2018年07月10日

折り畳み自転車(Tern Link Uno)のヒンジの不具合(後編)


前回(2018年6月10日のブログ記事)、ハンドルポストヒンジの不具合の原因を確認後、そのことをターン・バイシクルズ日本総代理店アキボウ株式会社に問い合わせてみました。その結果、アキボウ社側で、ウノを無償で引き取り修理してくれることになりました。
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(長旅を終えて、大きな箱が戻ってきた。)

そして、本日、ついに修理を終えたウノが戻ってきました。
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(箱の中には、しっかり養生されたウノ。)

修理は、爪(セーフティーロックピン)のみの交換ではなく、レバーユニット全体の交換を行ったようです。修理前のレバーには「1106」という番号が刻印してありますが、交換されたレバーには「1107」という番号が刻印してあります。「1107」のレバーの方が、先端が尖った形状をしています。
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(ビフォー。「1106」の刻印あるレバーを開いた状態。爪同士の間隔が広い。)

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(アフター。「1107」の刻印あるレバーを開いた状態。爪同士のギャップが明らかに狭い。)


レバー側の爪と自転車本体側の爪とが、きちんと噛み合う(ロックが効いている)ようになりました。レバーユニット交換前には、レバーを閉じた状態でも爪と爪の間に約2mmものギャップが存在し、全然ロックがかかっていませんでした。
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(アフター。レバーを閉じた状態。爪同士がちゃんと噛み合っている。)


ちなみに、ウノのヒンジのレバーは、ハンドルポストヒンジだけではなくて、フレームヒンジにも基本的には同形状のものが用いられていました。
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(もともとこのウノにはハンドルポストにもフレームにも同形状のレバー「1106」がついていた。)

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(フレームヒンジのレバー。「1106」の刻印が見える。)


ハンドルポストヒンジの修理ついでに、フレームヒンジのベアリングを金属製のものから樹脂製(IGUSベアリング)に無償で交換してもらいました。こちらは別に不具合があったわけではありませんが、たまたまターンのホームページに無償交換の情報を見つけたので頼んでみたのです。
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(IGUSベアリングに交換されている。ぱっと見、分からないが。)

ベアリング無償交換の対象になる機種については、ターンのホームページ( https://www.ternbicycles.com/jp/node/180610 )で確認してください。

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(ネジの脱落防止のためか?小さなイモネジが追加されてきた。)


これでやっとウノに安心して乗ることができます。結構古い自転車にもかかわらず無償修理してくれたアキボウ社の対応には満足しています。めでたし、めでたし。
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(やっと修理完了。)

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(記録的大豪雨ののち、やっと近畿地方も梅雨明け。写真は豪雨前のもの。)






posted by 司法書士 前田 at 21:09| Comment(0) | 自転車

2018年07月04日

マルチ商法はお断り!


マルチ商法は、「無限連鎖講の防止に関する法律」で禁止される「ねずみ講」とは法律的に区別されていますが、どちらも社会一般にとって有害なものです。だいたい国民生活センターだけでも年間1万件を超える苦情や相談がよせられるような手口がまともな商売であるわけがありません。

そこで、今回は、特に若い世代向けの注意喚起として、マルチ商法について考えてみることにしましょう。



1 マルチ商法とは
「マルチ商法 」、「MLM(Multi-Level Marketing) 」、「ネットワークビジネス」などと呼ばれる取引手法は、全て同じものです。これらは、「連鎖販売取引」として「特定商取引に関する法律」(以下、「法」という。)の規制対象になっています。

マルチ商法は、次の要件を備えた取引です(法第33条第1項)。

ア 物品の販売(又は役務の提供)の事業であって、
イ 物品の販売(又は役務の提供)をする者を、
ウ 特定利益を収受しうることをもって誘引し、
エ その者と特定負担を伴う販売(又は役務の提供)をするもの。

これを分かりやすく図式化すると、次のようなピラミッド型の販売(又は役務提供)組織になります。

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マルチ商法の組織は、A(「統括者」)がB及びCを物品の再販売をする者(ディストリビューター)として勧誘し、BがさらにD及びEを勧誘し・・という具合に末端のディストリビューターH~Oへと広がって行きます。組織の構造は、ねずみ講のそれと同じです。ここで、Oが売り上げをあげれば、その一部がGに上納され、さらにその一部がCに上納され、更にその一部がAに上納されます。上記ウ・エの特定利益や特定負担とは、このような上納金を含んだ金銭等のやり取りのことを指します。

マルチ商法は、組織的な販売形態ですが、統括者とディストリビューターとの間にも、上位ディストリビューターと下位ディストリビューターの間にも雇用関係はありません。ディストリビューターは、それぞれ独立した事業者として、自己責任でこの仕組みに参加しているだけです。

これは、一見すると、仲買や卸業者が複数介在する通常の売買取引にも似ていますが、大きく異なるのは、上納金等の負担があるという点です。通常の取引ならば、小売業者は、仕入代金を支払ってしまえば、商品の売り上げに関して仕入先に対する義務を負いません。これに対して、マルチ商法においては、売り上げや卸しの各レベルで上納金等を納めなければならない仕組になっているのです。

また、物品の販売等を事業とすると言っても、マルチ商法においては、これは単に新たなディストリビューターを勧誘するための方便でしかありません。一般消費者向けに販売等することは、マルチ商法の関係者にとっては関心外のことなのです。つまり、マルチ商法とは、ディストリビューターをたくさんかき集めて、組織内部で販売対価(卸価)、会費、上納金、セミナー料、その他名目を問わず搾り取ることが目的となっている取引手口なのです。

マルチ商法とねずみ講とが異なるのは物品の販売等が介在しているという点ですが、それも単にディストリビューターを集めるための方便でしかありません。よって、両者に本質的な差はありません。さらに販売等事業の実体が薄ければ、正真正銘のねずみ講と言っても構わないでしょう(さいたま地方裁判所判決平成18年7月19日等)。



2 「違法でない」から大丈夫か?
マルチ商法が「違法でない」とか「合法である」とか言うのは、誤解を誘導する営業トークです。合法の中身も、真っ白なものから、マルチ商法のように黒に近いものまでいろいろあるのです。

マルチ商法がねずみ講に類似する有害な取引手法であることから、法は、これを行う者に対し、次のような規制をかけています(法第33条の2以下)。もし、マルチ商法が、その支持者たちの言うように全く問題のないものであるのならば、そもそも多くの規制など必要ないはずでしょう。

・ 氏名・勧誘目的等の明示義務
・ 事実の不告知、不実の告知、威迫等の禁止
・ 広告への一定事項の表示義務
・ 誇大広告の禁止、これに関する主務大臣への資料提供義務
・ 契約締結前の書面交付義務

上記規制の違反行為に対しては、経済産業大臣等が必要な措置を取ることを指示したり取引停止を命じたりすることができる(法第38、39条)他、書面交付義務等の一部違反については罰則も定められています(法第71条等)。

しかし、ディストリビューターが独立した事業者であるため、これらの規制がきちんと機能しているかどうかは疑問とせざるを得ません。現に、勧誘目的を隠して誘い出したり、不実を告知して勧誘したりするのは、マルチ商法では常套的な営業手口です。ディストリビューターは、親族、友人、知人、元同級生、職場の同僚等、ありとあらゆるツテを頼って勧誘活動を行うのですから、情義の裏に真実を隠しておきたいというインセンティブが強く働くのが道理というものでしょう。

法律違反の行為があっても、マルチ商法の主催者側は、末端のディストリビューターがやったことに対して何の責任もないと言い逃れてしまうわけです。



3 対抗手段
(1) クーリングオフ等
マルチ商法に関する契約をしてしまった場合でも、契約の効果を消滅させる手段が用意されています。

まず、契約してから日が浅い場合には「クーリングオフ」の利用を検討すべきです。クーリングオフとは、一方的な書面通知により無条件で契約を解除する制度です。ただし、クーリングオフの行使には期間制限があり、法37条2項所定の事項を記載した書面の交付を受けた日又は当該契約にかかる商品の最初の引渡しを受けた日のうちの遅いほうから起算して20日以内に行使する必要があります(法第40条第1項)。

ここでクーリングオフの効力は通知発信の時に生じるため、ちょうど20日目に郵便を発送しても有効です(法第40条第2項)。そもそも適式な書面交付の義務が果たされていない場合には、期間制限を気にせずにいつでもクーリングオフできます。

また、統括者や上位ディストリビューターが「この契約はクーリングオフできない。」と嘘をつく等してクーリングオフを妨害することがよくありますが、このような場合には、クーリングオフできる旨の書面があらためて交付されてから20日以内であれば、クーリングオフできます(法第40条第1項)。妨害行為後に、このような書面が交付されていないのであれば、期間制限を気にせずにいつでもクーリングオフできるということです。

さらに、クーリングオフの期間が経過してしまった場合でも、将来に向かって一方的に解約を行うことは可能です(法第40条の2第1項)。そのようにして解約を行った者のうち、入会後1年以内であることや商品の引渡し後90日以内である等の一定の条件に該当すれば、抱えた在庫を返品して適正な額の返金を受けることも可能です(法第40条の2第2項)。


(2) 巻き込まれないこと
マルチ商法に対する一番賢い対応は、最初からこれに巻き込まれないようにすることです。

経済的リテラシーの不十分な若い人は、マルチ商法に巻き込まれてしまう危険が高いと言えます。また、性別については、ディストリビューターの7〜8割は女性だと言われています。

以下は、マルチ商法のチェックリストです。どれか一つにでも当てはまったら、きっぱりと断ることが大事です。


マルチ商法チェックリスト
□ 「自宅で始められる仕事」、「安定収入」、「低リスク・高リターン」という謳い文句。
□ 「ねずみ講ではないから違法でない」を強調する。
□ 「アップライン」、「ダウンライン」が日常用語である。
□ 「ビジネス」、「起業」、「オーナー」、「革新」、「特別」、「奇跡」等の単語が飛び交う。
□ スターターキット、投資、購入、会費、セミナー等、やたらお金がかかる。
□ 親族や知人を勧誘することを事実上強いられる。
□ 報酬や販売の仕組が複雑である。
□ 物を買うだけのことを特権であるかのごとくありがたがらせる。
□ 「プラチナ」、「ダイヤモンド」等と変な名前のついた昇進制度がある。
□ 一般消費者への販売よりも、他者を誘い入れることに熱心である。
□ 取り扱う商品が、ネットオークションに大量出品されている。
□ 最近テレビで見ない芸能人の出演する奇妙なイベントで盛り上がる。
□ カルト(新興宗教)の雰囲気が漂う。
□ 夢のような良い話ばかりされる。







posted by 司法書士 前田 at 17:49| Comment(0) | 金銭トラブル

2018年06月30日

マキタがキターッ!(サイクロンアタッチメントA-67169)


4年間、2日に1度の頻度で使用してきたマキタのコードレス掃除機CL102D。とても便利なのですが、唯一の不満は、集塵パックの容量が小さすぎてすぐに一杯になってしまう(ゆえに吸引力も弱くなってしまう)こと。
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(現行機 マキタCL102DW)


集塵パック問題で悩んでいた1ヶ月くらい前のある日、近所のホームセンターで、サイクロンアタッチメントを発見。5分迷った末に購入しました。
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(マキタ サイクロンアタッチメントA-67169)




掃除好きな私にとって夢のような日々の始まりです。


本来、このサイクロンアタッチメントは、吸込仕事率15W超のマキタのコードレス掃除機に対応するようです。ウチのCL102Dは、多分、現行機(CL102DW)と同じ吸込仕事率14Wでしょうから、最適な組み合わせではありません。でも、そんな小さなことは気にしません。
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(本体とパイプの間に装着する。)


掃除機本体とパイプの間に差し込むだけの簡単な取り付け方法です。紙パックが不要になるわけではありませんが、紙パックにはほとんどゴミがたまらなくなります。
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(装着後。)


吸い込まれたゴミが集塵カップ内をクルクル回るのは新鮮な体験です。
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(回る、回る!)


ソファーの下が若干掃除しにくくなりました。
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(ちょっと出っ張りが増えて、狭いところは苦手に。)


階段だって軽快です。
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(コードレスならでは。軽快。)


ゴミの量が一目で確認できます。
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(意外にたくさんゴミが溜まる。)


集塵カップだけ簡単に取り外して、ゴミ捨て完了。掃除機内にずっとゴミを溜めっぱなしにしないので、何となく気分が良いのです。
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(集塵カップの取り外しは簡単。)

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(毎回ゴミをリセットして、何かいい気分♪)


おすすめ度: ★★★★★




マキタ(Makita) サイクロンアタッチメント A-67169

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タグ:DIY
posted by 司法書士 前田 at 12:28| Comment(0) | 日記

2018年06月25日

どうなる地籍調査?


地籍調査に関心を持っている人なんてほとんどいないかもしれません。なにせ、国(国土交通省)が、地籍調査の実施主体である市町村の職員向けに啓蒙のパンフレット(「地籍調査はなぜ必要か」http://www.chiseki.go.jp/about/images/naze_A4.pdf )を作ったくらいです。一般の関心の低さは、言うまでもありません。

そこで、今回は、意外に身近で重要な地籍調査の問題について考えてみましょう。
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1 地籍の理想と現実
地籍とは、土地についての所在・地番、地目、境界、面積及び所有者に関する情報を指します(国土調査法第2条第5項)。これは、国民について戸籍(本籍、筆頭、名、出生、婚姻、死亡等の情報)があるのと似ています。

国民にとって戸籍情報がいろいろな恩恵(行政サービスや社会保障の享受等)をもたらすのと同じように、それぞれの土地(「筆」)についてしっかりとした地籍情報があることによって様々な効果が生まれます。次はその主なものです。

ア 境界トラブルの防止
イ 災害復旧の迅速化
ウ 公共事業の効率化
エ 課税の公平

まず、地籍によって土地同士の境界が明確であれば、隣近所で境界をめぐって争うようなことは減少するでしょう。そうやって、紛争の大きな原因が一つ減れば、土地取引が活性化されるという付随的な効果も期待できます。

次に、もし土砂崩れや津波によって原形をとどめないほど地形が変わってしまったとしても、もともとの土地の配列を正確に復元したり、これに基づく防災を意識した区画整理をしたりすることも容易になるでしょう。

また、公共事業のために土地を買収する必要がある場合でも、誰に対してどの範囲で買収・収用するのかが明確になれば、迅速に計画を進めることができるでしょう。

さらに、土地に関する税金(固定資産税、相続税等)の計算も容易になり、公平な課税を実現することができるでしょう。

ところが、現実には、多くの土地で、上記ア〜エの一見当たり前と思われるようなことが困難な状態にあります。これは、大きく分けると、2種類の地籍の問題に起因しています。

その一つは、近年、国会やマスコミ等でも盛んに取り上げられるようになった「所有者不明土地」の問題です。これは、一言で言えば、「土地の所有関係がよく分からない」という問題です。これについて、別稿(『「所有者不明土地問題」を読む』)で紹介していますので、本稿では述べません。

他の一つは、各土地(筆)についての客観的情報(所在・地番、地目、境界、面積)に関する問題です。本稿の地籍調査とは、毎筆の土地について主に客観的情報を収集する活動のことを指します。

不動産の登記所である法務局は、全国の全ての土地について、客観的情報及び権利情報を登記記録データとして管理し、その図面を備えています。ところが、実は、その情報の多くは現状を反映した正確なものではないのです。

土地の境界や面積のような基本情報すらまともに信用できないのだとしたら、上記ア〜エも当たり前とは言えないわけです。



2 地籍調査小史
現代的な意味の地籍情報が国によって管理されるようになったのは、明治政府の「地租改正」(1873)を契機とします。地租改正は、毎筆の土地ごとに面積と収穫力に応じた地価を定め、所有者が金銭により地価に応じた納税義務を負うという制度の創設を意味します。私有地が課税対象となるため、国が課税の基本情報を把握する必要が生じたというわけです。

ところが、この基本情報の収集は、所有者の自己申告に基づいて行われました。検地のような強権的な方法によることができなかったのは、つまるところ当時の国には無理強いするための権力も能力もなかったからです。自己申告というのは、単純化して言えば、農民が田畑を自ら縄や棒を使って測量し、その結果を役所に届け出たということです。収集された情報は、土地台帳やその附属図面としてまとめられました。

調査方法がこれでは、正確な情報にはなり得ないことは明らかですが、ここでの情報が、戦後の移管(税務署から法務局へ)を経て、現在の土地に関する情報の基礎になっていることには注意すべきです。

1951(昭和26)年、「国土の開発及び保全並びにその利用の高度化に資するとともに、あわせて地籍の明確化を図るため、国土の実態を科学的且つ総合的に調査することを目的とする」国土調査法が制定されました(同法第1条)。現在の地籍調査は、同法にもとづいて開始されました。

地籍調査の主眼は、毎筆の境界を確定して、形状・面積を測量することです。具体的な調査手続は、調査対象地域の住民説明会から始まり、所有者立会での境界確認、測量、成果図面の閲覧、訂正申立、登記記録更正、地図の備置という順に進行します。

ちなみに、ここでいう「地図」とは、日常的な意味での地図(案内図、市街地図、道路地図等)ではなくて、地籍調査の成果としての図面(不動産登記法第14条第2項)のことを指します。地球の座標に結びつけられた正確な図面である地図には、復元可能性という特徴があります。

現在まで、全国の調査対象面積(国有林等を除いた国土)の約50%の地籍調査が完了しています。ただし、地域的な進捗はバラバラです。たとえば、沖縄県では地籍調査がほぼ100%完了しているのに対して、京都府では7%しか終わっていないといった状況です。地域的傾向を一般化すれば、都市圏の地籍調査が遅れている(東京21%、神奈川13%、大阪8%)といえます。

調査が終わっていない地域については、明治初期の土地台帳附属図面が、現在でも地籍の重要な証拠の一つ(「地図に準ずる図面」不動産登記法第14条第4項)として通用しています。このような図面は「公図」とも呼ばれますが、呼称から連想されるような正確性はありません。



3 地籍調査の行方?
開始後70年近く経過しても半分しか終わっていない地籍調査が、今後、完遂されることはあるのでしょうか?半分残された調査対象地域は、特に厄介な地域ばかりのように見えます。

地籍調査を進めるうえでの問題は、大きく分けて2種類でしょう。

一つ目は、調査技術、人材、予算といった調査インフラに関するものです。しかし、この問題は、今後、重要ではなくなっていくでしょう。例えば、近年の無人航空機(「ドローン」)を使った測量技術の進歩には目を見張るものがあります。このような技術を用いれば、重い機材を担いで山林や藪中を行軍するというような話も、すぐに遠い過去のものになってしまうかも知れません。人も費用も従来ほど必要ではなくなるでしょう。

もう一つは、所有権に関する問題です。

地籍調査において確認する境界は、公法上の境界である「筆界」と呼ばれるものです。筆界は、分かりやすく言えば、地図や公図に引かれた線に対応する境界のことです。これは、所有権の境界である「所有権界」とは、観念上区別されるものです。両者が一致することも多いでしょうが、必ずしもそうとは言えません。例えば、隣地の所有者同士が合意によって境界を移動したり、土地の一部が時効取得されたりした場合、筆界と所有権界とがずれてしまいます。

地籍調査が純粋に公法上の境界に関わるのならば、国が一方的に筆界を確認しても構わないという結論になるでしょう。ところが、話はそれ程単純ではありません。国も、もともとの筆界を把握していないのです。したがって、毎筆の土地について筆界を確認するためには周囲の土地の所有者からも立会いや同意を取り付ける必要があるのです。これは大変な作業です。まして、調査対象になった土地やその周囲の土地が「所有者不明」になっている場合には、尚更のことです。

結局、このままでは、地籍調査の未来も暗いと言わざるをえません。私個人の勝手な意見でしかありませんが、地籍調査に対する不服申立等の手続保障を用意したうえで、国がある程度一方的に筆界を確定してしまうような制度をつくる必要もあるのでしょう。







posted by 司法書士 前田 at 16:28| Comment(0) | 登記業務

2018年06月20日

清算における会社名義不動産の問題(株式会社編)


「事業を廃止しようと思うが、会社名義の不動産をどうすればよいだろうか?」

このような相談や依頼は、珍しいものではありません。

清算における会社名義不動産の問題は、司法書士の中心的業務である不動産登記分野と会社登記分野とが交錯する興味深いものです。それに、起業に関するよりも、事業の廃止に関する悩みの方が、当事者にとっては切羽詰まっているということも多いのです。
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1 清算とは
(1) 清算の意味
「清算」とは、一般に、権利義務関係を処理することを指します。例えば、お金の貸し借りにおける清算とは、弁済が完了して債権債務の関係が解消することです。

これに近い意味ですが、会社法上の清算とは、解散した会社が「一切」の権利義務関係を処理して残余財産を株主に分配するまでの手続のことを指します。

これは、会社という法主体の性質から当然に導かれることです。

そもそも会社とは、権利義務の集合に対して人格を与えたものであると理解することができます。換言すれば、会社は、特定の事業に関連して生じる(出資、貸し借り、取引等の)権利義務を、その事業を運営している自然人にではなくて、事業自体に帰属させるための法技術だということです。

生命のある自然人が死んでしまえば、その権利義務は、相続法に従って承継されるなり消滅するなりします。これに対して、もともと生命のない会社が事業活動を止めたからといって、その権利義務が、誰かに承継されるとか、消えてなくなってしまうというわけではありません。会社は、清算という過程を経てはじめて消滅することができるのです。


(2) 清算の手続概略
会社の事業を廃止したいというとき、まず、典型的には株主総会により「解散」を決議します(会社法第471条第3号)。解散によって、事業廃止することを手続的に明らかにするのです。

これに続く会社の清算は、利害関係人の権利保護・調整のため、法定の手続に従って行わなければなりません(会社法第2編第9章)。

清算の目的は、権利義務を処理し、残余財産を株主に分配することにあります。残余財産の分配というのも権利義務処理の一部ですが、清算事務の最後に行われるため、便宜上分けて説明されるのが普通です。清算中の会社の行為能力は、この清算の目的範囲に限定されることになります(会社法第476条)。

清算事務は、時間順に、「現務の結了」、「債権取立・債務弁済」、及び「残余財産分配」と進行します(会社法第481条)。これらを主催する「清算人」には、多くの場合、取締役が横滑りして就任します(会社法第478条第1項第1号)。

清算事務のうち、現務の結了と債権の取立てというのは、文字通りの意味です。

次に、債務を弁済するためには、弁済に先立って、債権申出のための官報公告及び知れたる債権者に対する個別の催告をしなければなりません(会社法第499条第1項)。これには、早い者勝ちを防ぐことにより債権者間の平等を図るという意味に加えて、一定期間(2カ月以上)内に申出をしなかった債権者を清算から除斥することにより迅速・一律の処理を可能にするという意味があります(会社法第503条)。

最後に、債権者への弁済後に残った財産は、株主に対し、持株数に按分して分配されます(会社法第504条)。全ての残余財産の分配が終われば、清算事務が終了します。その後、清算人は、遅滞なく決算報告を作成し、株主総会の承認を受けなければなりません(会社法第507条)。

会社登記のうえでは、以上の一連の手続について、順に、解散、清算人就任及び清算結了という原因に応じた登記を行います。最後の清算結了登記を行うことによって、登記簿上も会社が消滅したことが公示されるのです。

ただし、会社の消滅(=法人格の消滅)という実体法的な効果は清算事務の終了によって生じるのであって、清算結了の登記は単なる報告的な意味しかないということには注意すべきでしょう。このことは、具体的には、清算結了登記を行った後に見つかった残余財産の処分に関わる問題です(後記3(1))。

会計処理のうえでは、解散から清算結了までの間に、解散時点及び清算結了時点(その間に事業年度をまたぐ場合にはその時点)を基準とした決算を行わなくてはなりません。正常に清算事務が終了すれば、清算結了時の決算は、債権、債務及び残余財産が一切ないという内容のものになるはずです。

清算事務が正常な過程を辿らない場合(特別清算及び破産)について、本稿では省略します。



2 会社名義の不動産の処理方法
(1) 換価する方法
事業を廃止するに際して会社名義不動産をどのように処理するかという問題は、上記の清算手続の過程に組み込まれています。

一つの方法は、当該不動産を換価して債権者への弁済に充て、残金を株主へ分配することです。これが、原則的な処理でしょう。

換価のための売却は、清算中だからと言って、通常の売却と特に異なるところはありません。


(2) 関係者に帰属させる方法
株式会社制度は、所有と経営の分離を理論上の柱として成立しています。ところが、日本では、会社、経営者及び株主が三位一体であることがむしろ常態です。このような場合、不動産が会社名義になっているからと言って、それが本当に会社のものであるのか一見しただけでは分かりません。つまり、会社財産と関係者財産との境が曖昧だということです。

例えば、事業と何の関係もない経営者(又はその親族)の自宅不動産が、名目上だけ会社名義になっていたりすることもよくあります。

したがって、事業を廃止したからといって、会社関係者にとって当該不動産が不要になるとは必ずしもいえないわけです。その場合、当該不動産を関係者に帰属させる方法を検討する必要があります。

その方法としては、錯誤(真正なる名義回復)、代物弁済、売買、残余財産分配等の所有権移転原因が考えられます。ただし、これら方法の選択のためには個別事案ごとの具体的な検討が必要であるため、本稿で一般論を述べることは控えたいと思います。



3 注意事項
(1) 清算結了登記後の残余財産発見について
上記では、清算事務の過程における会社名義不動産の処理について考えました。普通、清算を開始する時点で、不動産の存在は知れています。

ところが、清算結了登記が行われてから何年も経過した後に、残余財産が見つかるという事態は、実務上も頻繁に発生します。「見つかる」というより、「ことの重大性に気づく」と表現するほうが的確な場合が多いでしょう。ここで問題となる残余財産は、不動産です。他の財産(会社名義の銀行預金等)が問題となることは、まずありません。

しかし、このような事態に対する対処も、上で述べたことと異なるものではありません。というのも、たとえ会社登記簿上は消滅した外観があるとしても、残余財産がある限り会社は消滅しないからです。つまり、残余財産がある限り、会社は清算の途中なのです。

よって、見つかった残余財産については、清算事務の一環として原則どおり処理すればよいということになります。ただし、誤って行われた会社の清算結了登記については、これを一旦抹消し、清算人の権限を登記記録上も明らかにしておかなければなりません。


(2) 株式会社以外の法人について
本稿で述べたことは、株式会社以外の法人形態についても概ね当てはまります。ただし、当該法人の責任範囲(有限/無限)や性質(公益性/営利性)等の違いに注意を払う必要があります。


(3) 税務や不正について
不動産の移転という行為は、税務当局にとってまたとない課税機会です。したがって、処分方法の選択には、税務上の考慮が不可欠です。ただし、税逃れのために不適切な処分方法を選択するということは言語道断です。

また、事業廃止に伴う会社名義不動産の移転という場面は、ともすれば計画倒産の準備行為と紙一重であることもあります。

要するに、ここには落とし穴が沢山あるということです。したがって、この問題は、法定された清算手続に則って適正に処理することが重要だといえるのです。






posted by 司法書士 前田 at 15:50| Comment(0) | 企業法務