2016年09月03日

「ひとの保証人にだけはなるな。」の意味

 「ひとの保証人にだけはなるな。」という言葉を聞いたことのある人は多いでしょうが、その意味についてじっくりと考えたことのある人はそれほど多くはないのかも知れません。しかし、保証契約が危険なものであるという漠然とした認識は、多くの人が共有しているでしょう。

 そこで、今回は、保証という制度について基本的な仕組みを理解するとともに、日常生活の中で保証に遭遇する場面と問題点を考えてみましょう。



1. 保証とは
(1) 保証の意味
 保証とは、主たる債務者が債務を履行しないときには、保証人が代わりに履行することを約する契約です(民法第446条1項)。つまり、保証とは、抵当権や質権等の物的担保を設定する契約と同様に、債務の履行を担保するという経済的目的をもった契約の一つです。このため、保証人のことを「人的担保」と呼ぶこともあります。

 保証の場面には、債権者、主たる債務者及び保証人という3者が登場しますが、保証契約の当事者となるのは債権者と保証人です。主たる債務者と保証人との間には保証委託関係があるのが通常でしょうが、このことは保証人が債務を履行した後の求償等にかかわること(民法第459条等)であって、保証契約の成否には影響しません。つまり、主たる債務者から頼まれなくても、保証人になることは出来るのです。

 また、保証債務には、主たる債務者が履行しないときに、履行しなければならないという二次的性質があります。このため、保証人には、原則として、「催告の抗弁権」(民法第452条)と「検索の抗弁権」(民法第453条)という一種の防御権が認められています。

 すなわち、保証人は、債権者から履行の請求を受けても、「まず主たる債務者に請求してから出直してくれ」と言って、とりあえず履行しないでおくことができ(=催告の抗弁権)ます。さらに、債権者が主たる債務者に請求した後であっても、主たる債務者に弁済するだけの資力がありかつ執行が容易であることを保証人が証明したときは、債権者は、まずは主たる債務者の財産に執行しなければなりません(=検索の抗弁権)。

 もっとも、このような抗弁権があることは債権者にとっては負担でしかありません。そこで、これら抗弁権は、契約によって排除されるのが普通です。両抗弁権を排除する形態の保証を「連帯保証」と呼びます(民法第454条)。

 連帯保証は、民法上、抗弁権のある原則的形態の保証(「普通保証」とでも呼ぶべきもの。)の例外として規定されていますが、現実の利用状況を見れば、保証と言えばすべて連帯保証のことを指すと言っても過言ではないでしょう。さらに、商法上の保証は連帯保証を原則としています(商法第511条)。

 連帯保証には、催告・検索の抗弁権が無いことの他にも、主たる債務者・保証人の一方に生じた事由について連帯債務の規定が準用される(民法第458条)など、債権者の債権管理・回収のための便宜が図られています。
money_rentai_hosyounin.png

 かつて保証契約は口頭や黙示でも成立してしまう諾成契約とされていましたが、平成16年の民法改正(翌年4月1日施行)によって、書面によらなければ効力を生じない要式契約とされました(民法第446条2項)。


(2) 特殊な保証
 主たる債務は、保証契約を締結する時点で存在しているのが普通ですが、将来発生する債務を保証の対象とする場合もあります。

 例えば、継続的取引を行っている事業者の一方が他方に対して次々に発生・消滅する債務の履行を担保する必要がある場合に、かつては信用保証=根保証という形態の継続的保証契約が用いられていました。しかし、このような保証においては、保証人の負担すべき債務の限度額や期間が過大・過酷なものとなり、このことが社会問題化したことから、平成16年の民法改正によって一定の規制が加えられるようになりました(民法第465条の2以下参照)。その詳細については、本稿では述べません。

 また、日本では古くから、従業員の不手際によって生じた事業の損害を、その親等に賠償させるという慣習や契約手法(=「身元保証」)が存在しています。雇用主が、従業員を雇用する際に、将来発生するかどうかも分からないような損害賠償請求権を担保する契約をその親等との間で結ぶのです。このような契約にも弊害が多いことから、身元保証法という法律によって一定の規制が加えられました。その詳細については、本稿では述べません。



2. 日常生活で出会う保証
 「ひとの保証人にだけはなるな。」と言っても、日々の生活の中で、私たちが自ら保証人になったり、第三者に保証人となることを頼んだりする必要が生じます。そのような場面について、具体的に考えてみましょう。

(1) 住宅ローンに伴う保証
 住宅ローンを組む際には、購入した不動産に対し、融資した銀行(又はその保証会社)のための抵当権が設定されるのが通常です。それに加えて、銀行が、債務者の親等と保証(及び物上保証)契約を結ぶこともあります。

 もし、住宅ローンを申し込んだ銀行から、融資の条件として保証人を立てること等を要求されたのであれば、銀行はローン申込者の信用力を相当低く見積もっていると言えるでしょう。借りてしまう前に、借りようとしている金額が身の丈に合っているのかよく検討すべきでしょう。

 また、住宅ローン融資には、後記(3)の「機関保証」が利用されることも頻繁です。


(2) 不動産賃貸借に伴う保証
 住宅等の不動産を借りるときに、貸主から、地代・家賃等の支払を担保するために、保証人を立てるように求められることがあります。

 不動産賃貸借に伴う保証契約の場合、保証人の責任の範囲については予想がつきやすいことから、保証債務が過大となる危険は比較的少ないといえます。

 また、不動産の貸主側にとっても、借主の信用力を見極めるのは容易ではないことから、このような保証の利用によって地代・家賃の回収を容易にすることができれば、不動産の活用を促進する効果もあると考えられます。不動産賃貸借に伴う保証契約は、保証人にとって比較的危険が少なく、貸主と借主双方にとっても、メリットがあるのです。


(3) 保証会社(機関保証)の利用
 債務の保証を、専門の会社(=保証会社)に委託することがあります。このような形態の保証は「機関保証」と呼ばれ、現在では、住宅ローンやカードローン等契約の多くに、機関保証の仕組みが付随しています。

 債務者自ら保証料を支払うのが通常であることから、機関保証は、履行不能という危険に対する債務者のための「保険」であるかのように誤解されます。しかし、保証会社が、債務者の代わりに債務を履行(=「代弁済」)しても、債務者が履行責任を逃れることは出来ません。つまり、機関保証は、債務者のための保険ではありません。むしろ、機関保証は、債権者(主に銀行等の金融機関)が不良債権を抱え込まないようにする等、債権者の便宜のために利用されているのです。

 機関保証は、主たる債務の契約に組み込まれてしまっていることが通常であるため、避けることができません。例えば、住宅ローン融資の条件として機関保証の利用が義務付けられているような場合、お金を借りるためには機関保証を利用しないわけにはいきません。

 そのためか、多くの債務者は、機関保証を利用していることを意識すらしないようです。しかし、意識もしていない、理解もしていない契約を義務付けられているとは、何とも奇妙なことではないでしょうか?


(4) 株式会社の有限責任と保証
 株式会社の株主は、会社債権者に対して履行責任を負いません。会社が債務超過に陥って倒産すれば、債務の引き当て(=「責任財産」)となるのは会社財産のみであって、株主の財産が差押えられることはありません。このことを、『株主は会社債権者に対しては「有限責任」を負担している』と表現します。ここで「無責任」でなくて、「有限責任」という理由は、株主が会社に対して持つ出資持分(=株式)に限っては、債務の引き当てとなるからです。

 しかし、周囲を見渡せばすぐにわかるように、日本のほとんどの会社においては、会社、経営者及び株主は三位一体の関係にあることが常態です。さらに、会社財産と経営者・株主の個人財産との境目も不明瞭です。

 このような状況では、会社と取引する相手方は、会社財産だけを当てにしていたらとても不安な立場に立たされることになるでしょう。そのため、株主たる経営者(及びその親族)である個人が、会社の債務を保証することも珍しくはありません。例えば、会社が銀行から事業資金を借りるときに、オーナー経営者が当該債務の履行を保証し、さらに自宅に銀行のための(根)抵当権を設定するというようなことは、よくあることです。

 出資者の有限責任が認められているのは、株式会社のみだけではなく、合同会社、社団法人、権利能力なき社団等、いろいろな法人・組織があります。


(5) 主たる債務者の破産と保証人の責任
 保証債務には、主たる債務に附従するという性質があります。すなわち、主たる債務が無ければ保証債務も成立しないし、主たる債務が消滅すれば保証債務も消滅します。では、主たる債務者が破産して、免責を受ける(自然人の場合)なり、法人格が消滅する(法人の場合)なりしたような場合には、保証債務も附従して消えてしまうのでしょうか?

 残念ながら、主たる債務者が破産しても、保証債務には影響しません。つまり、保証人は、債務を履行できない破産者=主債務者に代わって、債務を履行しなければなりません。そもそも、保証人の役割は、主たる債務者に信用不安が生じるような事態において発揮されるべきものなのですから、保証債務が消滅しないことは当然のことです(破産法第253条2項参照。正確には、もうちょっと複雑な説明が必要ですが、本稿ではこれ以上述べません。)。

 よって、主たる債務者が破産したことによって、一見健全な保証人まで連鎖的に破産等の手続きを余儀なくされるということもあるのです。
kaisya_tousan.png



 友人の借金の保証人になるような、あからさまに危険な場合を除いても、自ら保証人になったり、他人に保証人になることを頼んだりする場面は、意外と多いものです。そのような場面では、具体的状況に照らして、当該保証契約が本当に必要・妥当なものか、何のために保証するのか、保証の結果としてどんなことが起こりうるのか、きちんと理解しておくべきでしょう。保証人になってしまった後で取りうる防御手段なんて、たかが知れているのですから。
にほんブログ村 地域生活(街) 関西ブログ 神戸情報へ
にほんブログ村
posted by 司法書士 前田 at 17:22| Comment(0) | 金銭トラブル

2016年07月12日

司法書士の債務整理業務について

 司法書士の代理権を画する基準(司法書士法第3条1項6号)をめぐっては解釈上の争いがありましたが、平成28年6月27日、最高裁の判決によってこの争いに一応の決着がつきました。

 この判決は、依頼を受けて債務整理を行った和歌山県の司法書士が、非弁行為(=弁護士法違反の代理行為)を理由として依頼者から損害賠償請求を受けた訴訟事件(以下、「本件」という。)に関するものでした。しかし、本件は、あたかも司法書士と弁護士の業務範囲を巡る「縄張り争い」の様相を呈してしまったことで、両士業界から注目されました。

 今回は、本件をネタにして、司法書士の債務整理業務への関わり方について考えてみましょう。ただし、本稿では「債務整理」という用語を、裁判外の和解である任意整理、裁判所を利用する破産・再生手続等の法的整理、並びに過払金請求までを含んだ広い意味で用いることにします。また、「ネタにして」とは言っても、本件の訴訟経過や事案自体を詳しく解説するつもりはありません。
sensou_senjou.png



1. 司法書士の代理権とは
 平成14年の司法書士法改正により、一定の研修を修了し法務大臣の認定を受けた司法書士(以下、「認定司法書士」という。)は、簡易裁判所の事物管轄に属する民事事件において、訴訟・調停手続きや裁判外和解の代理を務めることが出来るようになりました(司法書士法第3条1項6号〜8号)。

 従来、訴訟等において当事者を代理するのは弁護士の専属的業務であって、弁護士でないものがこれを行うことは原則として出来ませんでした(弁護士法第3条、72条)。つまり、司法書士法は、認定司法書士に対して、弁護士法の例外を認めたことになります。

 認定司法書士が代理権を行使するためには、訴訟事件であれば「訴訟の目的の価額」(司法書士法第3条1項6号イ)、即決和解及び支払督促事件であれば「請求の目的の価額」(同号ロ)、調停事件であれば「調停を求める事項の価額」(同号二)がそれぞれ140万円(裁判所法第33条1項1号)を超えてはならないという制限があります。

 また、認定司法書士は、裁判所を利用するこれらの手続きだけではなくて、同じ範囲内であれば、裁判外の和解を代理することも出来ます(司法書士法第3条1項7号)。

 認定司法書士に裁判外の代理権も認められているのは、通常、裁判外で和解を模索することが、裁判手続に先行又は並行するので、裁判外の和解権限までを含めなければ代理権としての意味がないからです。



2. 認定司法書士の代理権の範囲についての争点
 一見すると、認定司法書士の代理権の範囲は、法文上明白に規定されているようです。これは、例えば、認定司法書士が代理人になって訴額140万円の請求訴訟を追行することはできるけれども、141万円ならダメ、という単純なことだからです。

 しかし、債務整理、特に任意整理の事案において、この代理権の範囲をどのように画すべきなのかという解釈上の争いが生じていました。解釈は複数存在し、さらに、それぞれが細かく枝分かれしていますが、考察に値する対立点は次の2つに集約されるでしょう。

@債務総額を合算する(「総額説」)か、個別の債務毎に考える(「個別説」)か?
A債権者側から見た債務額を基準とする(「債権者主張説」)か、債務者が得る利益を基準とする(「債務者受益説」)か?

 例えば、甲という債務者が、金融業者A社に対して100万円、さらにB社に対して200万円の債務を負い、C社に対しては300万円の過払金債権を持っているという場合を考えます。

 この場合、@の対立を考えると、総額説によれば全ての債務について認定司法書士が代理して債務整理することは出来ない(100万円+200万円+300万円=600万円: 140万円超)という結論になるのに対し、個別説によれば少なくともA社(100万円: 140万円以下)に対する債務整理は出来るという結論になります。

 総額説は、複数の被告に対する訴訟を併合した場合の訴額の計算方法を根拠としています。これに対して、個別説は、債権者ごとに別訴を提起する場合の計算を根拠としています。

 次に、Aの対立を考えると、債権者主張説によれば、債権者側から見た債務額とはそれぞれ100万円、200万円及び300万円であるから、認定司法書士が代理して債務整理を行う可能性があるのは、A社に対する債務のみであるということになるでしょう。これに対して、債務者受益説によれば、A社に対する債務に加えて、B社に対する債務についても認定司法書士が代理して債務整理を行う可能性が出てきます。

 債権者主張説については説明を要しないでしょう。これに対して、債務者受益説というのは、非常に分かりにくい解釈です。というのも、同説は、民事調停手続の申立費用の基礎である「調停によって得られる経済的利益」という実務上の基準をもとにして代理権の範囲を決定すべきだとしているからです。

 例えば、甲がB社を相手方として申し立てた調停の結果、仮に200万円の債務を120万円に減額する和解が成立したとすれば、「調停によって得られる経済的利益」は80万円(=200万円〔原債務額〕−120万円〔減額後債務額〕)ということになります。また、仮に200万円の債務について減額なしに3年後の一括払いという期限の利益を付与するという和解が成立したとすれば、「調停によって得られる経済的利益」は、30万円(=200万円〔債務額〕×0.05〔民事法定利率〕×3年〔支払猶予期限〕)ということになります。どちらの場合も、認定司法書士の代理権の範囲内です。債務者受益説とは、裁判外の和解においても、これと同じ計算を用いて代理権の範囲内か否かを判断するという解釈です。



3.  平成28年6月27日最高裁判決について
(1)縄張り争い?
 冒頭で、本件が、司法書士と弁護士の業務範囲を巡る縄張り争いの様相を呈していたと書きました。これは、どういうことでしょうか?

 司法書士法の改正により、限定つきながら司法書士が代理人として債務整理を行うことが出来るようになるのと時期を同じくして、過払事件に関して消費者(=債務者)側に傾斜した重要な判例が相次いで出されました。一部の弁護士と司法書士は、争点が消えた(=容易に勝訴できる)過払事件に群がりました。さらに、司法制度改革による弁護士人口の増加という現象も重なりました。この「過払バブル」の中で、弁護士と司法書士が同じパイを奪い合うという状況が生じたのです。

 本件の争点であった司法書士の代理権についても、純粋な法律論争というよりは、日弁連と日司連(=日本司法書士連合会)の間での代理戦争のようでした。前者(日弁連)は、債務整理の依頼者側(第一審原告)を支援して、一貫して司法書士の代理権を極小化する解釈(上記2の総額説及び債権者主張説)を取りました。これに対して、後者(日司連)は、訴えられた司法書士(第一審被告)を支援して、司法書士の代理権を極大化するような解釈(上記2の個別説及び債務者受益説)を主張していました。


(2)平成28年6月27日最高裁判決
 上記2の争点について、最高裁は、「債務整理を依頼された認定司法書士は、当該債務整理の対象となる個別の債権の価額が〔司法書士〕法3条1項7号に規定する額を超える場合には、その債権に係る裁判外の和解について代理することが出来ない」という判断を示しました。これを上記2の用語に即して言えば、最高裁は、個別説及び債権者主張説を採用したということになります。反対に、総額説(日弁連の解釈)と債務者受益説(日司連の解釈)は、どちらも退けられました。

 最高裁の判断は、認定司法書士の代理権を画する基準を最も明確に示しており、法文上も無理なく妥当なものと言えるでしょう。逆に、退けられた各説については、それぞれ支持する団体の思惑を反映した無理のある解釈であるばかりか、有害な解釈であるとすら考えます。



4. 判決の後
 縄張り争いとまで揶揄された本件訴訟に対して最高裁の判決が出たことにより、債務整理事件の取扱いについて今後どのような影響があるのでしょうか?

 実は、本判決の影響は、一部で騒がれているほど大きくないでしょう。というのも、債務整理の方法として任意整理を選択すべきような事案が、今後、非常に少なくなると考えられるからです。これは、任意整理と表裏の関係にある過払金請求事案が減少していることに関係しています。

 闇金を除く金融業者は、平成18年頃を境に、新たに過払金の生じるような金利での貸し付けを行わないようになりました。従って、過払金請求権が生じたとしても、そのほとんどは既に又は間もなく消滅時効にかかって、請求不能な状態になってしまいます。過払金がないのであれば、個々の債権者との間で別々に和解する意味などほとんどありません。

 よって、今後、債務整理は、破産や個人再生などの法的整理が中心になるでしょう。これらは、原則として全債務を裁判所の監督下で一括整理する手続きです。もともと、債務整理の一番の目的が多重債務者の経済的更生ということであれば、法的整理を原則とすべきなのです。任意整理という手法は、たまたま過払バブルという異常な状況があったために都合良く用いられていたに過ぎません。

 ところで、司法書士は、本来的業務である裁判所提出書類の作成(司法書士法第3条1項4号)という権限によって法的整理を行うことが出来ます。このためには、もともと代理権など必要ではないのです。

 もちろん、法的整理といっても、その具体的処理は事案により様々です。書類作成だけで間に合う事案もある一方で、受任者が債務者を代理しなければならないような複雑な事案もあるでしょう。後者のような事案は、司法書士ではなくて、最初から弁護士が処理すべきものです。

 縄張り争いなんて下品な話は、これで最後にして欲しいものです。
pet_dog_oshikko.png
にほんブログ村 地域生活(街) 関西ブログ 神戸情報へ
にほんブログ村
posted by 司法書士 前田 at 15:47| Comment(0) | 金銭トラブル

2016年06月28日

夫婦間の居住用不動産贈与における贈与税の配偶者控除について

 夫婦間で居住用不動産(受贈者自ら居住するための不動産のこと。以下、単に「居住用不動産」と言えば、同じ意味で使っています。)又はその取得資金を贈与する場合には、一定要件のもと、贈与税の配偶者控除を利用することが出来ます。今回は、私の事務所にも相談の多い夫婦間の居住用不動産贈与についておさらいしてみましょう。
present_happy_girl.png

*私は税務の専門家ではありませんので、本稿は、制度を紹介することを意図したものであって、税金について細かく説明しようと意図したものではありません。



1.贈与と贈与税の原則
(1)贈与とは
 贈与とは、「当事者の一方が自己の財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによって、その効力を生ずる」法律行為のことです(民法第549条)。無償であるというところが、対価を要件とする「売買」や「交換」等の物の移転を伴う多くの法律行為と異なる贈与の特徴です。

 贈与を行うには、特に書面で契約を行うことを要せず、両当事者の合意のみによって行うことが出来ます。しかし、書面によらない贈与契約は、未履行の部分については、各当事者が一方的に撤回(=将来に向かって契約の効果を消滅させること)することが可能(民法第550条)であることから、真に贈与するつもりであるならば書面を交わすことによって契約するのは常識と言えるでしょう。


(2)贈与税の原則
 無償契約であるということから、一見すると安上がりな財産移転方法であるかのように思われる贈与も、税務のことを考慮すれば、決して安上がりではないことが分かります。なぜなら、贈与には、比較的高い税率で贈与税がかけられるような仕組みになっているからです。

 贈与税の税率は、一般贈与(=特例適用のない贈与)財産について次のように累進的に定められています(相続税法第21条の7)。
贈与税税率.png

 課税価額は、実際の贈与額から基礎控除額(110万円)を控除した後の価額です。贈与税を算出するには、課税価額に税率を乗じ、そこからさらに税控除を行います。例えば、ある人が3000万円の贈与を受けた場合、贈与税の一般的な計算式は以下のようになります。3000万円もらったら、1195万円を税金として国に納めなければならないということです。

・(3000万円−110万円)×50%−250万円=1195万円

 贈与税の税率が高いのは、相続税の免脱を防止するためです。仮に贈与税という制度がなかったとすれば、資産家は、生前に大部分の財産を他人(相続人であるとは限りません)に贈与することによって、容易に相続人が負担すべき相続税を免脱させるよう対策することが出来てしまうでしょう。贈与税は、「相続税の補完税である」とも言われるのはこのような理由です。

 しかし、贈与であればすべて高い税金をかけられるというわけではありません。贈与税という仕組も、財産処分の自由(民法第206条等)、相続財産承継制度(民法第5編)、夫婦財産制度(民法第4編第2章第3節)等の実体法上の諸制度のバランスの上に成り立っている政策の一つに過ぎないのです。従って、実体法上の諸制度との兼ね合いにおいて、租税負担の不公平等の問題を生じないのであれば、贈与税を軽減・免除するという措置を取ることも許容されるのです。本稿のテーマである居住用不動産贈与における配偶者控除の制度も、このような軽減措置の一つと考えることが出来ます。



2.居住用不動産贈与における贈与税の配偶者控除とは
(1)制度の内容
 婚姻期間が20年以上の夫婦の一方から他方配偶者に対し、居住用不動産(家屋・敷地)又は居住用不動産取得のための金銭を贈与した場合、一定要件のもと、贈与額から基礎控除の他にさらに2000万円を限度に控除をした額を課税価額とすることが出来ます(相続税法第21条の6)。

 例えば、3000万円を贈与された場合、通常なら1195万円の贈与税の納税義務が発生する(上記1(2)の計算)ところ、この制度の適用を受ければ、贈与税額は、下記のとおり、350万円程度へと大幅に軽減されます。

・(3000万円−110万円−2000万円)×40%−125万円=355万9875円


(2)利用要件
 この制度を利用するためには、以下の要件をすべて満たす必要があります。

・贈与当事者である夫婦の婚姻期間が20年以上である。
・国内の居住用不動産又は居住用不動産取得資金の贈与である。
・贈与の翌年3月15日までに、受贈者が取得した居住用不動産に現に居住する。
・同じ配偶者からの贈与について同控除制度を利用したことがない。


(3)利用目的
 夫婦間で居住用不動産を贈与する目的は、主に次の2つであろうと思われます。

・事実上の財産分与
・相続対策

 夫婦が離婚によって婚姻関係を解消する際に、婚姻中に取得した財産の清算を行うことを「財産分与」といいます(民法第768条)。夫婦間での居住用不動産の贈与は、婚姻中に事実上の財産分与をする目的で行われることがあります。これは、不動産を夫婦のどちらの名義にしておくかという問題であって、離婚や夫婦仲の問題とは一応分けて考える必要があります。

 また、相続対策として配偶者への不動産の贈与が行われることもあります。相続対策とは、被相続人となるべき人が、相続税の節税や推定相続人間の権利調整を、生前のうちに行うことです。本稿では、その詳細については省略します。


(5)注意事項
ア.贈与税の申告
 本制度の配偶者控除を受けるためには、期限内(翌年の2月1日から3月15日まで)に戸籍謄本等の必要書類を添付して贈与税の申告を行う必要があります。上記2(2)の要件に当てはまれば、自動的に配偶者控除が受けられるというわけではありませんし、納税額がないからと言って申告の必要が無くなるわけでもありません。

イ.贈与対象土地の評価
 また、不動産を贈与する場合には、その不動産を評価(金額をつけるということ)しなければなりません。建物については、固定資産の評価と同一ですので、別段の評価を要しません。これに対し、土地については、原則として各年度の路線価をもとに、一定の計算式に当てはめて自ら評価しなければいけません。ここでは、その計算方法については省略します。(自分で計算したい方は、国税庁HPの不動産評価明細書作成コーナーを使えば、簡単に土地の評価を行うことが出来ます。下記の申告書作成コーナーから、贈与税申告書及び土地評価明細書の作成コーナーに入ることができます。
https://www.keisan.nta.go.jp/h27/ta_top.htm#bsctrl )
作成コーナー1.png
(国税庁HPの申告書作成コーナー。)
作成コーナー2.png
(贈与税申告書類を一式作成することが出来る。)

ウ.夫婦の合意
 そして最後に、当たり前のことですが、夫婦間で不動産を贈与する際には、夫婦双方が当該贈与をすることについて合意していることが必要です。こんな当然のことを私がことさらに注意するのは、他方配偶者に内緒で不動産の所有権を移転しようとしていると疑われる相談事例が少なからず存在するからです。へそくり感覚で不動産所有権を移転してはいけません。
fufu_chunen.png
にほんブログ村 地域生活(街) 関西ブログ 神戸情報へ
にほんブログ村
posted by 司法書士 前田 at 16:36| Comment(0) | 登記業務

2016年04月20日

何者?:サービサーとは

 「サービサー servicer 」という会社(又は業種)を現すカタカナ言葉を聞いたことのある人は多いかも知れません。しかし、サービサーが何をする会社なのかを知っている人は、それ程多くはないでしょう。そこで、今回は、サービサーについて整理してみました。



1. サービサーとは
(1)サービサー制度創設の趣旨
 サービサーとは、不良債権を金融機関等(金融機関の他にリース会社やクレジット会社等)から買い取ったり、金融機関等からの委託を受けたりして、債権回収・管理を専門として行う法務大臣の許可を受けた民間の株式会社のことを指します。

 もともと債権回収業務は弁護士に専属(弁護士法第3条等)し、弁護士以外の者がこれを行うことは出来ませんでした。しかし、1990年代のバブル経済崩壊後、金融機関等の不良債権処理が停滞したことから、1998年、不良債権処理の分野に民間会社の参入を認める制度創設を内容とする「債権管理回収業に関する特別措置法」(以下、「債権回収業法」という。)が成立しました(1999年施行)。債権回収業法は、債権回収・管理に関する弁護士法の特例ということになります。

 2016年4月現在、全国でサービサーは86社存在します。一時期は100社を超えていたことを考えると、バブル時代の不良債権の処理が終了し、サービサーの仕事が減ったということなのかも知れません。


(2)規制と監督
 債権回収という言葉に、あまり良いイメージを持たない人も多いはずです。それは、かつて暴力団等が無茶な債権の取り立てをして社会問題化したことを、多くの人が記憶しているためです。
money_syakkin_toritate.png

 そこで、債権回収業法は、サービサーに対する、規制や監督についての規定を中心として構成されています。

 まず、株式会社が債権管理回収業を営むためには、法務大臣の許可を受けなければなりません(債権回収業法3条)。許可の要件として、一定の資本金額(5億円以上)、役員や人的構成(暴力団関係者を排除していることや、常務取締役として必ず弁護士を入れなければならないこと等)が満たされていなければなりません(債権回収業法第5条等)。

 また、業務遂行の適正が図られるように、威迫的取立てが禁止されていたり、法定利率超過約定の債権について引き直し計算が強制されたりといったきまりがある(債権回収業法第17条、第18条等)のはもちろんのこと、法務大臣や警察庁長官による立ち入り検査等を受けることもあります(債権回収業法第22条)。

 これらは民間会社に対する規制・監督としては比較的厳しいものです。よって、今日、サービサーが行う債権回収業務について、かつて暴力団が行っていた債権回収のイメージを重ねるのは不当であると言えるでしょう。


(3)サービサーに関わる場面は?
 一般の人が普通に生活している限り、サービサーに関わることはほとんどありません。とは言え、誰にとってもサービサーに関わる可能性は身近に溢れています。

 例えば、住宅ローンを滞納してしまったという状況を考えてみましょう。債権者である銀行や保証会社は、担保権を実行する等して、先ずは出来る限り債権の回収を試みるでしょう。しかし、全額回収する見込みが無くなってしまった場合(債権の引き当てとする債務者の財産がなくなってしまった場合等)には、当該残債権は「紙切れ」と化してしまいます。

 このような債権を買い取って、自ら回収することを仕事にしているのがサービサーです。もちろん、サービサーは、金融機関等から「紙切れ」を買うのですから、額面通りの価額ではなく、特別割引価額で仕入れます。例えば、住宅ローンの残債が額面上は1000万円だったとしても、サービサーの仕入額はひょっとすると10〜50万円くらいかも知れません。

 サービサーに債権を売った金融機関等にとっては、不良債権を損金処理することができる税務上の利点があります。他方、サービサーにとっては、債務者から仕入額を超える回収ができれば、利益が出るという仕組みです。

 サービサーが取り扱う不良債権(これを「特定金銭債権」と呼びます。)の中には、住宅ローン債権の他にも、クレジットカード、カードローン、リース契約の債権等、身近な債権が広く含まれています(債権回収業法第2条1項)。誰でもサービサーに関わる可能性があると前記したのは、このような理由です。
money_saifu_receipt_card.png



2. サービサー制度について思うこと
 サービサーの収益の仕組みは、超高利回りの(=投資不適格な)ジャンク債への投資にも似ています。そういった意味では、サービサーの業務に対する、規制や監視は妥当なものと言えます。なぜなら、サービサーの業務は、利益を追求すればするほど、法令違反を起こす誘因が強くなるような仕組みになっているからです。

 しかし、サービサーに対する規制や監督の体制をつくった一方で、不良化するような債権を作りだす金融機関等の側は、きちんと責任を取るようになったのでしょうか?素人目にも信用力のない人が簡単に大金を借りてしまったり、ろくな本人確認もなしにクレジットカードが作れてしまったりと、金融機関等の無責任ぶりはむしろ悪化したようにすら見えます。

ゴミ処理場を監督するのはもちろん大事でしょうが、それよりもゴミを出さない社会を作ることが理想でしょう?
にほんブログ村 地域生活(街) 関西ブログ 神戸情報へ
にほんブログ村
posted by 司法書士 前田 at 09:28| Comment(0) | 金銭トラブル

2016年04月12日

ショートステムで行こう!

 競技をやらない私にとって流行はあまり関係ないはずなのですが、ショートステムのマウンテンバイクばかりが目に付くようになってくると、さすがに試したくなってくるのです・・。
DSC_0017.JPG
(2年前は130mmのステムを使っていました。ステムの長さを変えると、乗り方も変わる。)


1. ステム交換
(1)規格に注意
 今回、ステムを90mmから45mmへと短くします。使用するのは、ヤフオクで手に入れたいかにも軽そうな格安ステムです。
01.JPG
(半分の長さに。しかも肉抜きしてあって、軽そう。)

 当たり前のことですが、交換に適したステムを選ぶ際には、ステアリングコラム径とハンドルクランプ径を間違ってはいけません。今回は、コラム径28.6mm、クランプ径31.8mmのものを購入しました。

 もう一つ忘れがちなことですが、ステムの高さにも若干気をつける必要があります。ステムの高さは、大抵スペーサーを組み合わせて調整できるものです。しかし、手許に適当な厚みのスペーサーがなかったりすることはよくあることです。このような場合に備えて、高さを無段階で調整できるスペーサーを一つ持っておくと便利です。
02.JPG
(アジャスタブル・スペーサー。重量さえ気にしなければ、とても便利なパーツ。)

(2)締め付けトルク管理のヒント
 ステム周りのボルトの締め付けトルクには、気をつける必要があります。硬いステンレスのボルトを、柔らかいアルミ合金のステム本体に対して、力いっぱい締め込んでしまえば、すぐにネジ山が壊れてしまいます。逆に締め込みが緩すぎても、走行中に危険な目に合ってしまうでしょう。

 ハンドルクランプのボルトの締め付けトルクは6〜7Nm(ニュートンメーター)、コラムクランプのそれは7〜8Nmくらいと指定されていることが多いようです。本来であれば、トルクレンチを使うべき場面でしょう。

 しかし、私は面倒くさがりなので、あまりトルクレンチは使いません。その代り、デリケートなボルトを締めつけるときは、柄の短い工具を使うことにしています。安物の工具を使うのには一応意味があるのです。
03.JPG
(柄の短い工具であれば、トルクをかけすぎることもない。)
04.JPG
(対角線に少しずつ均等に締め込んでいく。これ基本。)
05.JPG
(アンカーボルトでヘッドベアリングのアタリを最適化。シールドベアリングでも基本は一緒。)

 ステム周りのボルトは、一旦は各部が動く程度に軽く締めておいて、アンカーボルトの調整、ハンドルやブレーキレバーの角度を微調整した後に本締めします。ボルトに塗布するのであれば、グリスよりもネジ止め剤の方が適します。
06.JPG
(自転車には中強度のネジ止め剤を使う。この量あれば、一生使えるかも。)


2.試走
 ステムを交換した後に、散り際の桜を見物に行くことも兼ねて、いつものトレーニングコースである表六甲線を登って下ってきました。
07.JPG
(桜も今年はこれで見納め。)

 さすがに登っている時は、やけにハンドルバーが身体に近く感じて、ちょっと不自然にも思えました。逆に、下り坂では、たった45mmの差なのに随分とお尻が動かしやすくなったと感じました。当たり前と言えば、当たり前ですが。

 これでフロント部が軽快になって、公園なんかで練習するのも楽しくなりそうです。
09.JPG
(ショートステム、ワイドハンドルバー、フルリジッド、ワンバイエイト、フラぺ・・、男らしい。)
にほんブログ村 自転車ブログ 初心者サイクリストへ
にほんブログ村
posted by 司法書士 前田 at 17:56| Comment(0) | 自転車