2018年07月21日

投資詐欺に注意!


一見治安の良い日本は、実は、詐欺天国です。ところが、先日発表された警察庁の統計によれば、今年上半期の詐欺の認知件数はたったの2499件(全国)に過ぎません。もちろん、これは、詐欺事件の発生件数が少ないということを意味するのではなくて、警察の詐欺に対する極端な消極姿勢を示すものであると理解すべきでしょう。つまり、「見て見ぬふり」の恥ずべき成果です。

結局、騙されてから警察をあてにするより、自分の財産は自分で守るという姿勢が大事なのです。そこで今回は、特に高齢者を中心に被害の多い投資詐欺について考えてみることにしましょう。
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1 投資詐欺の仕組
典型的な投資詐欺は、運用実態がないにもかかわらず、高利回りの配当を約束して広範に投資を募る手口のことです。80年代の豊田商事事件(存在しない金への投資)、バブル期の大和都市管財事件(資産的裏付けのない抵当証券への投資)、90年代のオレンジ共済組合事件(運用実態のない「オレンジスーパー定期」)等が代表例です。

投資詐欺は、運用実績を偽装するため、新たに騙し取った被害金の一部を別の被害者に「配当」したり、被害者に対して虚偽内容の運用報告書を交付したりします。このため、投資が成功していると誤信した被害者が、さらに投資額を増やしたり、知人や親族にも投資を勧めたりしてしまうこともあります。

被害者から得た金銭の一部を別の被害者に配るという点、親族や知人のネットワークを通じて被害が拡大してしまいがちであるという点、あらたな加入者と資金の流入が枯渇するまで犯罪が続くという点等、投資詐欺は、「ねずみ講」にも重なるような特徴を持っています。

ところで、投資詐欺は、英語でPonzi Scheme (ポンジー・スキーム)とも呼ばれます。この名称は、20世紀初頭の詐欺師チャールズ・ポンジー Charles Ponziが、国際郵便切手への投資を装った有名な詐欺事件に由来しています。要するに、この手口は、古典的なものなのです。外見たる投資対象が、郵便切手、株式、公社債、金、原油、商品、先物、外貨、レセプト債、古民家再生/途上国支援/エンジェル起業支援クラウドファンディング、仮想通貨・・と流行のように変化するだけで、結局、昔ながらの万国共通の手口に過ぎません。



2 出資法、金融商品取引法等との関係
投資詐欺は、詐欺罪(刑法第246条)の他に、「出資の受入れ、預り金及び金利の取り締まりに関する法律」(以下、「出資法」という。)や金融商品取引法(以下、「金商法」という。)違反等の罪とも競合することの多い手口です。

出資法は、不特定多数の者から元本保証や利息の約束のもとに出資を受け入れることや、預金受入れ業務をすること等を禁じ、これらの違反に対して罰則を定めています(出資法第8条第3項)。また、金商法は、金融商品の取引に関して、取引業者等の登録や一定事項についての届出・書類交付・開示等の義務を定めており、これらの違反に対し罰則を定めています(金商法第8章)。

しかし、投資詐欺においては、脱法的手段が利用されることが常で、目の前で行われている行為が上記のような法律に違反するか否かを見極めるのは、一般の市民にとって極めて困難だといえるでしょう。

例えば、高利回りを謳った「干し柿の買戻特約付売買」という複雑な契約で、高齢者を中心とした多くの被害者から多額の出資を募っているような悪質な業者も現実に存在します。この業者は、干し柿(実際に存在するのかもわからないような)を売っているだけで、何の法律にも抵触していないとでも言い逃れるつもりなのでしょう。



3 手を出すな
結局、一般市民にとって一番の防御策は、怪しげな取引に首を突っ込まないことに尽きます。以下のチェックリストの一つにでも当てはまったら、手を出さないように注意してください。家族等周囲の人達が注意してあげることも大切です。

□ 運営主体は、証券会社でもなければ、銀行でもない。
□ 元本保証、高利回りを謳っている。
□ 収益の仕組が理解できない。
□ 契約内容が複雑である。
□ 資産の運用状況を検証する手段がない。
□ セミナーへのお誘いが頻繁である。
□ 派手なイベントを開催している。
□ 有名人の推薦文がついている。
□ 会員数が多いことをやたら自慢している。



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(米証券業界の重鎮、バーナード・マドフ氏。実は詐欺師でした。)


posted by 司法書士 前田 at 15:10| Comment(0) | 金銭トラブル

2018年07月16日

シングルスピード tern link uno (ウノ)での坂道トレーニング


今年も梅雨最後の大雨のため、私のトレーニングコースである表六甲線は、全面通行止めになりました。通行止めが解除されるのは、8月中旬頃になるようです。


丁度良い機会なので、久しぶりに通勤自転車であるウノで通行止め区間手前までの登り坂を走ってみることにしました。変速つきの自転車で走るには物足りませんが、シングルスピード(変速なし自転車)でなら面白いコースです。

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(六甲登山口交差点から、六甲ケーブル下駅までの短いコース。)


六甲登山口から六甲ケーブル下駅までは、距離1900m、高低差172m、平均勾配9%強のややきつめの登り坂です。登っている途中は、7割方ダンシング(立ち漕ぎ)しなければなりません。

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(信号以外で足をつかないように。)


心臓が口から飛び出るほど心拍数が上がりますが、それでも走行距離が2kmに満たないので、「あっ」という間にゴールします。

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(今日のゴール地点、六甲ケーブル下駅。)


長い距離を走るのも良いかもしれませんが、このような乗り方も楽しいものです。短時間で心地よい疲労感を得ることができます。通行止め解除まで、しばらくこのようなトレーニングが続きます。

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(この上は、8月中旬まで通行止め。残念。)




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posted by 司法書士 前田 at 10:35| Comment(0) | 自転車

2018年07月11日

自筆証書遺言に関する法改正(遺言書保管等制度の創設について)


私は、これまで、遺言を検討している依頼者に対して、自筆証書遺言を勧めることはあまりありませんでした。というのも、自筆証書遺言は、作成・保管段階での問題の他に、執行段階での困難を伴うことが多いと考えていたからです。執行段階(=遺言者死亡後)まで見据えれば、公正証書の方が関係者(遺言者、相続人、受遺者、執行人)にとって多くの場合に有益であったということです。

ところが、今般、相続法の改正(以下、「改正民法」という。)に併せて、「法務局における遺言書の保管等に関する法律」(以下、「遺言書保管法」という。)が成立しました(現時点で施行日未定)。この法改正は、従来の自筆証書遺言の短所の多くを改善する内容のものです。これで私も、自筆証書遺言に対する考えを改めなければいけません。
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1 遺言書保管法の概略
(1) 立法の理由
社会の高齢化が進展するにつれ、相続紛争の防止という課題が重要度を増しています。

遺言書保管法は、自筆証書遺言の紛争防止手段としての利便性を高めるため、遺言書の保管及び情報管理の制度を創設するとともに、当該遺言について家庭裁判所の検認(民法第1004条第1項)を要しないこととする特例を定めています。


(2) 自筆証書遺言の保管制度
遺言の保管に関する事務は、「遺言書保管所」(=法務大臣指定の法務局)において、「遺言書保管官」(=法務局長指定の法務事務官)が行います。

遺言者は、管轄地の遺言書保管所の遺言書保管官に対し、遺言書の保管を申請することができます。管轄は、遺言者の住所若しくは本籍又は所有不動産の所在地を基準とする中から選択することができます。

ここで保管申請する遺言書は、無封のものでなくてはなりません。これは、遺言書の画像データを保存するためであって、その内容を確認するためではありません。遺言書保管官には、遺言書の内容を審査するような実質的権限はありません。ただし、形式的要件(民法第968条)の不備については、申請時点で遺言書保管官から指摘されることも多いでしょう。したがって、些細な理由で遺言が無効になるという事態は、これから減少するかも知れません。

また、この申請は、必ず遺言者本人が保管所に出頭して行う必要があり、代理人によることはできません。これは、遺言書保管官が、遺言者の本人確認を行うためです。さらに、遺言の保管申請を撤回(注:遺言の撤回ではない。)する場合にも、本人が出頭して行わなければなりません。

遺言書は、その原本が遺言書保管所に保管されるのに加えて、次の情報がデジタルデータとして登録されることになります。

・遺言書の画像情報
・遺言作成年月日
・遺言者の氏名、生年月日、住所及び本籍(国籍)
・受遺者及び遺言執行者の氏名(名称)及び住所

遺言者が死亡すると、その相続人、受遺者、遺言執行者等一定範囲の者(「関係相続人等」)は、遺言書保管官に対し、上記事項を証する書面(「遺言書情報証明書」)の交付を請求することができます。この請求については、どこの遺言書保管所(管轄に関係なく)の遺言書保管官に対しても行うことができます。

保管制度を利用した遺言書について、家庭裁判所の検認は行われません。これは、保管申請の際、遺言者の本人確認が行われるとともに、遺言が申請時の状態まま保存されており、証拠保全として検認よりも優れているからです。

遺言の執行は、遺言書の原本ではなくて、遺言書情報証明書によって行うことができるようになります。例えば、遺産たる預金債権の払戻のためには、金融機関に対し、戸籍等とともに遺言書情報証明書を提出すればよいということです。

また、遺言書保管官は、遺言書情報証明書の交付等を行ったときは、速やかに遺言書が存在する旨を相続人、受遺者、遺言執行者に通知します。これにより、遺言執行の停滞を防ぐ効果も期待されます。



2 自筆証書遺言に関する改正民法の規定
自筆証書遺言は、全文を自書する必要があります。このとき、遺言に定める財産処分の内容は、具体的かつ網羅的に記載することが好ましいのですが、遺言者の手が震えたり、誤記したり、必要十分な記載方法に馴染みがなかったりといった一見些細な理由により、自書するのが困難なことがあります。

そこで、今回の改正では、自書の要件を一部緩和し、ワープロ打ちの財産目録が認められることとなりました(改正民法第968条第2項)。



3 公正証書遺言の役割縮小
自筆証書遺言の保管制度の運用が開始すれば、公正証書遺言の役割は相対的に縮小するでしょう。

もともと、実体法上、自筆証書で作成されようと、公正証書で作成されようと、遺言の効力に差はありません。これまで、自筆証書遺言に比べて公正証書遺言が優れていた点は、形式要件の不備による無効を来し難いこと、保管が確実であること、探索が容易であること、内容に疑義が少ないこと、執行が容易であること等でした。しかし、これらについても、今回の法改正により自筆証書の使い勝手は格段に良くなるはずです。自筆証書遺言と公正証書遺言の実務上の差は、小さくなると言えるでしょう。

もっとも、保管制度創設の目的である相続紛争の防止という効果は、自筆証書遺言が使いやすくなるということから単純に導かれるものでないことには注意すべきです。紛争防止のために公証人の知恵と工夫を必要とすべき場面は今後も無くなりはしないでしょう。





posted by 司法書士 前田 at 17:42| Comment(0) | 相続・遺言

2018年07月10日

折り畳み自転車(Tern Link Uno)のヒンジの不具合(後編)


前回(2018年6月10日のブログ記事)、ハンドルポストヒンジの不具合の原因を確認後、そのことをターン・バイシクルズ日本総代理店アキボウ株式会社に問い合わせてみました。その結果、アキボウ社側で、ウノを無償で引き取り修理してくれることになりました。
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(長旅を終えて、大きな箱が戻ってきた。)

そして、本日、ついに修理を終えたウノが戻ってきました。
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(箱の中には、しっかり養生されたウノ。)

修理は、爪(セーフティーロックピン)のみの交換ではなく、レバーユニット全体の交換を行ったようです。修理前のレバーには「1106」という番号が刻印してありますが、交換されたレバーには「1107」という番号が刻印してあります。「1107」のレバーの方が、先端が尖った形状をしています。
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(ビフォー。「1106」の刻印あるレバーを開いた状態。爪同士の間隔が広い。)

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(アフター。「1107」の刻印あるレバーを開いた状態。爪同士のギャップが明らかに狭い。)


レバー側の爪と自転車本体側の爪とが、きちんと噛み合う(ロックが効いている)ようになりました。レバーユニット交換前には、レバーを閉じた状態でも爪と爪の間に約2mmものギャップが存在し、全然ロックがかかっていませんでした。
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(アフター。レバーを閉じた状態。爪同士がちゃんと噛み合っている。)


ちなみに、ウノのヒンジのレバーは、ハンドルポストヒンジだけではなくて、フレームヒンジにも基本的には同形状のものが用いられていました。
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(もともとこのウノにはハンドルポストにもフレームにも同形状のレバー「1106」がついていた。)

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(フレームヒンジのレバー。「1106」の刻印が見える。)


ハンドルポストヒンジの修理ついでに、フレームヒンジのベアリングを金属製のものから樹脂製(IGUSベアリング)に無償で交換してもらいました。こちらは別に不具合があったわけではありませんが、たまたまターンのホームページに無償交換の情報を見つけたので頼んでみたのです。
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(IGUSベアリングに交換されている。ぱっと見、分からないが。)

ベアリング無償交換の対象になる機種については、ターンのホームページ( https://www.ternbicycles.com/jp/node/180610 )で確認してください。

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(ネジの脱落防止のためか?小さなイモネジが追加されてきた。)


これでやっとウノに安心して乗ることができます。結構古い自転車にもかかわらず無償修理してくれたアキボウ社の対応には満足しています。めでたし、めでたし。
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(やっと修理完了。)

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(記録的大豪雨ののち、やっと近畿地方も梅雨明け。写真は豪雨前のもの。)




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posted by 司法書士 前田 at 21:09| Comment(0) | 自転車

2018年07月04日

マルチ商法はお断り!


マルチ商法は、「無限連鎖講の防止に関する法律」で禁止される「ねずみ講」とは法律的に区別されていますが、どちらも社会一般にとって有害なものです。だいたい国民生活センターだけでも年間1万件を超える苦情や相談がよせられるような手口がまともな商売であるわけがありません。

そこで、今回は、特に若い世代向けの注意喚起として、マルチ商法について考えてみることにしましょう。



1 マルチ商法とは
「マルチ商法 」、「MLM(Multi-Level Marketing) 」、「ネットワークビジネス」などと呼ばれる取引手法は、全て同じものです。これらは、「連鎖販売取引」として「特定商取引に関する法律」(以下、「法」という。)の規制対象になっています。

マルチ商法は、次の要件を備えた取引です(法第33条第1項)。

ア 物品の販売(又は役務の提供)の事業であって、
イ 物品の販売(又は役務の提供)をする者を、
ウ 特定利益を収受しうることをもって誘引し、
エ その者と特定負担を伴う販売(又は役務の提供)をするもの。

これを分かりやすく図式化すると、次のようなピラミッド型の販売(又は役務提供)組織になります。

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マルチ商法の組織は、A(「統括者」)がB及びCを物品の再販売をする者(ディストリビューター)として勧誘し、BがさらにD及びEを勧誘し・・という具合に末端のディストリビューターH~Oへと広がって行きます。組織の構造は、ねずみ講のそれと同じです。ここで、Oが売り上げをあげれば、その一部がGに上納され、さらにその一部がCに上納され、更にその一部がAに上納されます。上記ウ・エの特定利益や特定負担とは、このような上納金を含んだ金銭等のやり取りのことを指します。

マルチ商法は、組織的な販売形態ですが、統括者とディストリビューターとの間にも、上位ディストリビューターと下位ディストリビューターの間にも雇用関係はありません。ディストリビューターは、それぞれ独立した事業者として、自己責任でこの仕組みに参加しているだけです。

これは、一見すると、仲買や卸業者が複数介在する通常の売買取引にも似ていますが、大きく異なるのは、上納金等の負担があるという点です。通常の取引ならば、小売業者は、仕入代金を支払ってしまえば、商品の売り上げに関して仕入先に対する義務を負いません。これに対して、マルチ商法においては、売り上げや卸しの各レベルで上納金等を納めなければならない仕組になっているのです。

また、物品の販売等を事業とすると言っても、マルチ商法においては、これは単に新たなディストリビューターを勧誘するための方便でしかありません。一般消費者向けに販売等することは、マルチ商法の関係者にとっては関心外のことなのです。つまり、マルチ商法とは、ディストリビューターをたくさんかき集めて、組織内部で販売対価(卸価)、会費、上納金、セミナー料、その他名目を問わず搾り取ることが目的となっている取引手口なのです。

マルチ商法とねずみ講とが異なるのは物品の販売等が介在しているという点ですが、それも単にディストリビューターを集めるための方便でしかありません。よって、両者に本質的な差はありません。さらに販売等事業の実体が薄ければ、正真正銘のねずみ講と言っても構わないでしょう(さいたま地方裁判所判決平成18年7月19日等)。



2 「違法でない」から大丈夫か?
マルチ商法が「違法でない」とか「合法である」とか言うのは、誤解を誘導する営業トークです。合法の中身も、真っ白なものから、マルチ商法のように黒に近いものまでいろいろあるのです。

マルチ商法がねずみ講に類似する有害な取引手法であることから、法は、これを行う者に対し、次のような規制をかけています(法第33条の2以下)。もし、マルチ商法が、その支持者たちの言うように全く問題のないものであるのならば、そもそも多くの規制など必要ないはずでしょう。

・ 氏名・勧誘目的等の明示義務
・ 事実の不告知、不実の告知、威迫等の禁止
・ 広告への一定事項の表示義務
・ 誇大広告の禁止、これに関する主務大臣への資料提供義務
・ 契約締結前の書面交付義務

上記規制の違反行為に対しては、経済産業大臣等が必要な措置を取ることを指示したり取引停止を命じたりすることができる(法第38、39条)他、書面交付義務等の一部違反については罰則も定められています(法第71条等)。

しかし、ディストリビューターが独立した事業者であるため、これらの規制がきちんと機能しているかどうかは疑問とせざるを得ません。現に、勧誘目的を隠して誘い出したり、不実を告知して勧誘したりするのは、マルチ商法では常套的な営業手口です。ディストリビューターは、親族、友人、知人、元同級生、職場の同僚等、ありとあらゆるツテを頼って勧誘活動を行うのですから、情義の裏に真実を隠しておきたいというインセンティブが強く働くのが道理というものでしょう。

法律違反の行為があっても、マルチ商法の主催者側は、末端のディストリビューターがやったことに対して何の責任もないと言い逃れてしまうわけです。



3 対抗手段
(1) クーリングオフ等
マルチ商法に関する契約をしてしまった場合でも、契約の効果を消滅させる手段が用意されています。

まず、契約してから日が浅い場合には「クーリングオフ」の利用を検討すべきです。クーリングオフとは、一方的な書面通知により無条件で契約を解除する制度です。ただし、クーリングオフの行使には期間制限があり、法37条2項所定の事項を記載した書面の交付を受けた日又は当該契約にかかる商品の最初の引渡しを受けた日のうちの遅いほうから起算して20日以内に行使する必要があります(法第40条第1項)。

ここでクーリングオフの効力は通知発信の時に生じるため、ちょうど20日目に郵便を発送しても有効です(法第40条第2項)。そもそも適式な書面交付の義務が果たされていない場合には、期間制限を気にせずにいつでもクーリングオフできます。

また、統括者や上位ディストリビューターが「この契約はクーリングオフできない。」と嘘をつく等してクーリングオフを妨害することがよくありますが、このような場合には、クーリングオフできる旨の書面があらためて交付されてから20日以内であれば、クーリングオフできます(法第40条第1項)。妨害行為後に、このような書面が交付されていないのであれば、期間制限を気にせずにいつでもクーリングオフできるということです。

さらに、クーリングオフの期間が経過してしまった場合でも、将来に向かって一方的に解約を行うことは可能です(法第40条の2第1項)。そのようにして解約を行った者のうち、入会後1年以内であることや商品の引渡し後90日以内である等の一定の条件に該当すれば、抱えた在庫を返品して適正な額の返金を受けることも可能です(法第40条の2第2項)。


(2) 巻き込まれないこと
マルチ商法に対する一番賢い対応は、最初からこれに巻き込まれないようにすることです。

経済的リテラシーの不十分な若い人は、マルチ商法に巻き込まれてしまう危険が高いと言えます。また、性別については、ディストリビューターの7〜8割は女性だと言われています。

以下は、マルチ商法のチェックリストです。どれか一つにでも当てはまったら、きっぱりと断ることが大事です。


マルチ商法チェックリスト
□ 「自宅で始められる仕事」、「安定収入」、「低リスク・高リターン」という謳い文句。
□ 「ねずみ講ではないから違法でない」を強調する。
□ 「アップライン」、「ダウンライン」が日常用語である。
□ 「ビジネス」、「起業」、「オーナー」、「革新」、「特別」、「奇跡」等の単語が飛び交う。
□ スターターキット、投資、購入、会費、セミナー等、やたらお金がかかる。
□ 親族や知人を勧誘することを事実上強いられる。
□ 報酬や販売の仕組が複雑である。
□ 物を買うだけのことを特権であるかのごとくありがたがらせる。
□ 「プラチナ」、「ダイヤモンド」等と変な名前のついた昇進制度がある。
□ 一般消費者への販売よりも、他者を誘い入れることに熱心である。
□ 取り扱う商品が、ネットオークションに大量出品されている。
□ 最近テレビで見ない芸能人の出演する奇妙なイベントで盛り上がる。
□ カルト(新興宗教)の雰囲気が漂う。
□ 夢のような良い話ばかりされる。







posted by 司法書士 前田 at 17:49| Comment(0) | 金銭トラブル