証書の方式によるかという形式上の違いから、遺言の実体法上の効力に差異が生ずることはありません。つまり、公正証書の方式で作成したからといって、そのこと自体によって、遺言に特別な効力が与えられるわけではないということです。

 例えば、遺言作成時点で遺言者に意思能力が欠けていたり、遺言内容が公序(民法第90条)や一定の法規定(民法第975条等)等に反していたりすれば、公正証書であろうが、自筆証書であろうが、遺言は無効です。逆に、遺言が有効である限り、その形式に関わらず、遺言に定めた財産処分(遺贈等)や身分行為(認知等)の内容を実現することが可能です。



2. 作成段階のコスト
(1)自筆証書遺言の場合
 自筆証書遺言を作成するのは、遺言者自身です。遺言者自身が文章を考えて、それを文書化するだけであれば、遺言書作成のための費用は、紙代くらいしか掛かりません。

 もちろん、弁護士や司法書士等の法律専門家に依頼して、遺言書を起案させることもできるでしょう。その場合には、契約による報酬を支払う必要があります。
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(2)公正証書遺言の場合
 公正証書遺言は、遺言者の嘱託(=依頼)に基づいて、公証人が作成します。

 もちろん、遺言者自身が、公証人に直接依頼して、遺言書を作成してもらうことも可能です。この場合には、遺言者が、予約を入れたうえで、必要書類(印鑑証明、戸籍、住民票、財産内容を証する書類等)を公証役場に持参して、遺言に盛り込んで欲しい内容を公証人に伝えます。

 しかし、専門家である公証人にとっても、遺言者の相続関係や財産状況を把握し、遺言者の意思を正確に文章にまとめることは、困難を伴うことがあります。よって、複雑な事情がある場合等には、遺言者が、公証人と何度も打合せを行う必要が生じるかも知れません。もし、そのような手間を省きたいのであれば、法律専門家に依頼して、遺言の起案や公証スケジュールの打合せ等を、遺言者に代わって行わせることも出来るでしょう。

 公正証書遺言を作成するためには、公証人に対する手数料を支払う必要があります。公証人手数料は、政令(=公証人手数料令)によって規定されており、全国一律です。例えば、8000万円相当の財産を一人に対して遺贈する旨の遺言書を作成した場合、公証人手数料は5万4千円です。

 これに加えて、法律専門家に起案等を依頼した場合には、契約による報酬を支払う必要があります。


(3)その他の費用
 自筆証書遺言にせよ、公正証書遺言にせよ、遺言の効力が発生する時(民法第985条)には、遺言者自身はこの世にいません。したがって、遺言者以外の誰かが遺言の内容を実行に移さなければなりませんが、このような役割を持つ者(=遺言執行者)を、予め遺言によって指定しておくことも可能です。

 法律専門家等を遺言執行者に指定する場合には、そのことに対する報酬(「遺言執行者就任予諾報酬」とでも呼ぶべきもの)を要することがあるかも知れません。というのも、遺言者から一方的に指定されただけでは、被指定者が執行者に就任しなければならない義務は生じないので、予め契約によって就任することを担保しておく必要があるのです。

 また、第三者(遺言執行者等)に遺言書を保管させる場合には、遺言書の保管報酬を要することがあるかも知れません。

 遺言執行者就任予諾報酬や遺言書保管報酬が必要かどうか、必要だとしてその額がいくらになるのかは契約によります。



3. 執行段階のコスト
(1)検認の必要性
 自筆証書遺言の保管者は、相続の開始を知った後、遅滞なく、これを家庭裁判所に提出して、その検認を請求しなければなりません(民法第1004条1項)。検認は、「審判」という裁判形式で行われる証拠保全手続きの一種です。遺言の内容を審査するものではありません。

 家庭裁判所に検認を申し立てる際には、所定の手数料と郵券を予納する必要があります。

 さらに、法律専門家に申立ての手続きを依頼する場合には、代理(弁護士)や代書(司法書士)の報酬を要します。報酬額は、契約によります。

 また、検認の審判を申し立てる際には、法定相続人全員を確定する必要があります。これは、遺産を承継しない相続人に対しても、検認に立会う権利を保障するためです(民法第1004条3項)。相続関係が複雑な場合等には、相続人確定に要する費用もばかにならないことがあります。

 これに対して、公正証書遺言に、検認手続は必要ありません。


(2)遺言執行者選任審判等
 自筆証書遺言の場合には、遺言執行者指定に関する記載がないことが往々にしてあります。

 遺言執行者の指定は遺言の要件ではないので、その記載がないとしても、遺言は有効に成立します。このことは、公正証書遺言にも当てはまるのですが、公正証書遺言において、遺言執行者を指定しない(又は指定し忘れる)ということは滅多にありません。

 理屈上は、遺言執行者がいない場合でも、一部の行為(民法第893条等)を除いて、法定相続人全員が共同して遺言を執行することが可能です。もちろん、相続人に不利な内容の遺言が行われた場合に、相続人がおとなしく遺言の執行に協力するとは限りませんが、これは事実上生じる問題です。

 遺言執行者がいない場合には、利害関係人の申立てにより、家庭裁判所の審判で、遺言執行者を選任することが出来ます(民法第1010条)。

 遺言執行者選任審判を申し立てる際には、審判手数料及び必要な数額の郵券を、家庭裁判所に予納する必要があります。

 さらに、この手続きを、法律専門家に依頼する場合には、契約による報酬を支払う必要があります。


(3)遺言執行報酬
 遺言執行者が遺言事務を執行した場合、その報酬を支払わなければなりません。このことは、遺言が公正証書によるものであれ、自筆証書によるものであれ、違いがありません。ただし、受遺者自身が遺言執行者となる場合等には、報酬を要しないことが多いでしょう。

 報酬額は、予め遺言中に執行者を指定しておくような場合には、遺言内容の一部として定めておいたり(民法第1018条1項但)、受遺(予定)者との契約で定めておいたりすることが出来ます。また、そのような定めがない場合でも、遺言執行者が、家庭裁判所に対して、報酬付与の審判を申し立てて、相続財産の中からこれを受け取ることが出来ます(民法第1018条1項、同法第1021条)。

 審判によって遺言執行者の報酬が定められる場合には、家庭裁判所が、相続財産の多寡やその他の事情を総合的に考量して、具体的な額を決定します。これに対して、報酬が、遺言内容の一部として定められたり、受遺(予定)者との契約で定められたりする場合には、その基準はありません。


(3)金融資産等に関する遺言執行
 遺言の実体法上の効力は、公正証書によるものであれ、自筆証書によるものであれ、差がないと前記しました。しかし、この理屈は、銀行等の金融機関に対して、すんなり通用するとは限りません。
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 例えば、受遺者が、銀行に対して、検認済みの自筆証書遺言にもとづいて、遺贈者名義の預金を解約するように請求した場合、銀行はどのような対応をするでしょうか?

 実は、銀行は、自筆証書遺言によっては、預金解約手続をすんなりとは行ってくれません。おそらく大抵の場合に、銀行の窓口担当者は、受遺者に対し、あらためて相続人全員で解約手続きに来るか、相続人全員の署名・捺印のある承諾書に印鑑証明書を付して解約手続きをするようにと告げるでしょう。

 もちろん、自筆証書遺言だからというだけの理由で、銀行が正当な受遺者からの解約の要求を拒絶する法的な根拠はありません。しかし、預金の名義人たる遺言者本人が死亡しており、その意思確認が取れない以上、銀行は、「正当な受遺者」であるかどうか知れない者からの請求に、易々とは応じないのです。このような銀行の対応は、銀行の順守すべき注意義務に照らして当然のことと言えます。

 ところで、ここで受遺者が、自筆証書遺言及び検認調書を提示していますが、これらの書類を確認することをもって、銀行は、十分に注意義務を果たしたことにはならないでしょうか?これらの書類から、銀行が、預金に関する権利関係を確認できるのであれば、受遺者からの預金解約請求を拒絶することは不当だということになりそうです。

 しかし、これら書類から銀行が確認できるのは、わずかに預金の名義人が死亡したという事実のみです。検認審判が行われたということは、家庭裁判所が、少なくとも遺言者死亡の事実を除籍謄本等によって確認したということを意味するからです。

 他方、自筆証書遺言の記載から確認できる事実は、何もありません。そもそも遺言書の検認とは、遺言書の内容の真偽や、成立の真否について、家庭裁判所が「お墨付き」を与えるような類の手続ではないのです。つまり、自筆証書遺言を見ても、それが誰によって作成されたものなのか、その内容が遺言者の意思に基づくものなのか等を、確認することにはならないのです。

 受遺者が、窓口で断られても諦めずに、支店や本部の責任者に対して食い下がっていけば、預金の解約に応じてもらえることもあるかも知れません。しかし、運悪く解約に応じてもらえなかった場合には、銀行相手に、預金の引き渡しを求める訴訟を起こすことになるでしょう。

 こうなれば、裁判所に対して所定の訴訟手数料や郵券を予納するのはもちろんですが、訴訟に関する手続きを弁護士に依頼する場合には、契約による報酬を支払う必要もあります。
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 他方、受遺者が、公正証書遺言にもとづいて、遺言者名義の預金解約を請求した場合、銀行は、通常、すんなりと解約手続きに応じます。これは、遺言書作成の際に、公証人が遺言者の本人確認や意思確認を行っているため、遺言の成立及びその内容の真否について信憑性が高いと考えられているからです。

 実体法上の効力が同じといっても、実務上は、自筆証書遺言と公正証書遺言の間には大きな差があるのです。


(4)相続・遺贈による不動産の所有権移転登記手続き
 遺言書の記載から対象不動産及びその承継者が確定できるのであれば、公正証書遺言であろうと、自筆証書遺言であろうと、登記手続きに差はありません。

 登記手続きのためには、法定の登録免許税を納める必要があります。さらに、登記手続きを司法書士に依頼する場合には、契約による報酬を支払う必要があります。



4. 遺言信託商品とは
 信託銀行の提供する「遺言信託」とは、遺言書作成、遺言書保管及び遺言執行等の一連の事務手続きを組み込んだサービスのことです。「信託」と名前がついていますが、遺言信託は、法律上の信託ではありません。

 遺言信託を利用した場合、遺言書は、公正証書によって作成されます。

 遺言信託は、自分の死後の財産管理を「丸投げ」したいという人にとっては、便利なサービスでしょう。ただし、便利な反面、サービス利用のための費用は、非常に高額ですので、注意する必要があります。



5. 遺言の作成方式選択について
 遺言者が亡くなってから、司法書士である私のもとに自筆証書遺言が持ち込まれて、それについて各種手続き(検認審判や執行者選任審判の申立て、不動産の相続・遺贈登記、金融資産の解約手続き等)を依頼されることがあります。
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 自筆証書遺言であっても、公正証書遺言であっても、実体法上の効力は同じなので、遺言が有効であるという前提のもと、その記載がきちんとしたものである限り、遺言内容を実現することは、可能と言えば可能です。しかし、自筆証書遺言の場合には、遺言内容を実現するまでの過程に手間を要することが多々あることは上に述べたとおりです。手間がかかるということは、当然、費用も余分にかかるということです。それでも、遺言者が既に亡くなってしまっているのであれば、手間をかけてでも遺言内容を実現することは必要なことです。

 これに対して、これから遺言書を作成しようとする(遺言者が生きている)のであれば、自筆証書か公正証書かという方式選択の問題は、遺言執行までの手間や費用の問題と併せて検討すべきものです。作成の手間と費用が安いからという単純な理由で自筆証書を選択すれば、結局は、手間も費用も余分にかかってしまうということだってあるからです。
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posted by 司法書士 前田 at 18:35| Comment(0) | 相続・遺言

2015年04月18日

相続の承認・放棄及び熟慮期間について

 民法第915条1項は「相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。」と定めています。この3カ月の期間のことを「熟慮期間」と呼びます。

 今回は、いろいろと誤解の多い相続の承認・放棄について、特に熟慮期間に注目して整理してみたいと思います。



1. 相続の承認及び放棄とは
(1)相続の単純承認と限定承認とは
 相続とは、相続財産を包括的に承継することです。言い換えれば、相続とは、プラスの財産(例:現預金や不動産)もマイナスの財産(例:債務や遺贈義務)も含めて、全ての相続財産(=被相続人の権利義務、被相続人の一身に専属する権利義務を除く)を承継するということです(民法第896条)。

 単純承認は、この相続の効力をそのまま認めるという原則的な相続形態です。よって、放棄も限定承認もしなければ、相続人は原則どおり包括的に被相続人の財産を相続します(民法第920条)。単純承認すると、被相続人が債務超過(マイナスの財産>プラスの財産)であった場合、相続人の持ち出しになってしまいます。

 これに対して、限定承認とは、相続はするけれども、マイナスの財産を弁済する責任を相続によって得た財産の範囲に限定する、という相続形態です(民法第922条)。つまり、限定承認をした場合、相続人は、仮に相続財産が債務超過であったとしても、超過分の債務を、身銭を切ってまで弁済する必要はないのです。

 相続が開始したけれども、相続財産が最終的にプラスになるのかマイナスになるのか分からないような場合に、限定承認によって、一旦相続財産限りで清算を行い、プラスになればその分だけを受け取るという選択が可能になります。

 誤解の多いところですが、限定承認も包括承継であることに変わりはありません。ただ、弁済の責任範囲が限定されるだけです。会社等の有限責任制度や、破産免責、ノンリコース・ローン等、債務に対してそれを弁済する責任の範囲を限定する制度や契約手法は珍しいものではありません。


(2)相続の放棄とは
 相続の放棄とは、相続人自らの意思で相続しないことを選択することです。相続の放棄をした者は、その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなされます(民法第939条)。

 相続放棄をすると、相続人ではない(ものとみなされる)のですから、プラスの財産もマイナスの財産も一切承継しません。放棄した者に関して、代襲相続が問題となることもありません。

 このように理解すると、並べて解説されることの多い放棄と限定承認は質的に異なる制度であることが分かります。放棄とは、要するに、相続人としての地位を喪失する手続きです。これに対して、限定承認とは、相続財産の清算手続きなのです。


(3)相続の承認及び放棄の手続きとは
 民法第915条1項に、「相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。」と規定されています。この規定を読むと、相続の承認・放棄をする際には、何らかの意思表示が必要になるようにも思われます。

 しかし、家庭裁判所への審判申立てという形での意思表示が必要になるのは、限定承認と放棄の場合だけです。原則形態である相続の単純承認が成立するためには、民法第921条各号に定める事由が生じさえすればよいので(「法定単純承認」といいます。)、特別な意思表示は不要です。単純承認の効果が生じるための事由は、次の通りです。

 ・相続人が相続財産の全部又は一部を処分したこと。
 ・熟慮期間が経過したこと。
 ・相続人が、相続財産を隠匿、消費又は秘匿したこと。

 これに対して、限定承認するためには、相続開始地を管轄する家庭裁判所に対して、限定承認申述を行う必要があります(民法第924条、家事事件手続法第201条)。この申述は、相続人が複数いるときは、共同相続人の全員が共同して行わなければなりません(民法第923条)。

 限定承認は、一見すると相続人にとって都合のよい制度のようですが、実際の利用はあまり多くはありません。例えば、最高裁の司法統計によると、平成25年度の限定承認申述の新受件数は全国で797件(審判事件総数の0.1%)しかありません。これに対して、同年の相続放棄申述の新受件数は173,166件にもなりますから、限定承認の利用の少なさは際立っています。

 このように、限定承認の利用が少ない理由は、手続きの複雑さ、税務の問題(みなし譲渡所得等)、清算事務を行う相続人(=相続財産管理人)の事務負担や不当弁済の責任負担(民法第934条)等にあると考えられます。

 最後に、相続放棄するためにも、相続開始地を管轄する家庭裁判所に対して、相続放棄申述を行います。しかし、限定承認の場合と異なって、複数の相続人がいても相続人の一人から放棄申述をすることが出来ます。これは、相続放棄の効果が、単に相続人とならなかったものとみなされるだけで、相続財産の清算を行うわけではないからです。
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2. 熟慮期間の起算点に関する問題
(1)「自己のために相続の開始があったことを知った時」(民法第915条1項)の解釈
 次のような事例を考えてみましょう。

(事例)
 Aは、妻Xと子Yを残して、平成24年1月某日突然消息不明になりました。それから3年後の平成27年1月某日(現在)、Aの債権者だというBから、XとYに対して、Aが死亡しているのでAの借金の1000万円を支払うようにとの通知が届きました。Aは平成26年1月某日に借金の取り立てを苦にして自殺してしまったというのです。
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 この事例のXとYは、Aの相続を放棄して、Bからの請求を拒絶することができるでしょうか?

 判例の従来からの立場は、「『自己のために相続の開始があったことを知った時』とは、相続人が相続開始の原因たる事実の発生を知り、かつそのために自己が相続人となったことを覚知した時を指す。」というものです(大決大15年8月3日)。この立場に従えば、XとYが、「自己のために相続の開始があったことを知った時」は、BからAの死亡について知らされた平成27年1月某日ですから、その日から3カ月以内であれば、相続放棄は可能です。

 では、上の事例をちょっと捻ってみましょう。実は、XとYは、Aが平成26年1月に自殺したことを、Aの仕事仲間であるCからAの自殺間もなく知らされていたのです。その場合に、XとYは、Aの相続を放棄することができるでしょうか?

 XとYが、Aの死を平成26年1月の時点で認識していたとしても、死亡時にAに負債がないはずだと信じていたのであれば、相続放棄を申し立てることなど思いもよらないことでしょう。相続放棄を申し立てることは理屈では出来たとしても、そうする期待可能性が著しく低い場合にまで、XとYに法定単純承認が成立し、Aの残した負債を返さなければならないとしたら、XとYの保護に欠けることになってしまいます。

 このような問題に対して判例は、相続人が相続放棄又は限定承認しなかったのが被相続人に相続財産が全くないと信じかつそう信じるにつき相当な理由があるときには、「熟慮期間は、相続人が相続財産の全部または一部の存在を認識した時または通常これを認識しうべき時から起算すべき」(最判昭59年4月27日)として例外的に救済を与えたのです。

 したがって、XとYが、Aに全く相続財産がないと信じ、かつそう信じることに相当の理由があるという場合には、熟慮期間の起算点は、XとYがAの負債と死亡とを認識した平成27年1月某日となり、そこから3か月の間は相続放棄を申し立てることが可能です。

 但し、このような解釈が可能なのは、あくまでも相続財産が全くないと信じるについて相当な事情がある例外的な場合のみです。例えば、本事例のXとYが、Aの借金癖を認識していた場合や、Aの財産調査をすることが容易であった場合等には、原則通り、Aの死亡を認識した時である平成26年1月某日から熟慮期間を起算することになります。


(2)相続開始事実を知ってから3カ月経過後の相続放棄申述は可能か?
 家庭裁判所に対する申立てや相続手続きに関わる仕事をしていると、「○○が死亡してから3カ月以上経ってしまったのだけれども、相続放棄することは可能でしょうか?」というような質問を頻繁に受けます。

 まず、この問題について考えるためには、相談者が「相続放棄」と言っているのは、「民法上の相続放棄」なのか、それとも単に相続財産を承継しない効果のみを発生させる「事実上の相続放棄」なのかを区別しなければなりません。後者については本稿では論じませんので、以下では、前者(民法上の相続放棄)についてのみ話をします。

 前記2(1)の事例のように、普段交流のない被相続人の死亡から3カ月以上経過した後に、債権者が、相続人に対して、相続債務の弁済を請求することがよくあります。債務者が死亡すると、債権者がその事実を覚知するまでに一定の時間が経過し、さらに債権者が債務者の相続関係を調査するために一定の時間が経過します。このような理由で、3カ月という短い期間はあっという間に過ぎてしまうものです。

 実務上、このような場合に、債権者から相続人に対して催告があった時を「自己のために相続の開始があったことを知った時」(民法第915条1項)と記載して、家庭裁判所に対する相続放棄申述を行います。このようにするのは、前記の判例(最判昭59年4月27日)によって、相続開始を知ってから3カ月以上経過している場合にも、相続人を救済すべき例外的な事情があるかも知れないからです。

 家庭裁判所は、熟慮期間の起算点に関してこのような記載のされた相続放棄申述(限定承認申述も同じ)を、かなり柔軟に受理(審判)してくれます。

 よって、前記「○○が死亡してから3カ月以上経ってしまったのだけれども、相続放棄することは可能でしょうか?」という質問に対して、私ならば、「事情によって、申述書の記載の仕方によっては、可能です。」と答えるでしょう。

 しかし、相続放棄の受理審判の可否というのは単なる手続上の問題に過ぎません。本質的問題は、ここにはありません。



3. 相続の放棄・限定承認の無効主張
(1)相続放棄受理通知書と相続放棄受理証明書
 相続人が、相続債権者に対して支払を拒絶するためには、相続放棄することが最も簡単な方法です。家庭裁判所への審判申立という手続きだけで、個別の債権者や債務内容について対応する必要が無くなるのですから、相続人にとってこれ程楽なことがあるでしょうか。

 相続人が、相続放棄申述の事実を債権者に対して主張するためには、通常は「相続放棄受理通知書」又は「相続放棄受理証明書」を提示します。どちらの書類にも、被相続人及び申述人の表示、相続放棄申述事実等が記載されています。「通知書」は放棄申述をすれば家庭裁判所から申述人に対して交付(送付)されるものであるのに対して、「証明書」は申述人が家庭裁判所に対して申請してはじめて交付されるものであるという違いがあります。

 相続債権者は、相続人から相続放棄受理通知書又は相続放棄受理証明書を示されると、たいていは直ぐにその相続人に対する請求を諦めます。債権者としては、他に相続人がいればそちらに請求するし、全ての相続人が放棄してしまっていたら債権の回収を断念することになってしまいます。


(2)相続放棄申述受理審判の効力とは
 一見すると、相続人は、簡単な放棄申述さえすれば、相続債務の弁済義務から解放されるかのようです。さらに、熟慮期間の起算点を家庭裁判所が柔軟に解してくれるというのであれば、相続人は、相続開始を知っていながら、相続債権者からの請求を受けるまで、放棄(や限定承認)の手続きを取らずに怠けていても安心であるかのようにすら思われます。一般的には、相続放棄申述の効力は、そのように強力なものと認識されているようですが、この認識は正しいのでしょうか?

 実は、相続放棄申述受理審判の効力とは、相続人から相続放棄申述があったという事実を宣言するだけのものでしかありません。家庭裁判所に対してなされた相続放棄が有効なものであれば、放棄者は初めから相続人とならなかったものとみなされる(民法第939条)という実体法上の効力が生じますが、これは審判という手続自体の効力ではありません。つまり、家庭裁判所に対して相続放棄申述がなされたからと言って、その相続放棄が有効であるということの証明にはならないのです。さきの「相続放棄受理証明書」も、相続放棄申述があったことを証明するだけで、相続放棄が有効であるとの証明ではありません。そもそも、家庭裁判所は、相続放棄という実体法上の行為が有効であるかどうかということについてまで審査しませんし、審査する能力もないのです。相続放棄の有効・無効は、最終的には訴訟で決するべきものなのです。
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 したがって、相続債権者が、相続放棄した相続人に対して、相続放棄の無効を主張して、相続債権の請求訴訟を起こすことは可能です。熟慮期間経過に関する問題はもちろんのこと、相続財産の処分や消費等の法定単純承認事由についても、債権者から追及を受ける可能性はあるのです。

 相続放棄受理証明書があるからと言って、それは、相続債務に対して責任を負わないことについての家庭裁判所の「御墨付」ではないのです。誤解のなきように。
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posted by 司法書士 前田 at 17:02| Comment(0) | 相続・遺言

2015年04月16日

遺言書の「検認」とは?

 公正証書で作成した遺言書を除いて、遺言書の保管者又は発見者は、相続の開始を知った後、遅滞なく遺言書を家庭裁判所に提出して「検認」を受けなければなりません(民法第1004条1項)。

 今回は、誤解の多い検認という制度について、その意味と具体的手続きを整理してみましょう。



1. 検認の意味
(1)目的
 検認とは、遺言書の状態を確認して、後日の偽変造、毀損や隠匿を防ぐために行われる一種の証拠保全手続きのことです。

 検認手続きにおいては、遺言書の用紙が何枚にわたっており、どのような筆記具が用いられており、何が記載されているのかといったことや、日付、署名及び押印並びに加除訂正の有無や状態について調書に記録されます。遺言書のコピーが調書に編綴されるのが通常です。
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 このように、検認は、あくまでも検認時点での遺言書のあるがままを記録することが目的であって、遺言書の内容や成立についての有効・無効を判断するものではありません。よって、日付や署名等の欠けた形式上無効な自筆証書遺言(民法第968条1項)についても、また公序に反するような内容上無効な遺言(民法第90条)についても、検認を受けることができるし、検認を受けなければなりません。

 また、検認には、遺言書の存在を相続人に対して知らせるという副次的な役割もあります。


(2)公正証書遺言との比較
 検認を受けなければならないのは、公正証書以外の方法で作成された遺言書です(民法第1004条2項)。

 公正証書遺言に検認が不要とされる理由は、その作成と保管に公証人が関与しており、偽変造、毀損や隠匿の危険が類型的に低いといえるからです。


(2)効果
 遺言書の検認申立ては、遺言書の保管者又は発見者に対して課された法律上の義務です。

 しかし、検認によっては、遺言書の実体法上の効力には何らの影響もありません。すなわち、検認を受けたからと言って、無効な遺言が、有効に転じるわけではありません。検認は、遺言書に対する家庭裁判所の「お墨付」ではないのです。

 さらに、検認なしに遺言を執行してしまったとしても、過料の対象となるのを別にすれば(民法第1005条)、その執行行為と効果が無効になってしまうわけではありません。

 実務上、たとえば、法務局に対して、検認のない自筆証書遺言を原因証明情報として申請された不動産所有権移転登記が受理されないということはあるでしょう。しかし、これは検認のない自筆証書遺言が無効であるということを意味するものではありません。単に、登記手続上は、検認の証明が必要になるというだけのことです。

 実体法上の遺言の効力について、公正証書であろうが、自筆証書であろうが、差はありません。



2. 検認の手続
(1)家庭裁判所の審判申立
 遺言書の保管者又は発見者は、家庭裁判所に対して、遅滞なく遺言書検認審判の申立てを行わなければなりません(民法第1004条1項)。申し立てる先は、相続開始地(最後の住所地)を管轄する家庭裁判所です(家事事件手続法第209条1項)。

 遺言書検認審判の申立書には、相続関係を明らかにするために、相続人目録を作成して、遺言者(=被相続人)の除籍謄本及び申立人・法定相続人全員の戸籍謄本を添付する必要があります。これは、申立人以外の相続人にも、検認手続きに出席する機会を与えるためです。


(2)相続人による立会及び調書の閲覧
 検認審判の期日が決まると、家庭裁判所は、それを相続人に通知します。通知を受けた相続人は、検認審判に出席することが出来ますが、出席するかどうかは各相続人の判断に任されています。

 なお、民法第1004条3項で、封印のされている遺言書は、検認の際に、相続人の立会いのもと、開封しなければならないと定められていますが、立会いの機会が保障されていれば、立会うかどうかは各相続人の自由です。

 ちなみに、自筆証書遺言は封印されていることがほとんどですが、封印自体は自筆証書遺言の要件ではありません(民法第968条)。よって、封印された自筆証書遺言を、検認前に誤って開封してしまったとしても、開封の事実によって、遺言が無効になるわけではありません。もちろん、誤って開封してしまった遺言書についても、家庭裁判所に提出して検認手続を経なければなりません。

 検認日時が通知されても、全ての相続人が出席・立会できるわけではありません。出席しなくても、後から検認の内容を確認できるように、相続人は、家庭裁判所に対して、検認調書謄本の交付を請求することが出来ます。遠方から、郵便で請求することも可能です。


(3)過料
 家庭裁判所への検認申立を怠った場合、検認を経ないで遺言を執行してしまった場合、並びに家庭裁判所以外で封印された遺言書を開封してしまった場合には、それぞれの行為の義務者又は行為者は、5万円以下の過料に処せられます(民法第1005条)。

 「過料」というのは、法律等に定められた義務や禁止などの実効性を持たせるために課される金銭罰のことです。「過料」は刑罰ではありません。さらに、上記のような規定に違反したり、それによって過料に処せられたからと言って、遺言の効力に影響はありません。
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 今回のポイントは、検認とは遺言の状態に関する単なる証拠保全手続きであって、遺言の内容や成立に関する審査ではないということです。よって、当たり前のことですが、検認の有無にかかわらず、それらについて争いがあれば、別途、訴訟等の方法によって決することになります。
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posted by 司法書士 前田 at 10:38| Comment(0) | 相続・遺言

2015年03月20日

遺言執行者について

 近年、遺言書を作成することによって、自らの死後の財産の処分や帰属等を定めておきたいと考える人が多くなっています。法定相続と異なった処分をしたい、死後の争いを予防したい等々、遺言を行う人の動機や目的は様々です。

 しかし、遺言書を作成しただけで、遺言者の目的が達せられるわけではありません。遺言の効力が生じる時(=遺言者の死亡の時)には、遺言者はこの世にいないのですから、当然、誰かがその内容を実行に移す手続き(以下、「遺言執行」という。)を行わなければなりません。

 そこで今回は、遺言執行を行う者(以下、「遺言執行者」という。)について、考えてみましょう。遺言執行者の役割や性質について理解することは、効果的な遺言を行い、遺言を書きっぱなしにしないためにも有用だと思うからです。
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1. 遺言執行者の指定・就任・選任
 遺言執行者を誰にするのかということは、遺言者が指定しておくことが出来ます。また、第三者に対して、遺言執行者の指定を委託することもできます(民法第1006条1項)。

 遺言による遺言執行者の指定は、遺言者が一方的に行う行為ですから、指定を受けたことのみをもって被指定者が遺言執行者になることが決まってしまうわけではありません。被指定者は、遺言執行者への就任を承諾するのか、拒絶するのかを選択することが出来ます。そこで遺言執行者への就任を承諾すれば、被指定者が遺言執行者となります(民法第1007条)。

 遺言による被指定者が就任を拒絶したり、被指定者が死亡してしまったり、あるいはもともと執行者の指定がない場合等には、相続人等の利害関係人の申立により、家庭裁判所が遺言執行者を選任します(民法第1010条)。



2. 遺言執行者の必要性
 民法には遺言執行者についての詳細な規定が置かれていますが、遺言執行のために必ずしも遺言執行者が必要というわけではありません。遺言執行者がいなくても、相続人自身が遺言執行することもできます。

 相続人の間に遺言内容を実現させることについて争いがなく、しかも全ての相続人が遺言執行の手続きに対して協力的であるならば、遺言執行者を特に指定・選任する必要性は低いのかも知れません。

 しかし、共同相続人同士が対立することもあれば、共同相続人の一人が行方不明になることもあり得ます。このような事態になれば、遺言執行を事実上阻害してしまいかねません。よって、できることならば遺言によって遺言執行者を定めておくに越したことはありません。

 また、遺言により認知(民法第781条2項、戸籍法第64条)、相続人の廃除又はその取消し(民法第893条、同法第894条)を行う場合には、法律の規定により必ず遺言執行者を置くことが必要となります。これらの場合には、定型的に相続人が遺言執行に協力することを期待できないという理由によります。
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3. 遺言執行者と相続人の対立の場面
 遺言執行者は、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権限があります(民法第1012条1項)。遺言執行者が行う遺言執行の中身は、以下のような行為です。遺言執行のために、裁判の原告や被告になることもあります。
・相続財産目録の調製
・遺産の分配、遺贈や寄付行為の執行
・認知、廃除、廃除の取消

 民法上、遺言執行者と相続人との関係には、委任の規定が広く準用されており(民法第1012条2項、同法第1020条)、「遺言執行者は、相続人の代理人とみな」される(民法第1015条)と定められています。

 しかし、遺言執行者の行う行為は、相続人に有利なものばかりではなく、むしろ両者が対立する場面も少なくありません。たとえば、死後認知によりあらたな相続人が加われば、他の相続人は反発するかも知れません。遺言による廃除がなされれば、廃除によって相続権を失うことになる相続人は抵抗するかも知れません。また、遺言によって相続人以外の第三者に遺贈がなされるとしたら、相続人は遺言執行者を相手として遺言の無効を主張するかも知れません。

 さらに、民法第1013条は、「遺言執行者がある場合には、相続人は、相続財産の処分その他遺言の執行を妨げるべき行為をすることはできない」とも定めています。もし遺言執行者が、相続人の「代理」であるとするならば、相続人から相続財産の処分権限を一時的にでも奪ってしまうようなこの規定は奇妙に思えます。

 このように、遺言執行者の行為は、必ずしも相続人の利益に合致するとは限りません。故に、遺言執行者が相続人の代理とみなされるという民法第1015条の規定は、遺言執行行為の効果が相続人に帰属するという意味にすぎないと解すべきでしょう。
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posted by 司法書士 前田 at 16:42| Comment(0) | 相続・遺言