2017年12月23日

仮差押と債権の消滅時効中断について(最判平成10年11月24日と平成29年民法改正)

仮差押には、判例によって事実上他の時効中断事由(現行民法第147条)とは異なる特殊な効力が認められています。今回は、この効力について紹介するとともに、本年(平成29年)の民法大改正によって、それがどのように改められたのかを確認してみることにしましょう。



1 仮差押による時効の中断
(1) 消滅時効の中断とは
権利者であっても一定の長期間にわたって権利行使を怠っていれば、権利行使できなくなってしまうという規律を消滅時効の制度といいます。消滅時効制度は、権利行使を怠ってきたという事実状態から生じるいろいろな不都合を解消するために存在します。つまり、消滅時効は、権利者と義務者の利害バランスを調整したり、権利の存在又は不存在の証明困難を救済したりするために存在しているのです。

消滅時効にかかる権利の代表的なものは債権ですが、地上権や地役権等の財産権も時効によって消滅することがあります。債権の場合、債権者が債務者に対し10年(現行民法第167条)権利行使しなければ、その債権が消えてしまうわけです。

消滅時効制度があるため、債権者も、安穏としているわけにはいきません。債権者は、自分の権利が時効消滅しないようにするための防御手段を取る必要があります。この消滅時効の完成を妨げる手続を「中断」といいます。ここに云う中断は、時効の進行を単に停止させるだけでなく、リセットするという2つの法律効果を生じさせる概念です。債権の消滅時効に即して言えば、債権者が9年間放置していた債権の時効の進行を9年目に中断すれば、その債権の時効は、中断事由が生じた時点で進行を停止し、中断の事由が終了した時点から(現行民法第157条)再びリセットされた10年の時効期間を算定し直すことになります。

現行民法において、中断事由として定められているのは、次の3つです(現行民法第147条第1〜3号)。
・請求
・差押さえ、仮差押え又は仮処分
・承認

上記のうち、「請求」とは、債権者の単なる「支払え」という債務者に対する要求行為(「催告」)では足りず、訴訟提起等の裁判上での権利行使のことを指します。これに対して、「承認」は、債務者が債務を負っていると認める行為であれば広くこれに該当します。例えば、一部弁済したり支払猶予を求めたりすることも「承認」に当たり、時効が中断します。

差押えや仮差押えも含めて、これらの中断事由は、権利不行使の状態を破るという共通点があります。


(2) 仮差押による時効の中断の効果(最判平成10年11月24日)
実は、時効中断事由の中で、仮差押えによる時効中断の効果については、法文上明確ではありません。すなわち、「仮差押えをした場合に、一旦停止した被保全債権の消滅時効は、いつ再び進行し始めるのか?」という問題について、従来から争いがありました。この問題について、最判平成10年11月24日は、次のように結論づけました。

「仮差押えによる時効中断の効力は、仮差押えの執行保全の効力が存続する間は継続すると解するのが相当である。 けだし、民法147条が仮差押えを時効中断事由としているのは、それにより債権者が、権利の行使をしたといえるからであるところ、仮差押えの執行保全の効力が存続する間は仮差押債権者による権利の行使が継続するものと解すべきだからであ り、このように解したとしても、債務者は、本案の起訴命令や事情変更による仮差押命令の取消しを求めることができるのであって、債務者にとって酷な結果になるともいえないからである。また、民法147条が、仮差押えと裁判上の請求を別個の時効中断事由と規定し ているところからすれば、仮差押えの被保全債権につき本案の勝訴判決が確定したとしても、仮差押えによる時効中断の効力がこれに吸収されて消滅するものとは解し得ない。」

これを分かりやすく言えば、債務者の不動産に対して仮差押えの登記がなされている限り、被保全債権についての債権者の「権利の行使が継続」しているのであるから、被保全債権は時効消滅することがないということです。被保全債権について行われた仮差押えの消滅時効に関する効力と、本案で同じ債権について勝訴判決が確定したことに伴う消滅時効に関する効果との間にも何の関係もないとの判断です。


(3) 判例の問題点
上記判例の理屈には致命的な問題があります。

仮差押えは、本執行の準備行為に過ぎません。そして、その申し立てのためにも、被保全債権の存在を「疎明」することで足ります。さらに、保全手続内での、債務者の防御機会も制限されています。

これらのことは、同じく中断事由である「請求」と比較して著しくバランスを欠いています。「請求」として本案訴訟を提起する場合には、原告たる債権者は債権の存在を「証明」しなければなりません。もちろん裁判上の請求に対する被告たる債務者の防御の機会は保障されています。さらに、訴状の送達によって停止した債権の消滅時効は、判決の確定によって、再び進行を開始します(現行民法第157条第2項)。

そもそも、保全手続きとは、債務者に気づかれないうちに取り急ぎ執行対象財産を確保しておこうという密行性と不確定性を特徴とする手続なのです。ところが、上記判例は、「仮」に過ぎない仮差押えによって、永遠に時効消滅しない債権を作ってしまったとも解されるのです。

実際、上記判例の後、仮差押えを濫用する事例がしばしば出現するようになりました。つまり、債権者は、本執行の可能性が皆無と言えるような場合にも、債務者の不動産に仮差押してさえいれば安泰だと考えるようになったわけです。このような濫用事例においては、債権者は、債務者に対して本案の訴訟を提起することすらないのが普通です。債権者は、仮差押えの手続だけ申し立てて、仮差押登記をつけっぱなしに放置したまま、本当に「債務者」であるか証明されてもいない相手の側から、いつになるか分からないような遠い将来に任意の支払いを申し出て来るまで、気長に待ってさえいればよいのです。

私は、債権者が権利のうえに眠ることを許してしまうような判例の理論は、時効制度の趣旨にも保全制度の趣旨にも反していると考えます。


2 時効に関する民法の改正
(1) 概念整理:「中断」から「完成猶予」「更新」へ
「中断」には、時効の進行を停止させるという効果と、時効期間をゼロから起算し直すという効果とが不可分に伴うとされています。しかし、従来から、前者の効果のみを持つ「停止」(現行民法第158〜161条)という概念があったし、「催告」(現行民法第153条)の効果も前者に近いものと考えることもできます。つまり、「中断」は、概念的に十分整理されているとは言えないわけです。時効中断事由として、「請求」、「差押え」、「仮差押え」、「承認」等が同列に規定されてしまっていることも、混乱を招く原因でした。

そこで、平成29年改正法においては、「中断」及び「停止」という概念の代わりに、時効の進行を停止させる効果を「完成猶予」として、時効期間をゼロから起算し直すという効果を「更新」として整理し直しました。

この概念整理に伴って、改正法は、従来時効の中断・停止事由として一緒くたに規定されていたものを、完成猶予効と更新効の両方を持つ事由(裁判上の請求、強制執行等。改正民法第147条、148条)、完成猶予効のみを持つ事由(仮差押え、催告、協議合意、後見人等不在、夫婦間の権利、相続財産に関する権利、天災等の場合。改正民法第149〜151条、158〜161条)、及び更新効のみを持つ事由(承認。改正民法第152条)とに分けて規定しました。


(2) 仮差押の完成猶予効
改正民法第149条は、仮差押え等の事由が生じた場合、「その事由が終了した時から6箇月を経過するまでの間は、時効は完成しない。」と規定しています。つまり、改正法のもとでは、仮差押えを行っても、6箇月という短期間のうちに本案の裁判を提起したりしない限り、もともとの時効期間(リセットされない)が経過すれば、消滅時効が完成してしまうわけです。

この改正は、保全手続きの不確定性という性質に適合したものです。また、この改正により、上記1(2)の最高裁の判決は判例としての意味を喪失します。


(3) その他、時効に関する改正点
上記の他にも、時効に関しては、消滅時効期間の統一が行われました(改正民法第166〜169条)。また、現代社会において既に社会的役割を失っている短期の消滅時効(現行民法170〜174条、商法第522条)に関する規定は全て削除されました。
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今回改正された民法は、平成32年4月1日に施行される予定です。同改正には、時効に関連する他にも、興味深い論点がたくさんありますが、それらについては、また別稿で紹介したいと思います。
posted by 司法書士 前田 at 11:12| Comment(0) | 金銭トラブル

2017年10月01日

コースターブレーキの整備(クラッチ滑りの原因は?)後編

2017年9月初めにtern link uno (シングルスピードの小径車)のクラッチ不調を解決するためにコースターブレーキを分解洗浄して、しばらく運用を続けながら様子を見ていました。しかし、漕ぎ出しにクラッチが「ニュルッ」と滑る感触がどうにも気持ち悪くて仕方ありません。
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(室内での自転車いじり。汚れないように気を使う。)

そこで、根本的な解決を図るべく、クラッチ部品(クラッチコーン)を交換してみることにしました。
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(古いクラッチ単体で見れば、それほど問題があるようには見えないが・・。)

コースターブレーキを再度分解して、問題となっているクラッチコーン(上の画像右)を取り出してみました。新品のクラッチコーン(画像左)と比較してみると、確かにハブシェルをクラッチ(結合)する部分が磨耗しているのが分かります。とはいえ、溝もまだ残っており、それほど酷い磨耗でもないように見えます。クラッチコーン内部のスプリングには問題ないようです。

クラッチを交換したついでに、チェーンリング・クランクとチェーンを厚歯用のものに交換してみました。チェーンリングは、52丁から48丁に歯数を減らし、街中での運用により適した仕様としました。
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(厚歯は耐久性向上のため。歯数減少は街中での扱いやすさのため。)

早速、交換したクラッチの調子を確認するために、表六甲線の入り口である六甲ケーブル下駅までの約2km強の登坂テストを行いました。動力の伝達効率が格段に向上したことを実感しました。
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(自転車は絶好調、乗り手はもう限界。)

タグ:自転車整備
posted by 司法書士 前田 at 10:08| Comment(0) | 自転車

2017年09月22日

相続手続きが変わりますよ??(法定相続情報証明制度について)

平成29年5月29日から「法定相続情報証明制度」(以下、「本制度」という。)の運用がスタートしました。実は本制度は、法務省が構想を公にしてから1年にも満たない短期間に、性急にも実現してしまったものです。

今回は、本制度について概観するとともに、その問題点について考えてみましょう。
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(「相続手続きが変わりますよ」とは、誤解を招く表現)



1 制度の趣旨
法務省は、構想段階から一貫して、本制度が「相続登記を促進するため」の制度であると主張してきました(平成28年7月5日法務省民事局報道発表等)。この主張は、日本社会の抱える次のような構造的な問題を背景としています。

日本の人口は2010年をピークとして減少に転じ、さらに先進国中でも早い速度で高齢化が進展しています。これに伴い、不動産(特に住居用不動産)に対する受給関係に変化が生じました。現在、全体として不動産は供給過多の状態にあり、今後も長期にわたってこの状態が続くか又は拡大していくでしょう。

また、地方と都市部の経済格差のため、地方は引き続き過疎の問題を抱えています。つまり、地方において、引き受け手のない不動産がより多く存在するということです。

さらに、90年代初頭のバブル経済崩壊以降、不動産についての価値観にも大きな変化が見られました。単純化して言えば、多くの人が、不動産を、必ずしも安定・安全な資産としてではなくて、大きな負担にもなりうるものとして認識するようになったのです。これは、どういうことを意味するのでしょうか?

相続が生じた時(=誰かが死亡した時)、もし遺産たる不動産が資産価値あるものならば、相続人は、すすんで相続登記手続を行うでしょう。これに対して、その不動産に資産価値も利用価値もないのであれば、相続人は、わざわざ手間と費用を掛けてまで相続登記手続をしたくないと思うでしょう。

このことの一例は、近年騒がれるようになった空き家の増加という現象にも見られます。いわゆる「空き家問題」は、外見上は、古くなった建物が放置されることから生じる周辺環境への影響を取り上げたものです。しかし、この問題は、突き詰めると、権利関係の問題であることが分かります。すなわち、空き家問題の本質とは、当該不動産について相続手続による権利確定が行われていないために、管理責任の所在が曖昧になってしまうことなのです。

不動産について相続登記を長期にわたって懈怠してしまうと、数次相続が発生して相続関係が複雑化したり、相続人が行方不明になったり意思能力を喪失したりして、事実上遺産分割協議のできない状況が生じます。不動産について、事実上「所有者不明」という状態が生ずるわけです。このような事情を背景として、現在の日本には、所有者不明の不動産が遍在するようになりました。

つまり、不動産の相続登記を放置するということが、広大な国土の利用を妨げてしまいかねないのです。これは、日本経済の行末にも関わってくる重大な問題です。

法務省は、本制度によって、このような問題の解決を促進しようというのです。その狙いは正しいのでしょうか?



2 法定相続情報証明制度の内容
(1) 本制度の法的位置づけ
本制度は、戸籍に代わるような「法定相続情報一覧図」(以下、「一覧図」という。)の写しの交付や戸籍情報の管理を伴うものであるにもかかわらず、戸籍法等の改正によって創設されたのではありません。本制度は、法務省令である不動産登記規則(以下、「規則」といいます。)の一部改正によって創設されたのです。つまり、本制度は、相続登記の際に法務局が従来行ってきた確認機能を流用する「オマケ」的な制度という位置づけをされています。ただし、本制度は、オマケついでに、不動産登記申請を行わない場合でも利用することが出来るとされています。


(2) 本制度の内容
ア 一覧図の保管・交付申出
本制度を利用するための手続とは、「一覧図の保管・交付申出」ということです。一覧図の保管・交付申出は、不動産の相続登記申請のついでに行うことも出来るし、登記とは無関係に行うことも出来ます。
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(申出書)

申出人となる資格を有するのは相続人です。さらに、申出人の代理人となることが出来るのは、法定代理人のほか、委任を受けた親族及び資格者代理人(弁護士、司法書士等の8士業)のみです。

申出先は、被相続人の本籍地若しくは最後の住所地、申出人の住所地又は相続財産たる不動産の所在地を管轄する法務局の登記官です(規則247条1項)。

申出に当たっては、申出人は、一覧図のもとになる相続関係図(樹形図)を作成・提出するとともに、次の証明書類を提出しなければなりません(規則247条3項)。不動産の相続登記の際に提出される書類と同じです。

・被相続人の出生時から死亡時までの連続した戸除籍謄本
・被相続人の住民票除票又は戸籍除附票
・相続人の戸籍謄本又は抄本
・申出人の住民票等
・代理資格証明書(代理人による申出の場合)

申出について手数料はかかりません。
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(申出人は相続関係図を作成して提出する。)

イ 一覧図の交付と保管
一覧図の保管・交付申出を受けた法務局は、添付された戸除籍謄本等の内容と申出内容が合致することを確認し、一覧図を「一覧図つづり込み帳」につづり込む方法により保管します。さらに、申出人に対しては、登記官の認証印のある一覧図の写しを交付します。
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(一覧図の見本)

一覧図の保管期間は、作成年の翌年から5年間です。この間、申出人は、一覧図の写しの再交付を求めることが出来ます。

ウ 証明される内容
一覧図によって証明されるのは、証明対象となる被相続人の相続開始時(=死亡時)の法定相続関係のみです。

相続開始後に、相続人についてさらに相続が発生した(数次相続)場合には、別途その死亡した相続人について一覧図の保管・交付を申し出る必要があります。また、相続放棄や欠格・廃除等による法定相続関係の修正については、本制度の埒外です。

つまり、一覧図とは、被相続人に関連する戸籍情報から、その法定相続関係のみを抽出し、それに証明書としての登記官のお墨付きを与えたものと言うことができるでしょう。

エ 用途
一覧図は、不動産登記申請や相続税申告等の官公庁に対する相続関連手続を行う際の添付書類として利用することが出来ます。また、制度の認知度や信頼性が高まれば、銀行や証券会社等に対する金融資産の相続手続においても利用できるようになることが期待されています。

本制度は、要するに、従来官公庁や金融機関等に対し戸除籍謄本等の束を提出していたものを、一覧図という薄い証明書1通で代用しようというものです。


3 問題点
本制度には、すぐに思いつくだけでも以下のような問題があります。

(1) 制度の位置づけの問題
本制度は、戸籍情報という国民の重要な個人情報の管理についての制度でありながら、戸籍法と無関係に、規則の一部改正のみで成立してしまいました。規則には、悪用事案に対する罰則規定すらありません。

(2) 情報管理と利用の問題
戸籍情報は、戸籍法に従った管理が行われています。すなわち、戸籍情報を知りたい場合には、法定の要件を満たせば、戸籍謄本等の交付請求をすることが出来ます。もちろん、請求先も一律に定まっています。戸籍制度は、国民にとって利用しやすい制度と言えます。

これに対し、一覧図は、戸籍情報から抽出した情報に過ぎません。また、一覧図の保管先はバラバラで、保管期限が短く、再交付申出人が限定されています。国民にとって利用しやすい制度とは言えません。

さらに、戸籍情報を、戸籍法で定められた官公署とは別に、法務局で重複して管理する意味はどこにあるのでしょうか?


(3) 証明事項と困難相続登記との関係
一覧図によって証明できるのは、被相続人の死亡時の相続関係のみです。つまり、比較的単純な相続関係だけしか証明できないということです。

しかし、相続手続において一番厄介なのは、相続手続(遺産分割・登記等)が長期間にわたって懈怠された結果、何重にも相続が生じてしまったような数次相続の事案です。1通の一覧図によって数次相続の相続関係を証明することはできません。数次相続を一覧図によって証明したいのであれば、相続の発生回数と同じだけの一覧図の保管・交付申出を行う必要があるでしょう。

しかも、数次相続が実務上問題となるのは、不動産登記においてのみであると言っても過言ではありません。これに対して、金融資産の相続手続きにおいては、数次相続が特に問題になることはありません。数次相続の事案においては不動産登記以外に利用されない一覧図を、法務局は、不動産登記申請記録とは別に、何のために保管するのでしょうか?


(4) 結局、役に立つのか?
法務省は、本制度の趣旨が相続登記の促進にあると言っていますが、促進すべき困難相続登記の事案を解決することと、本制度の内容とはあまりにかけ離れています。また、当たり前のことですが、一覧図という紙ペラが、本制度創設の背景にある構造的な問題に対する解決になるわけでもありません。

困難相続登記の事案を解決するためには、事案に即した多様な対応が求められます。大量の戸除籍謄本の束を収集したり確認したりという負担は、事案の解決という一連の過程の中で、ほんの些細な手間に過ぎません。

私は、結局、本制度は何の役にも立たないばかりか、行政の管理コストを増やすだけのものだと思います。このような制度は直ちに廃止すべきでしょう。
posted by 司法書士 前田 at 15:34| Comment(0) | 相続・遺言

2017年09月12日

70年代クォーツ時計の価値

ある物が「ガラクタ」に過ぎないのか「価値あるもの」なのかは、それを見る人の心の問題だと思います。つまり、価値というのは、物自体の中に最初から存在するのではなくて、その物に向き合った人の心の中に生まれるということです。

今回は、私のクォーツ時計3本を紹介してみたいと思います。予め断っておきますが、私は別に時計マニアではないので、ここに紹介するのはコレクション品ではなくて、毎日順繰りに使っている実用品です。時計について専門的な知識があるわけでもありません。
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(70年代のクォーツ時計。全て稼動する実用品です。)


1 セイコー「38クォーツ」
セイコーが1969年に世界に先駆けてクォーツ腕時計を市販化してから、わずか2年後、腕時計市場の拡大のために世に送り出したのが「38」の型番から始まるムーブメントを持った一連の腕時計「38クォーツ」です。
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(金ケースの38クォーツ。セイコーらしい形。)

私のQRは、38クォーツの中でも一番低価格帯のシリーズです。時期で言えば、1973年か1974年のものでしょう。低価格と言っても、発売当時は大卒の初任給相当の額です。クォーツ時計は、今でこそ「安物」とか「大量生産」とかのイメージで見られがちですが、当時の機械式の高級ライン「グランドセイコー」や「キングセイコー」に並ぶほど高価なものでした。

時計の造りもしっかりしています。秒針をじっと見つめていると、職人さんが丁寧に組み立てていたことが伝わってきます。半世紀近く前の腕時計が、今でも正確な時を刻んでいるのですから、良いものでないわけがありません。
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(ケースはかなりぶ厚い。現在の薄いクォーツとは別物。)

38クォーツの特徴の一つは、裏側に飛び出た「ヘソ」です。ヘソの部分には電池が入っています。ケースの中に大きな電子部品を入れたら、電池を格納するスペースが足りなくなってしまったわけです。こんなにヘソが出っ張っているのに、腕に装着すると、不思議とヘソの存在は忘れてしまいます。
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(飛び出たヘソは、電池交換しやすくて便利。)

ケースサイズは37mm×40mm×12mm、冠幅は18mm(ヘソ、竜頭を含まず)です。金メッキのケースに一番似合うのは茶色の革ストラップだと思いますが、汗をかく季節の間は通気性を優先してNATOストラップ(20mm)をつけています。冠幅よりも太いストラップをつけているのは、その方が見た目のバランスが良いからです。


2 リコー「570系リクォーツ」
コピー機のメーカーとして有名なリコーは、実は、世界でも希少な内製(in-house)ムーブメントを持つ老舗の時計メーカーです。70年代、リコーのクォーツ時計は「リクォーツ」というブランド名を冠していました。リコーは、国内ではセイコーに次いで、1971年にクォーツ腕時計(550系)を市販化しました。
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(シンプルな三針の時計。よく見れば秀逸なデザイン。)

570系のムーブメントは、550系の後継機です。570系リクォーツには意匠の凝ったものが多いなかで、私のリクォーツはとてもシンプルです。日付表示すらありません。しかし、文字盤は牡丹雪が積もったような立体感があり、よくよく見ると凝った造りであることが分かります。時期は、1974年か1975年でしょう。

電子部品が大きいため、現代のクォーツ時計に比べると、ケースが分厚いのが特徴です。牛乳瓶の底のような飛び出した風防(ガラス)にも妙味があります。また、時刻合わせを頻繁に行う必要がないため、竜頭は小さく、4時位置に埋まるように設置されています。ケースサイズは38mm×42mm×12.5mm、冠幅は18mmです。これも汗対策でNATOストラップ(20mm)をつけています。革ストラップやミラネーゼ(ステンレスメッシュのベルト)も似合います。
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(ぶ厚いケースの中には、電子部品がギュっと詰まっている。)


3 リコー「590系リクォーツ」
590系のムーブメントは、570系の後継機です。時期は1976年〜1978年くらいでしょう。
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(楕円のユニークな文字盤。ダイヤハードガラスが綺麗。)

このリクォーツは、前記570系のデザインを引き継いでおりシンプルですが、楕円形の文字盤が特徴的です。また、590系の多くには「ダイヤハードガラス」という硬い特殊ガラスが採用されており、風防が薄くなっています。このため、風防にはほとんど傷がなく、40年近く前の腕時計とは思えないほど透明感があります。
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(電子部品の小型化のおかげで、ケースが薄く、小型に。)

590系では電子部品の小型化が進み、ケースは現代のクォーツ時計の薄さに近づきました。ケースサイズは37mm×37mm×10mm(竜頭含まず)、冠幅は18mmです。これも汗対策でNATOストラップ(20mm)をつけています。文字盤の形が面白いので、ポップな色彩のNATOでも似合ってしまいます。もちろん革ストラップも似合います。



実は、上で紹介した570系リクォーツは、原因は不明ですが最近まで動いていませんでした。ところが、ダメもとでリコーに修理を依頼したところ、見事復活して戻って来たのです。古いクォーツ時計は、すでにメーカーにも部品がないので、基幹部品に致命的な故障が生じれば、もう修理できません。私は運が良かったのでしょう。

実用上は時間を確認するためだけの道具ですが、私は、これらの時計を見つめる度にとても楽しい気持ちになります。物の価値とは、そういうものなのでしょう。
タグ:おしゃれ
posted by 司法書士 前田 at 23:28| Comment(0) | 日記

2017年09月11日

コースターブレーキの整備(クラッチ滑りの原因は?)前編

前回tern link uno のコースターブレーキをちゃんと整備してから2年以上経過しましたが、踏み出しの初期に「クラッチが滑る」現象が出るようになりました。そこで、今回は診断がてら、久しぶりにコースターブレーキを分解してみることにしました。


1 なぜクラッチが滑るのか?
コースターブレーキとは、リアハブの中にクラッチとブレーキが一体になった構造をしています。下図を見ながら説明しましょう。
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駆動と制動をコントロールする最初の部品はコグ(紫〇)です。コグは、ドライバー(青〇)に固定されています。ペダルを正回転で踏みこむと、ドライバーの先端に切られた粗ねじがクラッチコーン(赤〇)を右にスライドさせ、ハブシェル(緑〇)をコグと一体化(clutch)させ回転させるという仕組みです。

これに対して、ペダルを逆回転に踏み込むと、ドライバーがクラッチコーンを左にスライドさせ、ブレーキシュー(黄〇)を押し広げて制動するのです。昔のオートバイのドラムブレーキと似た構造です。ドラムに相当するのがハブシェルです。

ペダルに対して正回転も逆回転も力を掛けないと、クラッチコーンの中に仕組まれたスプリングによって、クラッチコーンが右にも左にも寄らない状態(=惰性でホイールが空転する状態)になります。

さて、ペダルの踏み出しの際にクラッチが滑ったようになるというのは、クラッチコーンが右にスライドするのがワンテンポ遅れる、又はクラッチ部分が摩耗しすぎて本当に滑っているということです。その理由として思いつくのは、グリスの劣化、クラッチコーンのハブシェルとの接触部の摩耗、そしてスプリングの不良でしょう。


2 分解・洗浄とグリスアップした結果は?
手許に交換部品がないので、今回は、グリスを入れ替えて様子を見るだけにしました。一番安上がりな方法です。というより、各部品の摩耗がどの程度なら交換すべきなのかといった基本的情報もないので、手っ取り早い方法から試行錯誤していくわけです。
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(たまに整備すると自転車がいかに汚れているか実感)
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(リアハブの中にクラッチとブレーキの仕組みが詰まっています)
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(ワッシャーとかベアリングとか取付順序に気をつけて)

使用するウレアグリスはクリーム色ですが、流石に2年以上ほぼ毎日使っている自転車なので、古いグリスは汚れて真っ黒です。滑らかさも大分低下しています。
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(真っ黒)
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(ハブシェルもきれいにします)

新しいグリスに入れ替えて、ちょっと試運転してみましたが、クラッチの滑りもなく、完全に調子が戻ったようでした。どうやら、異物が混ざって劣化したグリスがクラッチコーンの動きを妨げていたのが不調の一番の原因だったようだと一旦は結論づけました。
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(きれいなグリスを詰め直して一応完成)

ところが、1週間くらい運用を続けてみると、以前ほど酷くないにせよ、踏み出しの滑りが若干は残っているように感じます。と言っても、日々使用するぶんには、さして大きな支障ではありません。次に整備する際に、部品交換もしてみることにします。多分、1年以上先だと思いますが。

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(少し涼しくなって、自転車には絶好の季節)


2017年9月30日追記:
このように、一応は直ったかと思って、link uno を毎日通勤にチョイ乗りにと使い続けていたのですが、やはり漕ぎ出しの「ニュルッ」とクラッチが滑る症状が完全には無くなりません。そこで、後編に続く・・。

タグ:自転車整備
posted by 司法書士 前田 at 16:03| Comment(0) | 自転車